赤城鍋割山初日の出            1997年1月1日(水)晴れ
 さあ、今年も元気に山登りを楽しむぞ!!と一年の安全登山を祈念しに赤城鍋割山をめざした。途中Tさんご夫婦に出逢い、新年の夜明けという感動的なシーンを楽しく厳かに迎えることが出来ました。

箕輪駐車場登山口…荒山高原…鍋割山手前のピーク…鍋割山…荒山高原…登山口駐車場
0530            0600    0620(初日の出見物) 0800             0920
 昨年は寝過ごし初日の出を迎えることが出来なかった。今年こそはと国民的大行事紅白歌合戦や恒例の年越しそばに未練を残しつつ早めに就寝。朝4時過ぎに自宅を出発、途中朝食を仕入れにコンビニに寄る。「あれっ、酒呑童子さんだ」と女性の声、なんとT夫人であった。今日鍋割に行くとは思っていたが、ここで会えるとは…Tさんは乾杯用のビールを購入。考えることは皆同じ、私のザックにもしっかりとビールが入って初日の出を待ちかまえていた。

 箕輪駐車場についてびっくり。沢山の車で満車である。エエッ、こんなにいるの。まさに群馬の山好きがみんな集まった様な雰囲気に驚きである。早く登らなければ、山頂が一杯になるんではとの懸念で先を急ぐ。先日Tさんが登ったときより雪が多そうだとのこと、日陰では少し凍結している感じだ。でもアイゼンまでは必要なく新調したストックが威力を発揮する。静かな夜道をライトで歩くのも楽しいものだ。月明かりで雪の反射があるところはライトを消して歩いても大丈夫だ。夜空を彩る星空にも感動。しばし静寂を楽しみ歩く。山肌を先行者のライトの明かりが連なっている。狐の嫁入りみたいと奥さん。今日の冷え込みはあまり厳しくなくばっちり着込んだシャツが暑苦しい。そして荒山高原着。

 奥さんをトップに歩くが、どんどんと進む。高原でちょっと休憩して歩き始めたが、奥さんがひっそりと、「さあ、どんどん追い抜いていかなくっちゃ」と言った様な気がする。ここまでもかなり追い抜いてきた。元気良いのに脱帽である。私はゼーゼーと息が荒い。道は所々雪は有るが、それほど心配はない。6本爪アイゼンが話題になるが今日は必要ない。僅かで尾根に出る。まだ日の出までは充分時間がある。先日Tさんが下見していて「ここが一番」とのビューポイントで日の出を待つ。続々と登山者の列が続き山頂をめざす。しかしここが一番だよっ。山頂より良いんだからと声には出さず見送る。

 明けの明星が一段と輝いて見える。そして東の空が明るくなり次第に感激のドラマが進行する。辺りを見渡すとこのビューポイントも東の空に向かって鈴なりの観客である。6時50分、待望の初日の出!!真っ赤な太陽が静かに姿を現す。自然が織りなす素晴らしい光景に思わず歓声が上がる。「バンザーイ」、静かに手を合わせる人、写真に感動を撮しこむ人……皆それぞれの思いを胸に……T夫妻も手を合わせ何か祈っているようだ。私も今年も安全登山が出来ますようにetc…と沢山のお願いをした。日本全国で沢山の人がそれぞれの思いを託して祈っているのではたして我が重いが通じてるか疑問であるが、まあ、早起きしてやってきたのでそれなりに聞いてくれてるのではなかろうか……

 で、三人でビールで乾杯!!あらためて新年の挨拶を交わす。見渡せば、上州武尊、谷川連峰、浅間山、八ヶ岳、秩父の山々、そして富士山の素晴らしい眺望が花を添える。やはりお薦めビューポイントだ。来年はあの雪山の方から初日の出を見ようかなんて冗談が口をついてでる。初日の出のドラマも無事終わり鍋割山頂をめざす。山頂方面からは日の出を見終わった人達が続々降りてくる。どの顔も満足しきっている。交わす挨拶もはつらつとしている。沢山の人出でちょっとした赤城銀座である。

 山頂では数張りのテント組みもいた。昨日から泊まっていたのであろうか。私もいつかはこの山頂でテントを張り夜を明かしたいと思っているがまだ実現に至っていない。
 少し風が冷たい。大沼小沼さんがチタンのコッヘルを取り出し、餅入りのうどんを作り始めた。うどんと一緒にビニールも放り込んでいる。おう、豪快。それともまだ寝ぼけてるんでは無かろうか等とは失礼ながら言えない。刻んだ下仁田ネギもいい香りだ。そして出来上がり、私も一人前ご馳走になってしまった。新年早々恐縮するが暖かくて美味しかった。この場を借りて再度感謝!!

 そして来た道を下山する。暗いときは気が付かなかったが結構霜が降りている。見えると滑りそうで不安である。しかし、私はストックで万全である。T夫妻にストックの効用をアピールする。「ストック屋の手先みたい」なんて笑われる。でも、今度会うときはご夫妻の手には多分ストックが有ることだろう。

 今日はまだ鳥の声を聞かないが、木々を見上げて「あれが宿り木だよ」って大沼小沼師匠が教えてくれる。どうやって宿るんだろう?実がなり果実酒によいらしい。どんな実だろうと双眼鏡で確認する。プチッとした感じの黄色っぽい丸い実が見える。採ってきて果実酒にしようと話は弾むが、あの高いところに行ける運動神経と度胸の持ち主は誰もいない。どんな味がするのかなあと興味は尽きないが断念する。

 そして無事下山。楽しく厳かな新年登山は終了した。帰路赤城登山口の番人、Tさん宅にお邪魔させていただいた。そうか、Tさんはいつもこの窓から赤城をみて山行を決めるのか、これなら昼から出発もあり得るなと納得する。今年は新年早々楽しい一時が過ごせ良い年になりそうだ。

おひるねの森   赤城山案内