西上州 帳付山〜天丸山 2000年11月11日(土)晴れ
さあ、西上州の季節がやってきた!!
西上州に秘峰、奇岩と言われるピークは多いが、その中でもとっておきの秘峰、
西上州マニア憧れの秘峰(^_^; とも囁かれる帳付山・天丸山を歩いた。
結果はうん、なるほどといえる山でした。しかしやはり西上州、魔物がいた!!
【行 程】 天丸橋…帳付山分岐…帳付山………分岐……天丸山……1,307mピーク…社壇乗越…天丸橋
0825 0945 1100-1155
1240 1305-1355 1445 1455 1520
【地 図】 1/25,000図 両神山、西上州・妙義(昭文社エアリアマップ15)
【メンバー】 単独
岩や鎖、そして踏み跡も少なく、
ちょっと間違えれば迷子になってしまうかもしれない魅力いっぱいの西上州
春にはアカヤシオ、秋には紅葉をその魅力あるスリルとともに味わうことができる。そして今年も秋がやってきた。ちょっともたもたしてる内に紅葉は終わりを告げようとしている。さあ急がねば…
天丸山は平成7年に山火事に遭い、それ以降登山禁止となっている
(登山口には禁止でなく、ご遠慮下さいと書かれていた)。理由は山頂北側の岩場などが火事で脆くなっている、また手がかりの木がなくなりかなり急峻で危険と言うことらしい。
でも時々、天丸山に行ったよ〜って声を聞く。じゃあ登れるんだろうと計画した。
どうせそこまでいくならその奥にあり、ガイドブックで「西上州マニアの憧れの秘峰。その重量感あふれる山容は哲学者的な雰囲気だが、油断ならない岩綾を隠し持つ」と紹介されている帳付山にも登らなければなるまい。とすると、コースタイムで9時間…日暮れの早い今の時期にはちょっとつらい。でも夏は暑くてとても歩けそうもない。よし早起きして6時くらいから歩き始めれば楽勝だろうと考えた。
しかし…考えは良かったが、夜更かし朝寝坊で出遅れてしまった。
伊勢崎から、埼玉県本庄経由で国道462号線を走る。この神流川添いの道はくねくねと曲がっており、危なくてスピードは出せない。出遅れたが安全運転は当然である。山頂を無惨に削られた叶山も下から見上げる姿は堂々としている。その山容を左に見て、恐竜の足跡で有名な中里村を通過。どっかで国道299号となった道を野栗沢方面に曲がり、すりばち荘から左に曲がり奥名郷の集落を過ぎる。
この集落、良くもあんなところにと思えるほど山腹に建てられた家屋の光景に目を見張る。舗装された道路もこの集落まで。その先は昔懐かしい土の道だ。しかし結構整備されている。
登山口はまだかなあと土埃を立てながら走る。この林道、先の方が工事中のため時々ダンプが通る。
おっと、ここかな、工事には関係なさそうな車が止まっている。でも登山口らしきところは見えないので先に進む。くねくねと曲がり赤岩尾根方面の展望の良い道だ。そのうち全面通行止めの標識。バリケードは隅に寄せられているが、万一閉じこめられたら大変だ。(以前閉じこめられて青くなったこと有ります)それにどうも行きすぎのようだ。やはり先ほどの車のあったところあたりが登山口らしい。
戻って、どこかに案内がないかと探す。左手には工事用と思われる古いプレハブが建っている。右手にはとてもクルマは通れそうもない荒れた林道が続いている。
あったあった、「山火事のため登山はご遠慮下さい」の看板。
その看板の足に「天丸山登山口は右側へ」と書かれている。橋を渡り、沢の砂防堰堤への入り口に古びた赤いテープが付いていた。ふ〜っと一安心。時はすでに8時を過ぎている。先ほどまで青空であったが、めざす山はどんよりとした雲が多くなってきた。天気は既に下り坂へ向かっているのであろうか?
道はちょっとガイドブックの記述と違うが、テープもあるし間違いないだろうと藪を分け入る沢の右手を歩き始める。
最初は杉の樹林帯、藪もすぐに終わり登山道ははっきりしてきた。
少し進むと、天丸山へと書かれた目印、それに赤や黄色、青のビニール紐が頻繁に出てきた。杉の樹林帯もわずかで終わり、気持ちよい沢沿いの樹林帯となった。何度か沢を渡り右や左岸沿いに少しずつ高度を上げる。よく目印を見ていないと迷いそうだ。
わずかで小さな滝があった。朽ちた木道。
上に乗ると何か折れそう…もし折れたらズルッと沢に落ちそうだ。立木に掴まり崖の方を歩く。そして滝上に出るとまた沢を渡る。今度は古いアルミのハシゴ、横には朽ちた木のハシゴ。
そして沢から離れるとしばらくジグザグの道が続いた後、落ち葉の敷き積もった積もった明るい樹林帯を緩やかに登る。あれ〜、左手の岩山。右手にもいくつかのピークが見える。
おっかしいなあ…
すると、左に行けば大山、まっすぐ行けば天丸山と記された真新しいプレートだ。もう時間的には社壇乗越についても良い頃だが、どうも間違ったようだ。
ここまで全く間違ったという意識がなかったからようやく地図を眺める。う〜ん、間違いは決定的だ。
西上州はやはり怖い。
ちょっと気を抜くと忍び寄る魔物にいいように弄ばれている。
たぶんこのあたりかな、と地図を眺める。表示もあるしこのまま登っても問題は無かろうと落ち葉を踏みしめ登るり尾根に出た。やはり社壇乗越ではなさそうだ。尾根を天丸山へのプレートに導かれ右に進む
帳付山への分岐
ところどころ笹にもぐる様なところもあったが、道ははっきりしている。わずかで分岐に到着。
さあ、どうしよう…前方には天丸山がそびえ立っている。時間はそれほどかかりそうもない。
道を間違ったおかげ(^_^; で、早く着いた。
木立の間から帳付山らしきピークが見える。地図では一旦下った馬道のコルから往復3.5時間になっている。しかしそれほどかかりそうにもみえない。3時間のあれば充分戻ってこれそうだ。
よし、行くぞ〜
元気を出して出発だ。すぐに急な下り、そして笹を潜る。わずかで馬道のコルに到着。昔はこの道を馬も通ったという。凄いなあ…
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帳付山への岩峰から天丸山方面を眺める
前方左からP3、天丸山、大山、倉門山。後方は御荷鉾山の山なみ、白く見えるのは叶山
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コルから岩峰を左から登る。木に掴まりながら登る。途中展望が開ける。これより岩尾根の歩きとなる。1,475mのピークはそれとわからないうちに通り過ぎたようだ。樹林の尾根は歩きやすいが、右側はすっぱりと切れ落ちている。しかし、木が生えているためそれほど緊張感はない。時々岩のピークが現れるがそのピークの登ることなく左から巻きながらトラバースし、木の根っこに掴まり尾根にでる。
足元を見て歩いているためか、時々木の枝に顔をぶつける。新調しためがねを壊したら大変だ。
そしてたどり着いた岩綾からはめざす帳付山の絶好の展望台だ。
どっしりとした山容…しかし哲学者的な雰囲気には見えない。哲学者と言われる人達はどっしりと構えているんだろうか?
東方面には両神山から赤岩方面も見える。
こんな感じでいくつかの岩を越える。一カ所短いが非常にありがたいロープが取り付けてあった。これがないと下るのはちょっとつらい。
そしていよいよこの急坂を上れば頂上かと思えるところを登る。登り切ると平坦な尾根。そしてわずかで何の変哲もない樹林に囲まれた山頂だ。う〜ん、秘峰ねえ(^_^; なるほど…
1時間ちょっとで到着だ。コースタイムが嘘のよう…それほど急いだと言うこともないんだが、やはり岩峰となると人により時間は千差万別となるから余裕を見ているのであろうか?以前赤岩尾根を歩いたときもコースタイムの半分で歩いてしまった記憶があり、拍子抜けしたものだ。
展望は良くない。少し西に行くとすっぱりと落ちた岩。ここからは諏訪山から浅間、妙義、そして榛名方面の展望が素晴らしい。
妻に着いたよ〜って電話する。以外に通じたのには驚きだ。
秘峰に着いた記念にと無線でCQをだす。でも以外ととって貰えない。どうして…
めげずにCQを出していたら茨城猿島郡の局が答えてくれた。
次に思いがけない局が声をかけてくれた。JQ1HXF局だ。日光の宿坊堂山からという。
なんとこの局のホームページで昨夜、天丸山の情報を読ませていただいたのだ。いやあ、奇遇ですねえ。宿坊堂山は粉雪が舞っているという。寒そうだ。
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樹林に囲まれた山頂 |
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西端から望む諏訪山 |
気分良くして天丸山をめざす。総じて道はわかりやすく尾根を外さないように歩けば大丈夫だ。しかし岩を巻くときなどちょっと注意を怠ると変なところに向かっているときがあり、1人苦笑いして引き返したこともあった。ビニール紐は結構豊富に付けられているので、見落とさないようにしよう。
馬道のコルへ戻り、笹の中を分岐まで登り返す。わずかの登りだが以外と疲れた。ビールが飲みたい。どんよりと頭上を覆っていた雲は去り
青空が多くなってきた。暑いくらいだ。今日はビールがない。目に付くのは黄色い「キリン一番絞り」のビニール紐の目印ばかりだ(^_^;
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少し笹藪を下り、見上げればそそり立つ岩峰。耳を澄ませばコツコツコツとアカゲラが木を突っついている。しばし鑑賞。
そして木の根っこや岩に掴まり登る。
結構な高度感がある。本日初めての緊張が走る。ルートがわかりにくいところもあったが
登りは、とにかく上をめざせばいいので迷うことはない。 |
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天丸山頂上
山火事から5年も立っているのに、何か煤けた感じがする。岩は脆くなっており、黒く焦げた木々がもの悲しく立ち枯れている。
一旦自然が破壊されればとてつもない期間がかかるんだなあと痛感させられる。火災の原因は何か知らないが、山に登る私たちは火事を出さないように最大の注意を図らなければならない。
展望は良い
雲が高くなり、浅間山も顔を覗かせてきた。御座山の後に見えるのは蓼科から八が岳のようだ。赤城、榛名、妙義はもちろん西上州の山々が所狭しとそびえ立っている。中でも目を引くのが、頂上を悲しく削り取られた叶山、その右手に聳える二子山だ。
ここでも無線で交信する。諏訪山からCQを出してる局がいたので早速応答する。お互い顔は見えないが、あの山頂でマイクを握っているんだなあと思うとなぜか嬉しくなってしまう。「登山禁止の山だし、注意して降ってね」と励まされる。確かに登山禁止の山に登ってけがをして助けられたりしたら笑い物だ(^_^;。
さて降ろうと最後にもう一度ぐるっと展望を見回す。いよいよ緊張のコース。火災で犯された岩肌は脆く、手がかりの草木もない。枯れた木の枝が道をふさぐ。
すぐにかなりの急降下だ。とても降りれそうに無い。失敗すれば命は無さそうだ。やばいと思った。
そこで今日の秘密兵器登場だ。
長さ20mのザイル、それにイボイボのついた手袋。こんな事もあろうかとザックのそこに忍ばせてきたのだ。やったね!!
しかし残念なことにザイルワークの技術はない。立木に引っかけて手を滑らさないように掴まって降る。
いやあ、助かった。
写真はこちらをどうぞ
と思ったら、また難関が現れた。ここもザイルで下りる。
無事下り終え、ほっと一安心。良くあんなところを降りてきたなあと胸をなで下ろす。
次の難関はP3
岩に掴まり登る。ふと見ると古いロープが取り付けられている。大丈夫かなと引っ張ってみる。
よし、登りは以外と簡単だが降るのは大変だろうなと上から眺める。岩峰に立つと帳付山や諏訪山の山容が見渡せる。
ここから先は比較的簡単な道だ。P2と思われるところでまたザイルのお世話になる。
そして1,307mのピークに立つ。P1と呼ばれるところはそれと気づかず通り過ぎたのだろうか?
右手下方には林道が見える。いやあ以外と近いんだなあ…でも車まで戻るのはどのくらい林道を歩けば良いんだろうと気にかかる。
大きな樅の木が目印(分岐の表示もあり)の社壇ノ乗越から右手に檜の樹林帯をトラバース気味に降る。わずかで林道に到着。
看板はあるが目立たない。ここの取り付きは、よっぽど注意していないと気づかずに先に行ってしまいそうだ。
林道は荒れて草が伸び放題、土は雨で流されたのか大きく掘られている。結構なお金をつぎ込んで開通したんであろうが、こうなってしまっては何にもならない。なんて殊勝なことを思いながら長い林道歩き。果たしてこの林道はどこに出るのか?
一抹の不安を抱えながら歩く。方向的には間違いないだろうから気は楽であるが…
カーブを曲がると見慣れたプレハブ小屋が見えた。ラッキー、なんと車を止めたところに出た。見上げれば大山と天丸山の岩峰がそびえ立っていた。看板の足に書かれていた「登山口は右側へ」とは、この荒れた林道を歩いて下さいね、と言うことだったんだなとようやく理解できた。
天丸山は登山禁止となっている。
この山行記を読まれて登り、万一事故に遭われたとしても責任は持てませんのであしからず(^_^;
社壇乗越から登りピストンするのは、山頂北側の悪路が厳しいでしょう。
やはり登らない方がよいと思います。
しかし、天丸橋(後でわかったんですが今回登りに使ったところ)からは、途中に真新しいプレートが掲げられている。こちらからなら登山禁止にする必要はないと思いました。こちらから登って大山、帳付山、天丸山を歩くのは西上州の魅力を十分堪能することができるでしょう。この日は全く人にも熊にも猿にも出会いませんでした。静かな西上州でした。
