足尾 松木川から大平山

2001年6月2日(土)晴れ

 
社山から望む大平山への尾根(左奥が大平山、奥の真ん中ピークが黒檜岳)

足尾のこのあたりの山は、精錬所の煙害のせいか荒れた山肌を目を覆うばかりである。しかし、近年の植生事業によって徐々に緑が戻りつつある。今回歩いた大平山〜社山も松木川に接する方面は枯れた木や荒れた山肌が痛々しい。松木川の標高833m付近から登った。標高差約1,100mの登りはきつかった。しかし、新緑や素晴らしい展望でその辛さも半減され無事到着。
 大平山は展望は良くないが、笹や白樺の気持ちよい登りは楽しい。出会ったのは鹿だけ…
大平山から社山へは快適な笹の尾根歩き。今度は日光方面の山々が姿を見せてくれる。そして下山はかねてから念願だった南尾根を下った。こちらも静かで気持ちよい

【山  名】 足尾 大平山(1,959.5m)、社山(1,827m) 
                             標高差 約1,120m
【メンバー 】  単独
【行  程】  松木川…1278m…大平山……途中一休み…社山……1,400m付近…林道……松木川(車)
        0615   0715  0900-15 0950-1035  1140-1205  1240     1325    1405
【地  図】 日光、奥鬼怒、奥日光(昭文社 1/50000図)


 2年前の5月に登ったときはあいにくの曇り空で山頂付近は危うく道に迷うところだった。それにまだ新緑には早かったので、今度は是非新緑やツツジの時期に登ってみたいと思っていたが、今回ようやく実現することができた。
   
 足尾は訪れる度に荒れた山肌に痛々しさを感じる。旧精錬所後の殺伐とした光景がそれに輪をかける。自然をいったん荒らしてしまったら、その復元には、何とも長大な時間を要するものだなあと思う。今回もそのような気持ちで登ったが、それでも新緑がまばゆいばかりの所や、山肌を埋め尽くすシロヤシオを見ることができ着実に自然に戻りつつあるなあと感じた次第である。

登山口 まずは下山口にやまびこ号(折り畳み自転車)をデポする。1,012mからの下山は厳しい感じだ。
 松木川からは以前登った833mのところからとりつく。最初は山肌の崩落を阻止するために植えられたようなカヤトの急な登りである。登山道はなく鹿の踏み後を頼りに歩く。ぼろぼろと土は脆くちょっと油断すると石ころがごろごろと転がり落ちる。眼下の道路には釣り人達がいるので、気をつけて登る。対面のジャンダルムは草木もなくちょっと異様な岩肌がそそり立っている。あそこに草木が戻るのはいつの日だろうか…

 今日は天気も良く、尾根も稜線をはずさなければ迷うこともない。前方のダケカンバの樹林帯に鹿の集団がいた。こちらに気づいたのかピューと喉を鳴らせ白いお尻を振りながら斜面をかけ登っていった。笹原やダケカンバの緑、時々現れるツツジ、そして青空のコントラストが素晴らしい。振り返れば皇海山方面の展望がいい。標高1,650m迄は厳しい登りが続くが、ほとんど直登といった感じでジグザグ道がないから以外と短時間で登ることができる。

気持ちいいねえ 今日は風が強い。休んでると寒いくらいだが、登り始めるとすぐに汗がでてくる。山登りにはちょうど良いくらいだ。一本西の尾根と合流する頃から緩やかな登りとなり、気持ちの良い笹っぱらにでた。ここで根っころがって一休み。誰にも出会わず風と鹿の音だけが静寂を破る。寂しくなってハーモニカでこころをまぎらわせる。風に乗って爽やかなメロディーが流れる。何かちょっと上手になったような気分になる。

 さて、山頂までもう一息。次第に笹が深くなり針葉樹も鬱蒼としてくると山頂だ。北や西方面は樹林で全く展望はない。南南東方面には登ってきた尾根がずっと続いている。標高差約1,100mを2時間45分か、それほど急いだ感覚もないが、以外とあっさり付いた感じがする。

 さて、展望もないので先に進む。ここから黒檜岳への分岐まではだだっ広い尾根歩きだ。ガスったら迷いそうなところです。ほとんど分岐までは目印もないが、右手の斜面に降りないように進めば大丈夫だ。分岐あたりにはテープや鉄の鉄板の目印が現れる。ここから右に曲がり、今日のメインコースの気持ちよい稜線歩きが始まる。前回来た時はガスでほとんど見えなかったが、今日は青空だ。どこまでもなだらかな笹原が続く。先ほどまで見えなかった中禅寺湖や日光男体山他の山々が見え始める。

奥は日光男体山 ところどころ枯れたような木がにょきにょきと現れる。煙害で枯死した木の残骸であろう。ちょっと異様な雰囲気だ。日光方面の斜面はそれでもまだ木が残っている。1,816m過ぎたあたりで中禅寺湖を眺めながら一休み。久しぶりにスケッチを楽しむ。もうスケッチを初めてだいぶなるが絵心は全く上達していない。いつも妻には、ふ〜ん、何か遠近感がないねと言われているが、これ以上上手にはなりそうもない。気分が良ければそれでいいのだ(^O^)

 先の方の山肌が白く見える。なんだろう、ズミの花かなあなどと思案しながら進む。近づいてみるとなんとシロヤシオではないか、この山でこんなに見れるとは思っていなかったので感動もひとしおである。しばし鑑賞していると、社山方面から単独行氏がやってきた。今日初めての人との遭遇、何か人恋しくなっていたので、しばし立ち止まり談笑する。綺麗ですねえヤシオ、黒檜のほうはシャクナゲも綺麗でしょうねといって分かれる。さて、今日最後の登り、社山へは樹林帯のなか、大きな岩を乗り越えながら登る。この冬は、野峰さん達とここを時々岩の間に積もった雪に落ち込みながら下ったんだなあとと思い出す。

 登りが終わりに近づくとシャクナゲが現れた。そして樹林帯から抜けると数人の人が休んでいた。まずは社山山頂までもう少し足を延ばし、三角点にタッチして戻る。こちらの方が展望がよいのだ。そして中禅寺湖側には結構シャクナゲが咲いていた。日光白根ももう雪もだいぶ少なくなったようだ。歩いてきた尾根がずっと見渡せる。以外と遠くまで来たんだなあと我ながら感心する。

 さて、今日の主目的である下山は、社山南尾根コースだ。以前挑戦しようとしたときはガスで展望がなかったことから断念しており、社山にくる度に今度こそと思ったものだ。今日は天気も最高、ずっと先の方まで尾根は確認できる。体調も良い。こちらもそう歩く人もいないようで道はあまりはっきりしていない。
 最初だけちょっと急な下り。1,550m迄は一気に下る。こちらもシロヤシオが沢山咲いている。シラカンバの新緑と笹原の快適な登山道だ。半月山もこちらから見ると結構立派な山容だ。もう一本東の尾根(1,564mのところ)も下れそうだなあ、いつか挑戦してみようかななどと思いながら下る。

ハーモニカ演奏 そして左のガレた山肌を眺めながらいったん登る。それもわずかでまた快適な下りとなる。このあたりから林業の人達のためだろうか、黒いホースがところどころ見られる。水を引いた名残のようだ。そして朽ちた便所らしきものもあった。次第に道は鮮明になり樹林のため見通しも悪くなってきた。登るとき見た1,012mからの下りは崖でちょっと厳しそうだなあと思いながら下ってきたが、1、050m付近から左手にもおぼろげに道が続いている。よしこっちを下ろうと決断する。道は次第にはっきりしてきた。結構急だがジグザグになった道でそれほど急さを感じなかった。そしてあっけなく林道にでることができた。

 そこから朝やまびこ号をデポしたところまで歩き、後は快適に颯爽とやまびこ号で登り口まで戻る。しかしそうは問屋がおろさない(^_^;)。我がやまびこ号は車輪が小さいのでちょっとした登りがあると結構大変なのだ。松木川へはいり、800m付近からはもうこぐより歩く方が楽な気がしてきた。ついに断念、そこからのんびり歩いて車まで戻った。
途中、登りに使った尾根が見えた。いやあ、良く登ったねえと感心感心

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