鼻曲山(1,655m) 98年11月21日(土) 晴れ
熊に襲われそうになり生きた心地しませんでした
樹林の間から望む鼻曲山頂葉の落ちた低山歩きは気持ちよい。冬を探しに以前から気になっていた鼻曲山を歩いてきました。展望も天気も最高、素晴らしい山歩きだったんですが…
熊に襲われそうになり、良く生きて帰れたなあと今でも興奮さめやらぬ一生忘れられそうもない思い出となりました
行 程 十六曲峠…鼻曲峠…山頂…鼻曲峠…留夫山…鞍部…1425m峰…美ノ平…霧積温泉
1100 1230-1300 1320 1355 1420 1525-1535 1620
地 図 軽井沢(1/25,000図)、軽井沢・浅間(昭文社エアリアマップ1/50,000図
霧積温泉から剣の峰・角落山を歩き(角落山報告参照)、十六曲峠
で一休み後、本日のメイン、鼻曲山をめざした。分岐まで戻るのも面倒だと、地図を片手に背丈以上もある笹藪に突入、しかし10mも進まないうちに進退窮まり断念、一旦分岐まで戻り、緩い登りでブナやミズナラの気持ちよい小道を軽快に歩く。樹間の間から浅間隠山が見える。道ばたにはうっすらと雪を被った赤いもみじの葉っぱ、秋から冬への衣替えを感じさせる。サクサクと落ち葉を踏みしめ歩いていると鼻曲山山頂が樹間から覗いていた。絶好の展望である。温かいお茶で冷たく冷えた体を温める。
角落山から眺めた鼻曲山への道はかなり遠くに、そして結構なアップダウンに見えたが、歩いてみるとそれほどでもない。山頂がグッと近づき大きく見えだした頃急登となる。緩やかな道に慣れきった体には辛い登りだ。しかし山頂はもうすぐ。平坦で気持ちよい鼻曲峠まで来れば鼻歌混じりである。ところがもう一度裸地化した急な登りである。滑って歩きにくい。途中下ってきたおばさんから励まされる「もう少しよ、小天狗の方が展望素晴らしくって浅間山が待ってるわよ」と
ハーハーと息づかいも荒く辿り着いた山頂(大天狗)は10人くらいが思い思いに食事や展望を楽しんでいた。東の突端の岩からは歩いてきた角落山魂が見渡せる。その向こうには榛名、そして赤城山がみえる。谷川連峰もばっちりだ。先日歩いた凸凹の妙義山も見える。おばさんお勧めの小天狗はわずか数分、眼前にはドド〜ンと冠雪した美しい浅間山が絶景だ。う〜ん、美しい。惚れ惚れする山容にうっとり…
山頂は風も強く寒いので峠迄下り食事とする。6人程のパーティーが寒さにも負けず楽しそうに食事中であった。ここから下山は留夫山経由とする。熊の神社への表示を確認し、緩い登り、日陰のシダに積もった白い雪と緑のコントラストが綺麗だ。
しかし荻野屋の釜飯の容器がところどころに4個ほど有ったのにはあきれた。「良く持ってきたものだなあ、でも、捨てるなよな」と誰にともなくつぶやく。そして一等三角点のある山頂に到着。木々に囲まれ展望は殆どない。妻に「釜飯買って帰るからね」と連絡入れる。
深くえぐれた溝状の道、急坂を下り鞍部に到着。地図では左手に温泉への道が破線で記されているので探すが見つからない。雄滝への破線の道もない。もう少し先かなあと一ノ字山方面に登ってみるが道は見あたらない…
予定変更して熊の神社方面まで行き林道で戻るかとも考えたが、結構時間がかかりそうだしと躊躇する。しばし考慮する。温泉方面を地図で確認、その方向を見ると葉っぱの落ちた木々の山肌はそれほど苦労なく歩けそうだ。留夫山から東南の尾根に出ればその先はわずかだし…「よし、温泉をめざそう!!」と決意し磁石をセットし、樹林帯に踏み込む。ここより道のない山歩きだ。鈴を付けるかな…と思ったが、まあ大丈夫だろうと木の枝をかき分けながら進む。獣道か人の歩いた道か?なんとなく道らしい。イノシシ?の掘ったような滅茶苦茶な穴が所々にある。何の動物か、黒い糞がたくさんある。いや〜な予感
枯れ葉で覆われた急坂を一旦鞍部に下り、そして尾根をめざす。静かで気持ちよい雑木林だ。しかしハプニングはこの時起きた。目の端に黒い塊が見えたと思ったら、突然「ガウッ!!」といいながらドドドッ突進してくる塊…一瞬何が起きたのか分からなかったがよく見ると熊である。頭を低くして迫ってくる。心臓が破裂しそうになる。距離はわずか10m位まで近づいてきた。
もう戦うしかない(勝てるわけ無いよなあ)と思い、ザック横にくくりつけたナイフをとろうとしたが慌てていて取れない。時間もない。もう駄目か!!…
目があった。何もせずやられるのは無念と、持っていた二本のストックを大きく振り上げ、落ち葉を蹴上げ「ガアッ!!」と叫んだ。すると熊は何を思ったのか数m手前で突然方向を変え凄い勢いで鞍部方向へ駆け下りて行った。
この間、時間にしてわずか数秒であったろうが、本当に生きた心地がしなかった。ホッとするとともに、腰が抜けるほどであったが長居は無用と大声を出しながら尾根まで駆け上がった。幸い追っては来ない。肩で息をしながら、急いで鈴を出しガランガランと鳴らせ、それでも足りないと思い声を張り上げ歌いながらずっと先の方に見える林道をめざし駆け下った。遠くから聞こえる何かの叫び声みたいな音、林道手前の枯れた沢近くでは猿が数匹、そんなに急いでどこ行くのと言った感じで見ている。そしてようやく林道、美ノ平到着。ここまで来ればもう大丈夫だろうと一息入れる。
「ああ、良かった」本当に安堵のひとときであった。釜飯買って帰るからねっていう約束も守れて良かった。角落神社でお祈りしたことも幸いしたのかなあ。喰われてたらどうなってたかなあ等と色々な事が胸をよぎる。
これより、霧積温泉まで約70分の表示(実際は40分かからなかった)に導かれ落ち葉で気持ちよいハイキングコースを歩いて戻った。もちろん鈴はガランガランと鳴り響いていた。
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体長はちょっと小さめであったが、黒々としてまるまると太った感じ、体重は私より重そうで割とありそうだった。今日図鑑で確認したが、ツキノワグマかなあ、頭を下げていたからか、そこまで見る余裕が無かったのか、ツキノワは見えなかった。
しかし熊は何故突然突進してきたのかなあ?人の気配を感じたら出会わないように避けるとか聞いたけど…あいつも思いがけないところで出会って威嚇の意味で、まずフェイントをかけたんだろうか?
熊の走るスピードは早い。あれじゃあ逃げられないと思いました。
登山口に「熊出没注意」との表示があったのに、単独行しかも道のない山の中、鈴も着けずに歩いたのはやはりまずかったかなあと反省しています。