南天山は楽しさ?いっぱい 1998年4月30日(木)晴れ
以前赤岩尾根を縦走したときから似たような山が対面に聳え気になっていた。15mのザイルも必要とのことでこれは楽しめるのでは…と、また藪山、刃のような岩稜や急峻なルンゼを隠し持つ埼玉・群馬県境の風采の上がらぬ山…このキャッチフレーズに心惹かれ歩いてきました。山はまずまず期待通りだった(赤岩尾根縦走や表妙義縦走に比べれば岩稜は楽だった)。またいくつかのアクシデントも有り忘れられない山になりそうだ。
【行 程】 広河原林道…登山口…南天山…1,468m峰…1,348m峰…林道…広河原林道
0930 1000 1140-1220 1250 1415-1435 1525 1600
恐竜の足跡で有名な中里村から志賀坂峠を越え八丁峠、そして雁掛トンネルを抜けすぐに右折。これから広河原林道に入る。工事中の古い看板があるが通行止めにはなっていない。沢沿いの新緑や鳥の声が生気を与えてくれる。二つ目のトンネルを抜けわずか行ったら工事中で通行止め、仕方なくちょっと戻り路肩の広いところに停める。まあ、どこに停めても最後の林道歩きは同じ様なものなので気にならない。
工事中のためトンネルが無くなったのでは…おりくちはあるだろうかと不安であったが、30分ほどで4つ目のトンネルを抜けわずかで右側に小さな滝があった。そこから沢に下り対岸に渡る。
しかし登り口が不明だ。わずかな踏み跡みたいなものに誘われ沢沿いに歩くがすぐに不明となった。そこでとにかく尾根に上がればいいやと藪をこぐ。15分ほどで右が雑木、左側がヒノキの植林帯の急登ではあるが快適な尾根歩きとなる。そして滝谷山方向からと思われる分岐に出てわずかで中津川からの登山道と合流する。こちらは整備された道のようだ。このあたりは天丸山から赤岩尾根、両神山への稜線の景観が素晴らしい。目指す南天山の手前にはわずかだがアカヤシオが残っていた。木のてっぺんでツツドリが鳴いている。よく見ようと双眼鏡を構えたら飛び立ってしまった。残念。そして岩礫を踏んで着いた山頂は立ち枯れた木やアカヤシオ、カラマツが混在する狭い山頂だ。もちろん展望はナイスビュー
素晴らしい展望を前にビールでもと思ったが、南東に見える縦走路は凸凹と手強そうで我慢することとした。ここまではキャッチフレーズの楽しみは味わえなかった。これからは…と緊張する。地図でだいたいの目星をつけガレ場を下る。そして藪こぎ、今日は殆どが木の枝や岩をつかんでの上り下りだ。ストック持ってこなくて良かったなあ…起伏の激しい急峻な尾根歩きは楽しいが疲れる。ようやっと1468m峰と思われる所に到着。そして次のピーク、アカヤシオが綺麗だった。際だった山肌にすくみ上がる。さあ、いよいよ1348m峰かなあとヒーコラ辿り着いたが三角点は無し、残念…
たぶん次のピークだなと気力を振り絞り歩く。ん、岩肌は厳しく登れそうもない。ここまでこだわりを持って全てのピークに立ってきたので見過ごすわけには行かない。よく見ると右手から巻きよじ登れるようになっていた。辿り着いた岩峰には三角点があった。見渡せば凸凹の縦走路が一瞥できる。う〜ん、満足…ここでもビールに思わず手が出るが自重する。双眼鏡で八丁尾根を見るとアカヤシオでピンクに輝いて見える(明日は天丸山と思ってたが、これで両神山に心が動いた)いよいよここからは本日のハイライト、垂直の懸垂下降だと緊張しつつも顔がほころぶ。ザックの底に入れてたザイルを取り出し準備する。
さあ、出発。たどる岩稜はますます細くとうとう垂直となる…とガイドブックにあったが、細くはなったもののそのうち右手は植林帯となり道が無くなってきた。藪漕ぎの様相が濃くなり、岩稜が目立たなくなってきた。あれ〜っ、おかしいなあ…
そのうち下の方に左手に鉱山らしきものが見えた。ん、やはりおかしい。見えるとすれば右手に見えなければ行けないはずだ…間違ったみたいである。でもこのままでも降りれそうだと先に進む。ザイルの楽しみが無くなりちょっとがっかりだ。最後まで取って置いた大好物のお菓子をお預け食ったような虚脱感…
しかしそうがっかりして入はおれない。まだ道は不明瞭だし結構な急降下である。頑張れっと言い聞かせ谷から尾根を二つほど横断し方向修正を計る。枯れ葉の山肌はずるずると滑る。5mほど枯れ葉の滑り台を経験しお尻は真っ黒け、そして眼下に道が見えてほっとする。谷から下りようとするが急で手強い。ここでザイルを持ってたことを思い出す。緊張のため忘れていたようだ。岩場ではないが最後になってザイルを使えてまずは満足、立木に順繰りに引っかけて無事道路に出た。
下山地はだいぶ予定とずれていた。974mのピークあたりからトンネルの下あたりに出たようだ。そして広河原林道入り口に到着。なんと、鎖が掛かってるではないか…がび〜ん!!どうしよう。鎖を持ち上げてみるがとても車はくぐれそうもない…まだ4時なのに、もう工事中の人達は終わったのかなあ、まあ駄目だったら鎖のところでテントでも張るかな等と思いながら車に到着。
一応工事現場で確認してみようと出向いてみると、地獄に仏、まだ作業中であった。いやあ、助かった。事情を話しあけてもらう。「立入禁止ですよ。発破かけるんで閉めたんです」とのこと。「でも、立入禁止の表示なんか無かったですよ。発破は5分前にサイレン鳴らすんで注意しろとの表示見ましたが」と柔らかく反発する。で、あけてもらって一件落着。ついでに近くの酒屋や店を教えてもらいビールや食料を買い込み両神山落合橋登山口でテントを張った。カワガラスや他の小鳥達が賑やかだ。
教訓
1.林道はむやみに立ち入らず、鎖があるようだったら何らかの方法で確認しよう
(このとき鎖は気づかなかったが両脇のポールはあった)
2.下山時は迷いやすい。分かってても地図や磁石で確認しよう
(岩峰上からはコースは確認していたが、登りが右から巻いたため方向感覚が狂ったようだ)
3.未知の岩稜歩きや不明瞭なコースではザイルを準備しよう