熊だ!! 残雪の平標山〜仙ノ倉山(2,026m) 

2001年4月15日(日)晴れ


仙ノ倉方面より望む平標山。後方は苗場山

 雪の平標山を歩いてみたいとの思いにかられ二度挑戦したが、駐車場が雪で埋まりあえなく断念。3度目の正直となった今回は無事登頂を果たすことができた。しかし、稜線で熊に会ったときは心臓が破れるかと思った

歩行時間  約6時間50分(休憩含む)
行  程    駐車場…ヤカイ沢…1,765m地点…平標への分岐…仙ノ倉山…平標山…松手山…駐車場
        0720          0930-40     1005-15   1055-1200   1235   1320   1410
地  図    谷川岳、苗場山、武尊山(昭文社エアリアマップ28 1:50,000)
注意箇所  稜線では熊に注意しましょう(^^;

 平標山から仙ノ倉へのなだらかな稜線は積雪期は気持ちよいだろうなあと、雪山にも少しは慣れた今年は是非登ってみようと思った。しかし元橋の駐車場は全く除雪されておらず立ち入れない。登山道方面へ入ってみるが駐車する場所もなく、また登山者のトレースもないので断念すること2回。
天候は快晴の日であったが一回目は谷川岳へ、2回目は白毛門へと変更を余儀なくされた。

 さて、3度目の正直。今回は先週に駐車場が除雪されたという情報を聞き込んだのでもう心配はない。天気も上々だ。いよいよ雪の平標山に登ることができるぞと眠い体にむち打って出発した。駐車場にはすでに沢山の車があった。テントを張った徹夜組も数組。殆どがスキーかスノボー組のようだ。歩く人は殆ど見あたらない。なんか場違いな山に来たかなあとちょっと不安が心をよぎる。(駐車場は広い。トイレあり)

ヤカイ沢へ。後方は松手山の稜線 登山届けを投函し別荘地の中の林道を通り抜け、途中から左手のヤカイ沢方面へと入る。最初は樹林もまばらな、なだらかな登りであちこちにスキーのトレースがある。左手には松手山への稜線が白く輝いている。スキーを担いだパーティーも登っている。途中から急な登りとなりアイゼンなしではちょっと厳しくなる。途中からどちらに登ろうかと迷ったが、右手の方を登る。左はかなり急に稜線へと続いている。2人のスキーヤーが苦労している。雪崩が怖くないのかなあ…


だんだんと急登となる ん?、トレースが山肌を横切っている。あんなふうに誰が歩いたのかなあ…と近づくと大きな爪痕のトレース。
熊だ!!と直感する。足型は長さにして15cm位はあったろう。真新しい足跡の消えゆく先を見つめるが白い雪の中に黒い姿は見あたらない。疲れてはいたが長居は無用と急坂を急いで登る。そのうち直登は厳しくなりジグザグに登る。ダケカンバがまばらになり、そして低木に道をふさがれたのでかき分けて抜けると気持ちよい稜線に出た。どこらあたりかなあとマップポインターとしGPSで現在地を確認する。1,765m地点だ。避難小屋はもう一つ先の尾根だがだいぶ下の方に見える。

平標山と仙ノ倉方面への分岐へ向かう 苗場方面の山々を眺めながら一休みし、小屋から続く稜線にでる。天気は青空、真っ白な山肌とのコントラストが素晴らしい。平標山はとりあえずおいといて山肌をトラバースし仙ノ倉山をめざす。雪は根腐れているが、表面は昨夜の寒さのせいか薄〜く凍っている。歩く度にシャラシャラと音を立て斜面を滑っていく。なんともいい感じだ。





仙ノ倉方面から平標山を望む。このあたりで熊に遭遇 分岐からの稜線は雪はほとんどなく夏道がでている。暖かい太陽で融けた雪泥で登山道はぐちゃぐちゃだ。時々現れる雪の上を歩くとズボッと膝ぐらいまで埋まる。何とも歩きにくい。初夏だったら高山植物咲き乱れるところだが、まだ少し早いようだ。どこかに少しくらい気の早い花が咲いていないかなあとキョロキョロしていると…黒い物体が目に入った。あらためて目を凝らすと「熊だ!!…」20mほど右手をノッシノッシとこちらへ向かっている。幸いまだこちらには気づいていないようだ。登山道のちょっと小高いところに身を潜める。首にかけた笛を取り出し「ピーピーッ」と吹く
どうなったかなあと少し首を出して見ると登山道の反対側へヒョコヒョコと走って逃げているのが見えた。なんかユニークな歩き方に見えた。やったね、とりあえず危険回避、急いでその場を離れる。

 ず〜と離れて熊の進んだ方を眺めるともう姿は見えない。熊も人間嫌いなんだなあ、すばしこい奴だ(^^;
私は以前にも熊と至近距離で出会っており、その時はほんとやばかった。以来、山歩きの時は中に住所氏名、血液型等を書いた紙の入った笛を持ち歩いているのだ。

仙ノ倉から万田老方面を眺める そして程なく仙ノ倉山に到着した。山頂には立派な展望盤が据えられていた。今日は快晴、360度の展望にひとつひとつ山座同定を楽しんだ。山頂で休んでいた二人連れ、スキーで土樽の方へ下るそうだ。凄いなあ…
さて下山しようか。平標山迄は熊がいないか用心しながら進む。そして平標山に到着。ここは沢山の人がくつろいでいた。みんなスキーを担いでいる。やはり今の時期は歩くよりスキーだなあと感じた。でも私は山では転んだら怖いし腕もないのでスキーはできないのだ。こんないい山をあっという間に下るのはもったいないよ。折角ならのんびり楽しみながら下山しなっくっちゃ(滑れない者の僻みです(^^;

松手山への稜線 平標山からは松手山方面へ下る。展望の良い尾根道で夏は歩けないような稜線上を歩く。振り返れば仙ノ倉方面の景観が素晴らしい。左手の沢を眺め「いやあ、あそこを登ったのか、夏だったらとても歩けないなあ」なとと思いながら快適に下り松手山に到着。もっとも山名の標柱が出ていたから分かったのであるが…凄い雪庇も張り出している。落ちないように用心して歩く。鉄塔までも雪道が続き滑るように下る。そして急な下りとなったが、調子よくスイスイ下っていたらだいぶ道からずれており藪の中を方向修正、ほどなく登山口へ降り立った。

松手山から平標山を望む 今回の山行は稜線は雪が少なく、アイゼンはヤカイ沢の登りで使っただけでした。こちらを登るとだいぶ時間の短縮になるようです。ただ雪崩が起きそうな時期にはどの部分で稜線に出るかが要注意ですね。今度はもう少し早い時期で雪がもっとあるときに歩いてみたいものです。

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