草紅葉の高層湿原 苗場山 (2,145m) 2002年10月13日(日)晴れ
苗場山頂上の高層湿原
本当なら、この連休は黒部ダムから下ノ廊下、仙人池ヒュッテ方面で紅葉に感激しているはずであった。しかし世の中、そう甘くはない。週末に北海道への出張となり、金曜深夜発が不可能となった。でもどこか行きたい!真っ青な青空だからと、なかなか行く機会の無かった苗場山をめざすこととした。
行 程 駐車場…和田小屋…下ノ芝…中ノ芝…上ノ芝…神楽ケ峰…山頂
0700 → 0720 0800 0835 0850 0905 →1000
1330 ← 1210 1145 ←1100
地 図 谷川岳、苗場山、武尊山(昭文社エアリアマップ)、水上(1/25,000図)
メンバー 単独
苗場山はなかなか遠い
山々を歩くと頂上がなだらかな山容の苗場山が見える。いったいあの上はどうなっているんだろう?と気になっていた。高山植物も多いよ〜とか、頂上は開放感いっぱいで爽やかだよ〜とかいろいろな人の声は聞いていた。でも、登山口まで結構遠い。できるならピストンでなく赤湯温泉方面へ縦走したい。湿原は魅力だが歩くのはあまりおもしろくない感じがする…と言った感じでなかなかチャンスが無かった。まあ、いつか行けるだろうと…で、そのときはまず和田小屋からのんびり妻と歩こうと考えていた。仙人池ヒュッテ方面が中止となりチャンス到来と地図を見たが、どうも妻と一緒では時間的に無理があるようだ。あまりきついと「もう一緒に行かない!」となるので慎重に判断(^-^;... 夫婦登山は安達太良山に変更したのだ。
3連休、予定がダメになってまた苗場山が遠くなったかと思われたが、あまりにも天気がよい。紅葉は少し遅いかもしれないが歩いてみようと、ようやく苗場山へと重い腰を上げた。
駐車場
和田小屋手前の広〜い駐車場は満車状態。隙間を見つけて駐車。先日の安達太良山に続いて今日も山は大混雑のようだ。静かな山が恋しいなあ…ここから和田小屋迄約20分の緩やかな歩き。紅葉がそこそこ楽しめる。それにしても今日はいい天気。暑くて早くも汗が出る。和田小屋に到着。なんとここにも沢山の車が止まっていた。宿泊客かなあ?ここまで車でこれるんだと思うと、わずか20分の歩きであったが、ちょっと悔しい。でも、いいんだ。今日は山歩きに来たんだから、こんな気持ちいいところはやはり歩かなくっちゃね(^^;;;
<<<登山口<<<
和田小屋迄約20分の
緩やかな登り
>>>熊に注意>>>
登山者のマナーへの注意書きがあった。
「登山にふさわしい装備で入山すること、登山道へ二輪車を乗り入れないことetc」だって、さすが百名山ですねえ。熊もいるそうです
歩きにくい登山道
ブナやツガで気持ち良いところだが、まあ山道だからしょうがないですね、これは…(^^;;;木道も整備されて居るんですが、えぐれた道、湿った粘土質、そして石ころがゴロゴロに木の根っこ。これが非常に歩きにくいんです。靴底がすり減ってる私は滑り転けるんじゃないかと結構気を使いました。こんな人の多いところで転んじゃったら格好悪いもんね、慎重に歩きましょう。雨でも降ったら大変そうな道でした。
紅葉はいまいち
少し時期が遅かったようで素晴らしい紅葉とはいかなかった。でもそれを補うように快晴の青空、山はやっぱり晴れがいいねえ。対面の山肌はそれなりに美しい。シラカンバの白い幹に黄葉が映える。紅葉や広葉樹の赤や黄色、そして笹の緑と色とりどり。標高1,500mあたりが一番綺麗に感じた。
<<<黄葉・紅葉<<<
まずまずかな?
>>>歩きにくい道>>>
結構ツルツル滑るんです。それに木の根っこ。要注意ですね。転んで捻挫しないようにしましょう
神楽ガ峰へ
下ノ芝、中ノ芝、上ノ芝と適度にベンチや広場があり、草紅葉が楽しめた。紅葉と言うよりちょっともう枯れていた感じだったが、太陽を受けてキラキラと輝く様は綺麗だ。ふんわりした草っぱらに飛び込んでいきたい衝動にかられる。中ノ芝は露岩の点在する広々としたところで沢山の人が展望を楽しみながら休憩していた。木道では沢山の登山者で混雑していた。譲り合って歩きましょうね(^^;;;
登りが終わり平坦な道となる。すぐに鉄パイプの梯子があった。股ズリ岩と呼ばれる所だ「あら、怖いわ〜」などと黄色い声を出しておばさんが慎重に降りている。渋滞しているのもものともせず、そろりそろりと…後ろのおじさんがちょっといらいらして、右手の岩を下る。何のことはない、ちょっと慣れた人なら岩を下った方が安全のようだ。私も後ろに続く。この梯子、かなり傾いている。折りにくいなあ、気をつけてねとおばさんに声をかける。
梯子の少し先の登山道で単独のおばさんがアルミシートにくるまり寝ていた。男性達が心配そうに覗き込んでいる。どうも梯子の下りで踏み外し足を痛めたようだ。歩けないので山小屋に救援を依頼したらしい。顔色も悪くなくしっかりしていたので、まあ問題ないだろうと男性達と話しながらその場を去った。楽しいはずの登山がちょっとした油断で…
<<<草紅葉<<<
下ノ芝あたりです。
日差しが柔らかいですねえ
>>>木道>>>
上ノ芝を過ぎたあたりです。結構な混雑。ときどきこのように二列になってるんですが、それでも道を譲らないでお見合いしてる人もいました(^^;;;
えっ、こんなに下るの〜
神楽峰は何の変哲もないピークにちょっと期待はずれ。でも少し先に進むと山頂への大展望が開けた。青い湖面のカッサ湖や谷川岳方面の展望も良い。しかし、そこから標高差で約200m程一気に下るのだ。うひゃあ〜
中腹に「雷清水」と言われる冷たい水場があった。水を飲みながら今から登る山頂方面を見やって気合いを入れる。そして鞍部に到着。夏なら高山植物が綺麗らしいが今日は何も咲いていない。見上げれば山頂へはなかなかの登りだ。休み休み登る。途中で自動車免許証が片隅の岩の上に落ちていた。目立つように誰かが拾って乗せたようだ。このままの方がいいんだろうなあ。
中腹から眺める右手の山肌がきれいだ。右手には鳥甲山らしき山容が見えた。振り返ると神楽峰も結構立派に見える。
<<<苗場山を望む<<<
神楽が峰からいったん標高差約200mを下る。険しい登りが待ち受ける
>>>中腹から望む景色>>>
笹の緑と険しい山肌、ちょっと遅い紅葉が目を楽しませてくれる
爽やかな高層湿原
両側が切れ落ちたつらい登りを頑張ると、沢山の人出と広大な高層湿原が待ち受けていた。広大な高原状の台地、青空を映した沢山の池塘。いやあ、山の頂上にこんなところがあるとは…まずは小屋裏の展望台から鳥甲山方面の景色を堪能する。ちょっとモヤッとしているがなかなかの展望だ。ず〜と遠くに見えるのは妙高・火打山だろうか?まだ時間も早いので広い台地を一周しようと木道を小赤沢方面へ少し下る。ゾクゾクと登ってくる人達とすれ違うのは大変だ。東の方にも木道らしきものが見えていたので一周できると思っていたがどこまで行っても横断する道は現れない。単独の男性に聞いてみると「向こうには行けませんよ」とあっさり告げられてしまった。いやあ、まいったね(^^;;;
来た木道を戻り池塘のほとりで食事とする。
<<<広大な台地<<<
つらい登りが終わると高層湿原が待ち受けている。開放感いっぱいの台地は爽やかだ
>>>池塘>>>
やはり山には青空が見合う
遭難救助
いつまでも横になっていたいがそうもいかない。そろそろ下山としよう。
広大な台地に別れを告げ急な道を下る。途中男性が何か探している模様。どうしたんですかと声をかける。「免許証を…」とのこと。それなら登る時に下の方で見かけましたよと案内する。しかしそこにはもう無かった。たぶん誰かがどこかに届けようと持ち去ったのだろう。男性に失望が広がる。小松原湿原の方まで行くそうだが仲間と来ているので運転は大丈夫なんだろう。
いったん下り、そしてまた登り返し。水場で喉を潤す。そして今日最後の登りで神楽ガ峰に到着。遠くからヘリコプターが飛来してきた。もしかして朝出会った女性の救助に来たんだろうか?眺めていると股ズリ岩の上空でホバリングしている。見ると新潟県警と機体に表示がしてあった。途中二回ほど旋回していたが、やがてロープ?が降ろされ女性が吊り上げられていた。やはり自力下山は無理だったようだ。骨折していたらしい。
近くにいた人達が鉄梯子を眺めながら「怖いねえ、気をつけなくっちゃ」「単独は危険だねえ」等と話していた。
<<<遭難救助<<<
こんなに間近で見たのは初めてだ。骨折も痛そうだがヘリコプターに吊り上げられるのも怖そうだ
>>>股ズリ岩>>>
救助直後の現場の雰囲気はちょっと緊張気味。確かに危なっかしい梯子だ
そしてまた紅葉
遭難救助を目の当たりにして「気をつけねば、私も単独だし…」と思った。怪我をするのは単独でもグループでも危険性は変わらないように思える。むしろグループの方が何となく安易な登山となりやすく、地図や磁石を持たなかったり、下手するとどのコースを歩くのか知らないで付いて行くだけの人もいるようだ。それにお互い相手のペースにあわせようとして牽制しあい、ついつい無理をするなんてこともあり道迷いなどはグループの方が危険性はもしかしたら高いとも思える。単独は危ないよというのは、万一の時連絡ができなかったり、自力救助をやむなくされたり、下手すればそのまま山の藻屑となってしまうことをさしているんだろう。単独の山歩きは緊張感と自由さ、そして孤独さとグループでは味わえない楽しみも多い。心して安全登山に努めよう。
登りではあまり綺麗とは思えなかった山肌が、光の加減で色もくっきりしてより綺麗に見えた。逆光に映える紅葉は何とも言えない見事さだ。帰路林道のゲートが閉まっていてびっくり…あれ〜っと思っていたらおじさんが出てきてゲートを持ち上げてくれた。朝は開いていたので何とも思わず通過したが、平日は閉まっているのだろうか?このおじさん、週末はゲートの番人のように見えたが果たして…
苗場山、思ったより良い山だった。でもここを本当に堪能するなら、やはり山頂で泊まり、赤湯温泉の方へ縦走するのがベストだろう。山頂でテントが張れたらとも思うが国立公園の中ではやはり無理なんでしょうね。紅葉は先週に歩いた安達太良山に比べるといまいちの感があったが、高層湿原の爽やかさは最高に気分良い。高山植物の咲き乱れる時期も歩いてみたいものだ。