快晴の谷川岳  (1,963m)    2000年12月30日(土)晴れ

天神尾根より望む谷川岳
クリスマスイブに仲間と登った谷川岳、あいにくの天気でちょっと消化不良。では今年最後の最後と単独で気ままな雪山歩きに挑戦した。最初は平標山をめざしたが、トレースはなく単独では無理と判断、急遽谷川岳に変更した。クリスマスイブとはうって代わって快晴の青空、展望ばっちりと最高の雪山が楽しめた。

行  程    土合口…天神平…避難小屋……山頂………肩ノ小屋…避難小屋…天神平
        0750   0840    0950  1205-1225 1230-1315  1407    1510
地  図    谷川岳、苗場山、武尊山(昭文社エアリアマップ)、水上(1/25,000図)
メンバー    単独

 2000年最後は平標山の雪山で締めくくろうと、早朝4時半過ぎに家を出た。明るくなりつつある頃駐車場に着いたが、広い駐車場は除雪して無く車は入れない。手前の店のところに数台泊まっていたが、登山道の様子を見てこようと除雪された別荘内の道路を走る。スタッドレスタイヤが小気味よく効いている感じだ。途中から除雪して無く、登山道には全くトレースはない。ちょっと歩いてみるが、この調子ではたぶん山頂まで単独で行くのは無理だろうと諦める。
 天気は最高に良さそうだ。このまま退却はいかにももったいない。そうだ、先週雪で展望の無かった谷川岳は今日はばっちりだろうと時間を確認したが今からでも遅くはない。よしそちらに決定と決断し、妻に予定変更の連絡を入れ国道に戻る。するとバスから山歩きの格好をした3人組が降りてきた。これから登るのだろうか?と気になったがもう決断したのだ…と平標山の白く冠雪した山頂に未練を残しながら谷川岳へ向けて車を走らせる。
次第に日が高くなり、途中から茂倉岳であろうか、真っ白の山肌に太陽があたり輝いている。いやあ、素晴らしい光景だ
土合駅前より望む白毛門方面              登山指導センター
 JR土合駅前からも白毛門が輝いて見える。以外と早く土合に到着した。年末のためか先日よりもスキー客も少ない感じだ。この天気&時間だったら西黒尾根からも可能だろう。登山指導センター前は除雪していないので脇の方を通って行くが、雪に隠れた側溝にズポッと落ち込んでしまった。いやあ、先が思いやられるなあ(^_^;
西黒尾根経由と記入し登山届けを提出する。今日は他には誰も登山届けを出していない。天神尾根に登る人もいないんだろうか?まさか、こんなにいい天気の日曜日、そんなはずは…

 指導センター前からはカンジキのトレースがひとつあるだけだ。登山口付近まで壺足でその後を歩いてみたがズボズボと潜ってとても歩けない。もう汗が噴き出してしまった。トレースは林道へと続いており登山道は真っ白のままだ。とてもこれではカンジキ着けても単独では歩けそうもない。指導センターまで戻り、天神尾根経由と登山届けを書き直しロープウエイの乗客となった。今日も片道切符だ。帰りにコース選択の幅を広げるために(うまくいけば西黒経由で下山、または田尻尾根を…)

天神平より望む白毛門方面天神平からは白毛門方面の山が輝いている。今日は最高の展望が期待できるぞと心がはやる。ゲレンデの端の方を見上げると4〜5名が登っている。
先日より雪の量が大分多くなっている。今日はアイゼンは着けなくても歩けそうだ。そのかわりカンジキを使うことになりそうだ。今日は体調も良い。これなら無理なく山頂まで行けそうだ。途中2組を追い越す。先週は尾根にでずトラバース気味に歩いたが、今日はまっすぐピークにでようと試みた。こちらはトレースがピークまで見あたらずかなり苦労した。ピークにでるとリフト方面からのトレーススが続いていた。一安心だ。下りは埋まりながらも快適に進む。ずっと先を見ると何組かが歩いている。この調子なら山頂までトレースもあるだろうとホットする。

天神尾根より望む西黒尾根あまりにも良い展望なので、先週この展望を見れなかったトラベエさんに携帯で連絡する「いやあ、素晴らしい天気だよ〜」って…
尾根からは西黒方面や中ゴー尾根方面の展望が素晴らしい。途中3人組が下山してきた。早いですねえと挨拶。山頂から?って聞いたら「そうです」との返事。これならトレースも心配なさそうだ。
 避難小屋までにも数組追い抜く。途中で追い越した3人組が到着し小屋前でテントを張るようだ。今日はここで泊まるのだろうか?時間はまだ大分あるんで山頂から戻って泊まるんだろうなと勝手に想像する。


もう埋もれてしまうのも間近の避難小屋小屋の付近は先週より大分積雪量が増えていた。2.5mは優に越えている。そう言えば大学生のグループ他が、吹雪のため下山できないということで新聞をにぎわしたのはまだ記憶に新しい。それは、私たちが登ったクリスマスイブの数日後だった。山は荒れるとの予報もでていたし、ちょっと無理したのであろうか?吹雪で道がわからず、またメンバーの体力低下で先に進めなくなったとか…
この小屋に泊まろうと思っても雪かきしなくちゃとても入れそうもない。いざというときは自分たちの装備だけが頼りだ。このメンバーはビバークの準備や食料などが万全だったと言うことで無事翌日保護され事なきを得たとのこと。たぶんリーダーもしっかりしていたんでしょうね。山ではしっかりしたリーダーと装備の大切さを認識させられた次第です。

 この先は急な登りとなる。ずっと前方、スノーシューで登っている単独行氏が黙々と歩いている。そのトレースを利用させてもらう。私はまだ壺足だ。標高が高くなるにつれ、吹きっさらしになるのか雪面は堅いところが多くなってきたが、アイゼンをつけるほどでもない。むしろところどころズボっと埋まる方が多い。途中で単独行氏がスノーシューを脱いでいる。アイゼンに履き替えるそうだ。「トレース利用させてもらいました。先に行きます」と挨拶して壺足で進む。
 そのうちわずかあったトレースが完全になくなった。ここで気づいたのだが先ほど下っていった3人組は小屋前でテントで泊まったんだと…そう言えば小屋前で後から来た3人がいやあ、よく整地さててるなあと言っていたのを思いだす。

 と言うことはこれから先は、今日は我が輩が先頭と言うことになる。いやあ、振り返れば純白の雪面に我が輩のトレースのみ…感動である。大きな岩のところからは先日のものと思われるわずかなトレースも全くなくなった。天気がよいのでコースは問題ないが、固められてない雪面は歩きずらい。ようやくここでカンジキの出番となる。先ほどアイゼンに履き替えた単独行氏が追いついてきたが、またスノーシューに履き替えていた。ではお先にと先に進む。カンジキ着けても膝くらい迄埋まる。新雪は手強いぞ〜

トレースのない雪面を歩く
あわよくばトップを維持し、本日の山頂一番乗りを果たせるかもしれないぞとの喜びを胸に秘め頑張る。どんどん頑張る。後ろを振り返れば自分のトレースのみ。感動は続く。後続者もずっと後ろである。よしよし、この調子…と思っていたが、やはり身体は正直であった。疲れがどっとやってきて、がくんとスピードが落ちる。もう山頂までさほど無いと思われる肩の広場あたりで力つきる。すぐ後ろに追いつかれた単独行氏と代わってもらう。しかし単独行氏も小屋から私が追いつくまでかなり頑張っていたので休み休みの歩きである。
 
肩の広場手前

 思い知らされたのはスノーシューの威力である。我が輩がカンジキでその踏み後を歩くとズボズボと埋まってしまう。いやあ、こんなに違うとは…と単独行氏とその威力に驚く。傾斜がこのくらいならスノーシューの方が良いみたいだ。私は結構急登だからと車にスノーシューを置いて今日は万全を期してカンジキにしたつもりだったが残念。そんなことを思いながら一進一退を繰り返しているとスノボー担いだ若者が追いついてきた 。単独行氏と「ここまで頑張ってきたからもう良いよね。先に行ってもらいましょう」と相談し若者に道を託す。
 心の中では「あ〜あこれで山頂一番乗りは夢と消えたなあ…残念」と葛藤が始まるが、これも自分の体力の無さが招いた結果である。一番乗りでなくてもこの素晴らしい山々の展望を前にしてそれは贅沢な望みというものだ。若者は全員がスノーシューだ。やっぱりね…私のカンジキは3名位が踏み固めた後ではどうにか埋まる程度が少なくなった。若者が切り開いてくれたトレースを進む。程なく肩ノ小屋を左に見るところに到着。若者は大きなケルンのところで一休み。山頂への執着はないようだ。一人が小屋に様子を見に行った。ドアが開かず入れないとのこと。
西黒尾根方面からのトレースは全くない。トレースがあればそちらを下山と思っていたが、帰りは天神尾根ピストンに決定だな。無理はよそう

 若者は荷物を置いて山頂方面にわずか行ったが、満足したのかすぐに引き返してきた。山頂は寒かろうと防寒着を着込んでいる間に単独行氏は先に進み山頂一番乗り、出遅れた我が輩が2番手だった。山頂からは素晴らしい眺めだ。バシャバシャと写真を撮りまくる。2000年最後の山は我が輩に味方した。風は強いがしばらく単独行氏とともに山を眺める。
オキノ耳方面 山頂にて 万太郎方面
寒いが頑張って20分も長居した。小屋は入れないと言ってたがどうかなと様子を見に行く。すると窓から出入りしている人たちがいる。「こちらからしか入れないよ、ほらざっく渡しな」と親切なおじさんたちだ。なんと谷川岳2000回おじさんもいた。「今日は何回目ですか?」と聞くと「今日は山頂は行かない。2001回目は2001年になってからだ」という。何というこだわり(^_^;凄いなあ…

雪が吹き込んで扉が開かないことについて入り口をこちらに作ったのは失敗だ、設計者は冬山を知らないんじゃない?とか、ちゃんと最後の人は締めなくっちゃ、窓の鍵しめるなよな。でもなんで窓に鍵なんかついてるんだ。親切に鍵なんかかけられたら非常時入れなくなっちゃうよねえ。困ったもんだ等と登山者のマナーなどについて賑やかに語っていると、そのうち少しづつ小屋が賑やかになってきた。今日泊まる人もいるようだ。泊まるんだったら雪かきして扉開くようにしたら、時間はいっぱいあるんだし等と賑やかだ。

さて下ろう。帰りはカンジキもアイゼンもつけずに下る。もう何人も登ってきたのにトレースはあるものの踏み固められて歩きやすいと言う状態ではない。足を取られて何度か転びそうになる。
避難小屋迄は下り一辺倒でラクチンだ。小屋は入り口が雪かきされて階段状になり、どうにか入れるようになっていた。ここでテントを張った3人組がいざというときのために頑張ったんだろう。お疲れさま。

まだ時間は早い。こんな穏やかな谷川岳は珍しい。このまま下るのももったいない。太陽が少しずつ落ちていくと真っ白な山肌の色が微妙に変わってくる。この状態を写真に撮るのは我が輩の腕とカメラでは難しい。じっくりと移りゆく素晴らしい自然の織りなす光景を目に焼き付けようと雪の上に腰を下ろしコーヒーなど飲みながらのんびりと眺める。いいなあ〜

田尻尾根方面にはやはりトレースがない。下りもロープウエー利用とした。

近くて良き山、谷川岳は天候に恵まれれば、日帰りでも雪山を十分楽しむことができる。しかし一旦天候が荒れればやはりここは上越国境の山、想像もつかないほど厳しい山になるらしい。冬山装備は万全にして入山しましょう。

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