あこがれのジャンダルム 西穂から奥穂、北穂へ縦走 (その1)
2001年7月25日(水)〜26日(木)晴れ

奥穂高岳側から望むジャンダルム
 北アルプスでも一、二を競う難コース”アルピニスト憧れの縦走路”と言われる西穂から奥穂高縦走に挑戦した。思えば3年前、槍ケ岳から西穂高へ縦走しようとしたが、雷や雨のあいにくの天気で奥穂高で断念。その後ジャンダルムに登りたいとの夢さめやらずようやくその日がやってきた。

【山  名】  北アルプス 西穂高岳(2,696m)
【メンバー 】  単独
【行  程】  7/25  西穂高口…西穂山荘…西穂高岳…ジャンダルム…奥穂高岳…穂高岳山荘…北穂高小屋
             0535   0620-0630 0805-0820    1125    1235-1255  1315-1345    1535
        7/26  小屋……長谷川ピーク…南岳小屋…槍平小屋…白出沢…新穂高温泉
             0530   0630-0645  0745-0755 0940-1000 1110    1220
【地  図】  上高地・槍穂高(1/50,000図  昭文社 山と高原地図5)

 今年は海の日の連休は北海道への観光旅行。一日だけは大雪山黒岳登山を楽しんだが、いまいち物足りない。この時期にはやはり来たアルプスへ行きたい!!

 ちょうど都合の良いことに平日に都合が着いた。よし、あのジャンダルムをめざすのは今しかない!!天気も安定している。休日は人出も多いし、落石の危険や宿の混雑が予想される。北海道帰りで少し疲れも残っていたが、改めて今しかないと決行とする。

 新聞を見ていたら、ジャンダルムの巻き道で転落、長谷川ピーク付近で転落、重太郎新道で転落事故との記事が目に入った。妻が「行くのここでしょう。危なくないの?」と心配そうに声をかける。「山はどこでも危ないし、注意して行くから。危なさそうだったら途中でやめるし、無理はしません…」と誓って出発する。しかし出発前にあんな記事を見るとやはり緊張してしまう。

 駐車場について仮眠をとり体調を整えようと伊勢崎を18時30分頃出発。途中で助手席の所から水がポタリポタリ…すわっ、幽霊か!!どうもクーラーのドレンが漏れているようだ。この車はどうも山に行くときに何か異変がある。以前も深夜の高速道路でエンジンの出力が落ちて止まりそうになり山行を断念した思い出がある。今回も…幸い異常表示はでていない。しばらく走って様子を見よう…何しろ引き返すにはもう松本まで来てるんだから…

 音も臭いも異常なし。異常表示も出ない。よしこのまま行こうと決定。念のためクーラーを停めて走ると水漏れも少なくなったような気がする。しかし暑い。
23時過ぎに新穂高ロープウエイから1kmほど離れた無料駐車場に到着。平日のせいかまだスペースには余裕があった。真っ暗闇の中、水割りを寝酒に明日の山行を思いながら武者震い。よし、寝よう。暖かいので寝袋を羽織っただけの車中泊だ。

 ロープウエイ始発は本日から5時である。4時に目覚ましがけたたましくなった。う〜ん、眠いよう。もう少し…
再び気がついたのが4時半過ぎである。やばい、ここから1km程歩かなきゃ行けないのだ。急いで支度をして乗り場へと急ぐ。登山補導所に計画表を提出、滑り込みセーフ。後に単独の男性が一人乗り込んですぐに出発した。

 ロープウエイを乗り継いで一気に標高2,156mへ到着。まずは腹ごしらえで気分を落ち着かせる。さあ、いよいよアルピニスト憧れの縦走のスタートだ。

西穂山荘 まずはコメツガやシラビソの樹林帯の中を緩やかに登っていく。ゴゼンタチバナが沢山咲いていた。途中、「焼岳の煙が東に傾けば晴れ、急に北西に…」と観望天気の看板が立っていた。今日はどうだろう…
 次第に傾斜が増しジグザグとなるとわずかで西穂山荘に到着。いやあ、でっかいなあ。綺麗そうな気持ちの良い小屋だ。小屋前で一休み。単独行の男性と「どこまで?」と話す。お互いジャンダルムを目指していた。この後この男性(以後S氏と呼ぶ)と後になり先になり、穂高岳山荘までご一緒することとなった。


焼岳 クルマユリの咲く斜面を出発。振り返れば焼山が、背後には乗鞍岳がばっちり見えていた。煙はどっち向いてるかなあ…まあ、気にすることはないか、今のところ非常によい天気。崩れそうな気配はない。
もっこりした丸山からは展望が開け目指す西穂高方面や前穂高から明神岳が素晴らしい。反対側は笠ケ岳の堂々とした山容が望める。う〜ん、格好いい山だなあ…登りたくなっちゃうじゃない(^_^;)



 岩がゴロゴロした歩きにくい斜面だ。この先の険しさを感じられる。いったん鞍部迄下り、短い鎖の岩峰を登ると独標に到着だ。ここからの眺めも素晴らしい。前方にはピラミッドピーク、西穂山頂、天狗岳方面の鋭い岩峰が続いている。振り返れば依然焼岳方面が見える。

 展望を満喫し先へ進む。ここからはいくつもの急峻なピークを乗り越えて進む。ルートにはペンキの白い丸印がつけられている。これを見落とさないように慎重に進む。しかし何度かアレッ、行けなくなっちゃった(^_^;)と言う場面もあった。天気が良く見通しが良くてもこれだから、やはりガスった時は要注意だな〜

西穂高岳よりジャンダルム方面 いくつもあるピークの中でひときわ目立つピラミッドピークまでは、左右が深く切れ落ちているが慎重に歩けば全く問題はない。落石などおこさない様に慎重に歩く。そしていくつかのピークを越えると西穂高岳山頂に到着した。
コースタイム4時間10分とあるが、2時間半で到着した。西穂山荘でS氏と15時か16時に着けばなんて話したがこの分では以外と早く着くのでは無かろうか?




間ノ岳はまだまだ しかし油断は禁物。遠くに見える槍ケ岳や前穂高岳の展望は気持ちいいが、眼前にそびえる縦走路の山肌は本当に悪場が続いているように見える。あんなところ歩けるのかなあ…落石が怖そうだなあ…と心配はつきない。20kg以上ありそうな見るからに重いザックを持った若者と話が弾む。そんな重たい荷物でこの縦走路を歩くって凄いなあ
大丈夫かなあと人ごとながら心配になる。私は好きなカメラもデジカメのみにした。今日は軽量化に努め10kgに満たないザックである。ただし水は1.5L持って来ている。この軽さならザックが嫌になることはない。

 本来なら、今日はヘルメットを持ってくる予定だった。落石が多そうだしヘルメットがあれば安全だと聞いた。しかし私は持っていない。どうしよう…前日山の店に買いに行ったんです。「どんなのがいいですか?」「う〜ん、買ってもらえるのはありがたいけど、いらないんじゃない?あるに越したこと無いけど縦走路でかぶってるのはあまり見たことないし、重いし…それより石を落とさないように、落石を見逃さないように注意しながら歩いた方がいいと思うけどねえ」との意見。確かに心配のしすぎかなあと思わないでもない。で、結局買わなかったのだ。

 確かに今のところヘルメットを被ってる人は見あたらない。
さあ、いよいよ核心部の奥穂高岳への縦走路だ。キリリと心を引き締めて「お先に」と先に進む。ここで引き返しという人達に「気をつけてね」と見送られる。
まずは間ノ岳をめざす。いくつもの小さいピークを登下降する。ガラガラとした悪場が続き緊張する。そして長い鎖を下り狭い岩場のトラバース。緊張するところだ。間ノ岳への登りは赤茶けたルンゼ上の急登。グラグラと浮き石の多いところだ。コースを外さないように目印のペンキを見てゆっくり登る。

間ノ岳からジャンダルム方面を望む ピークに出ると岩に「間ノ岳」と書かれていた。ふう、第一難関を突破した感じで一安心する。ちょっと気を抜くと浮き石を踏んだり、落石を起こしたりしそうでやばい感じがする。全神経を足下や手先に集中させることが必要だ。この先もこの緊張感を持続させなければと気を引き締める。二人組が登ってきた。ここはどこかなあ、岩のピークばっかりでわからん、と言っていたので「ここに間ノ岳って書いてますよ」と知らせる。アレが天狗岳でしょうねとますます厳しくなりそうな岩肌をお互い眺める。今日は平日で歩いてる人は少ない方であろう。私の前後には5人ほどしか見あたらない。単独行が殆どだ。お互い厳しい環境にいるためか、何となく親近感を感じる。人が多いのも閉口するが、少なすぎるのも何となく心細いものだ。今日は悪場を歩き、抜きつ抜かれつするにはちょうど良さそうな人数だ。

スラブ状岸壁の登り 20kg超のザックの青年は黙々と進む。体勢もびっしりと決まっている。いやあ、若いっていいなあ…以前ボッカもやったことがあるとのこと、やはり違うねえ。若さだけじゃなさそうだ。私が同じ年でも太刀打ちはできないな…

 さて今度の目標は天狗岳だ。途中下ってきた単独行氏とすれ違う。「どうでした。道は…」「うん、なかなか厳しいね」「どこが険しかったですか?」「私的にはすっぱり切れ落ちたウマノセでしたね」。う〜んウマノセか、確かにガイドブックでもすっぱり切れ落ちたナイフエッジは慎重にとある。期待と不安を抱きながら天狗のコルへの鎖場を下る。対面には逆層のスラブ上の岩壁を登る人が見える。いよいよ第二の核心部だ。