上州武尊山(2,158m) 2002年2月2日(土)曇り後晴れ
川場スキー場コース先日、息子と玉原スキー場に行った。その時眺めた剣ケ峰山方面の太陽に輝く雪の山肌が心に残った。登りたい… 剣ケ峰山方面から沖武尊を望む
以前から地図を眺めてスキー場のリフトを乗り継いでいけばすぐに尾根にでれる。しかし、剣ケ峰山の厳しい下りが不安だった。スキー場から眺めた光景、登れなくもなさそうだなと感じた。
よし、決行だ!まずは、様子見のつもりで無理をしないようにしようと心に誓う。
行 程 川場スキー場リフト上部…剣ケ峰山……沖武尊……剣ケ峰山…リフト上部…立体駐車場
0915 1030-1040 1300-1330 1520-1535 1605 1645
地 図 谷川岳、苗場山、武尊山(昭文社エアリアマップ28 1:50,000)、鎌田、藤原湖(1/25,000図)
メンバー 単独
まずは上州武尊山の紹介です。詳しくはこちらをどうぞ
上州武尊山は群馬県沼田市の北方に大きくそびえる山である。主峰は沖武尊(2,158m)、中ノ岳、家ノ串、前武尊、剣ケ峰山などが南面の谷を囲むように山稜をめぐらせ、山麓には武尊田代、武尊牧場、玉原高原などの高原地帯が裾のを四方に広げている。山容は穏やかで、稜線からの展望は素晴らしく谷川連峰や巻機山、日光、足尾、秩父、八ケ岳、遠く日本アルプスの山々を一望できる。
山名は、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)の伝説に由来すると言われる。登山コースは湿原や高原を巡るハイキングコースや縦走コースなど数多い。一部岩稜や鎖場もありちょっとしたスリルも味わうことができる。
そんな上州武尊山、冬期は積雪も多く安易な入山は控えた方がよい。
今回は、川場スキー場からのラクチン冬山登山を計画した。ただ、あの剣ケ峰山は厳しそうだ。越えることができなければ、そこからの展望で我慢して下山もやむ無し、何が何でも頂上を踏むといった事はやめようと心に誓っていざ出発となった。
天気予報は午後から少し下り坂、夜には雪も降るだろうと言っている。よし、ならば朝早く出発だ。リフトの始発は8時だからそれに間に合わせよう…と寝たものの、目覚ましを一旦停めたのが災いして、ちょっと遅めの出発となった。それでも道路がすいていてどうにか8時過ぎに立派なスキー場の立体駐車場に到着した。周りはすべてスキー&スノーボーダー…ちょっと異次元の世界に入ってきた感じ。
さっそく上までのリフト券2枚(¥800)を購入。スキー客に混じってリフトを待つ。順番が来た。「山ですか?、一人ですか?登山届けだしましたか?」と直前で係員のブロックにあう。「家族に出してきました。これ写しです」「ちょっと待っててくださいね」と誰かに相談に行った模様。戻ってきて「あのパトロール事務所に届けてください」と言われた。まあ、ここは素直に「はい」と事務所へ向かう。そこで登山届けの用紙に記入した。「リフト上部のゲレンデ右側の方に、私がつけたトレースがありますので、そちらから入ってください」と言われた。で、またリフト乗り場に向かおうとすると、別の人が「私がそこまで案内します」と言ってリフトに同乗してくれた。
ここまでで大分時間ロスしてしまった。でも安全のためにはやむを得ないだろう。パトロール隊員とコースの状況を聞いたりしながら、二つのリフトを乗り継いで到着。「こちらですよ」と案内してくれた。確かに隅の方にトレースがあった。「帰りには事務所によってくださいね。気をつけて」と送ってもらう。親切だなあ、と感謝し右手から稜線めざして歩き始める。
坪足で歩いたトレースは付近を散策したような感じですぐになくなった。
さあ、これからは自分の足と体力が勝負だ。スノーシューをつける。ど〜んと左右にそびえる岩場。玉原スキー場から眺めた厳しい岩場はここだったんだなと納得。コースはその間を直登状態に登る。少し凍結しているようだが、一応スノーシューでも大丈夫のようだ。ただ、時々ズルッと滑る。20cm位は新雪だろうか、その下が凍っており層ができているのを感じる。こんな状態の時に雪崩れるのだろうか。用心用心。まっすぐには登れないのでジグザグに登る。もう汗が出始める。距離はわずかだが、体調が悪いのだろうか?そんなはずはない、先日罹ったお多福風邪はもう直ってしまったのだ(^_^;)
頑張ってたどり着いただだっ広い稜線からは素晴らしい展望だ。天気は生憎の曇りだが、谷川連峰の上越国境付近には太陽があたり、真っ白で神秘的な山々の景色が綺麗だ。この分ならこちらもそのうち日が射してくるだろうと、どんよりした空を見上げる。太陽には薄く雲が懸かっていた。わりと雪は締まっているようで歩きやすいが、時々ズボッと埋まる。
前方に剣ケ峰山がそびえる。左手にはめざす中ノ岳から上州武尊山の稜線が見える。雪に半分埋もれた石祠に安全登山を祈願する。剣ケ峰山への登りはそうきつそうでもない。しかしその向こう側の下りは、こちらから見る限りど〜んと切り立っている。大丈夫だろうか…
何かの写真で見たが、この剣ケ峰の右側をトラバースしている光景…行けそうにもあるが、雪崩が怖い。よし、まずは山頂に立って考えよう。急な登りは、時々腰まで埋まりなかなか進まない。雪だるまになって身体全体でラッセルする。何度もスノーシューを蹴りこんでステップを作り、ピッケルをグイッと差し込んで一気に身体を持ち上げる。いやあ、疲れる。でも、誰もいない。この山には私一人と思うとそれはいい気分だ。
そして剣ケ峰山です。別名西武尊とも言うらしい。ここの展望は申し分ない。スキー場からわずかでこの展望。以前夏の時期に裏見ノ滝方面から登り、この剣ケ峰山に立ったことがあるが、こんなにも山の様相が変わるのか、やはり雪山は最高だなあ!!と感激のひとときだ。
以前登った玉原スキー場から登った鹿俣山、そこからこの剣ケ峰へと続く山並み「積雪時期だったら歩けるかも…」と眺めていつの日かと思ったものである。そのコースをこちら側から眺めると確かになだらかな稜線が続いている。しかし、獅子ガ鼻山を見たとき、その案は無謀だと思い知らされた。そそり立つような獅子ガ鼻山の岩壁、岩登りのエキスパートにのみ許されるような光景だ。見るだけだったら格好良いが、やはり歩くのは遠慮しておこう(^_^;)
西峰の西には、これも小振りだが荒々しく天を突く鬼岩が眼下に見える。まさしく鬼が住んでいるような雰囲気。厳しい岩場は近寄りがたい雰囲気だ。八が岳も見える。谷川岳も見える、巻機山も…そして北側には上州武尊山がそびえる。距離はそんなになさそうだ。天気もそれほど悪くなる様子はない。心配だった急な下りはどんな感じだろう…う〜ん、険しそうな雰囲気。
右手の山肌をトラバースする案がまた胸をよぎる。ちょっと身を乗りだし眺めてみる。う〜ん、やはりどうみても今日の雪質ではやばそうだ。やはり予定通り頑張って下ろうか?スノーシューちょっと下ってみるが、ズルッといって変な格好になってしまった。やばい!慎重に上まで戻りアイゼンに履き替える。山で無精は禁物だ。ちょっとした岩場の下り。アイゼンに履き替えたらそれほど厳しそうにも感じなかった。アイゼンが必要なところはほんのわずかだった。そしてズボズボと埋まりながら安全地帯まで到着。振り返り剣ケ峰山を眺める。いやあ、やはり天を突くような山容だ。
暑いので、オーバージャケット、フリースの帽子を脱ぐ。ズボン下は脱げないのでそのまま歩き続けるが暑い。やはりズボン下は入らなかったなあと反省(^_^;)。まあ、我慢して歩こう。そしてまたスノーシューに履き替える。ここから先はいくつかのアップダウンで厳しそうなところは無さそうに見える。12時過ぎくらいには着くかなあと歩く。しかし、いがいとしぶとい。一人の力は微々たるものだ。そんなに急に見えない登りでも、雪が深くなるとなかなか進まない。下りは楽だが、登りともなると腰までのラッセルとなるところもたびたび、なかなか進まない。1975mのピークと思われるところは、わざわざ登る必要も無かろうと左側をトラバース気味に進む。所々凍結しているところもあり、スノーシューで斜めに歩くのはかなり難しい。何度かアイゼンに付け替えながら進む。無精してアイゼンのままで進もうとするとズボット埋まり脱出時のエネルギー消耗が激しい。いやあ履き替えだけで時間を大分ロスをする。天気も少し下り坂の雰囲気となってきた。
よし、13時までに着かないようだったら引き返そうと方針変更する。山頂は風が強いだろうとオーバージャケットを着る。
しかし山頂はもうすぐだ。できれば山頂に立ちたい。よ〜し、頑張るぞ〜と気合いを入れる。頂上へのアタックは右から?左から?中央は岩場だしどちらからか回り込んで登る必要がある。とりあえず中腹まで行って様子を見ようと登る。スノーシューでは限界となる。しかしここは履き替えるにはちょっと危険。少し頑張ってちょっとした広いところでアイゼン装着。一気に歩きやすくなった。で、周りを眺めると左から登る方が楽そうだ。ひと頑張りで手小屋沢避難小屋からの稜線に出ると山頂はあっというまだった。
時間はちょうどタイムリミットの13時。やったね。まずは無事登頂の報告をしようと妻に電話。しかし繋がらない。まあ、いいか…
山頂の標識は「えびのしっぽ」状態。風が強い!記念撮影をしようと小さな三脚にデジカメをつける。タイマーでバシャっとなる前に風でカメラがころんと転げる。何度かの失敗の後、風の弱まった時に無事撮影終了。おちついて展望を堪能。心配していた天気も持ちこたえている。
歩いてきた剣ケ峰山方面の稜線が一番格好良く見える。これも自己満足だろうか(^_^;) 自分のつけたトレースが一条の線になってずっと続いている。感動\(^0^)/。以前、やはり積雪時期に歩いた中ノ岳方面も姿も見事だ。冠雪した日光白根山も堂々と見える。久しぶりにあの山にも登ってみたいなあとしばし眺める。その他、数え上げればきりがないくらいの白き峰々。特に格好良いなあと感じたのは越後駒ヶ岳と巻機山だった。
風が強いのでパンとおにぎりで軽く食事をする。テルモスの温かいお湯がありがたい。さて、たった一人の山頂に別れを告げ下山としよう。今日は誰も登ってこないようだ。帰りはトレースがあるので少しはラクチンだろう。ただ、このコース一旦下って剣ケ峰山迄登り返さなければならない。これは以外と疲れる。ちゃんと帰りの体力を温存して山頂アタックするかどうか判断する必要があるだろう。
さて、帰りは自分のトレースを忠実にたどる。登りはスノーシューで歩いたところ、少しは堅くなってるのでアイゼンでそのまま歩こうとしたら、やはりズボッと潜り、これが意外と疲れる。もう少し歩けばあそこはアイゼンだったなとそのまま頑張るが、やはり無理。またスノーシューとアイゼンの履き替えだ(^_^;) 途中携帯が通じたので下っている旨連絡する。この一言が家族も安心するのだ。いやはや便利な世の中だ。
このころから青空が見えてきて、天気がぐんぐんと回復してきた。あれっ、午後から下り坂、そして夜は雪の予報はどうなったんだろう?1975mのピークは同じようにトラバース気味に登る。そしてしばらく歩いていたら、何か人の声がする。んん、何だろう、気のせいかなと歩いていたら、剣ケ峰から少し武尊山に寄ったところのピークに人影発見。やった〜今日初めての登山者だ。なんかホットしてしまった。3人組のようだ。剣ケ峰を登っている。さあ、最後の登りだ、頑張るぞと気合いを入れて岩場を登る。そこには先ほどの3人組が休んでいた。「頂上まで行って来たんですか?私たちはその先までで時間切れ、引き返す途中です」とのこと。何でも、関越道が事故やとスキー客で混んでいたとのこと。で、着時間が遅くなり途中で引き返すこととなったようだ。
ここから先はこのグループと山の話などしながら下る。スキー場手前の稜線にベンチがわずか顔を出していた。そこでひなたぼっこしながら景色を眺める。リフト乗り場に到着。3人組みは「頂上まで行かなかったから、歩いて下ろう」といっていた。感じの良いグループだった。私ももちろん下りは歩きだ。3人に別れを告げ、スノーボーダーやスキーヤーに用心しながらゲレンデの隅の方を下る。時々目の前で、あれ〜とかキャーといいながら思いっきり転ぶ人が居る。笑っちゃいけない(^_^;)そんな光景を眺めながら1時間はかかるかなと思われるゲレンデを40分程度で下った。そしてパトロール事務所に立ち寄る。「天気良くなって山は良かったでしょう。どうでした?」「はい、展望も良く楽しめました。雪も思った以上に多くラッセル、楽しかったです」と無事下山の報告をして帰路についた。
以外と短時間で登れるこのコース、でも天候に恵まれたから楽しめましたが、悪天の時はコースを間違えやすいようなところもあるので歩くときは注意しましょう。また剣ケ峰山の下りは細心の注意が必要です。雪が締まる残席時期には、剣ケ峰山の東をトラバースできるようになるらしいですが、雪崩には十分注意しましょう。
そのほかの写真はこちら
初めてのスノーシューで上州武尊へはこちら