足尾 中倉山(1,499m) 沢入山(1,704m)
1999年3月28日(日)晴れ
足尾銅山跡を望む備前楯山に以前登ったとき、眼前に聳える赤倉山や、社山他、山々の荒れた山肌に歴史の犯した過ちを思い知らされた。今回はそんな荒れた山肌の中倉山をめざした。
歩行時間 約6時間30分(休憩含む)
行 程 仁田元沢820m地点…1150m地点…中倉山山頂…1640m地点…沢入山…
0940 1025 1145-1300 1330 1350-1420
中倉山…三角点…1390m地点…880m地点林道…820m地点
1505 1510 1600 1610
地 図 1/25,000図 中禅寺湖
荒れた山肌の中倉山OさんのHPで中倉山登山の記事を見つけた。以前から登りたかった山だったこともあり、登山口等の情報をいただいた。そして早速挑戦、わたらせ渓谷鉄道間藤駅を過ぎると荒れ果てた足尾精錬所跡、周囲の山々は地肌をあらわに痛々しい限りである。足尾ダム(三川合流の砂防ダム)から眺める風景はこれが日本の景色?まさに西部劇にでてくるような景観にただ驚きである。日本のグランドキャニオンとはよく名付けたものだ。
ダムをぐるっと回り込むように仁田元沢沿いの荒れた道を進む。4WDの本領発揮である。さて、教えてもらった登山口はどこらあたりかな…念のためどこまで道が続くのかぐんぐん進み、仁田元沢2号ダムあたりまで行ったものの景観の異様な雰囲気に心細くなり急いでゲートまで戻った。以前西上州の南天山に登ったときゲートを閉められて閉口した記憶がよみがえり一人苦笑い…それ以来慎重な私である。
ゲートの手前に車を止め、地図で確認。Oさんが下山に使ったという道かな?うん、そうみたいだ…どこまでも続くような登りが続いている。登り始めは赤土でズボズボしたような状態で歩きにくい。わずかで右側が切れ落ちた崩壊地の尾根歩きとなる。馬の背のような感じ、岩も脆い、浮き石に乗らないように用心、用心。落ちれば終わりだな…と気を引き締める。右手の尾根も気持ちよさそうである。沢沿いにお尻の真っ白な鹿がかけ登っている。あんな調子で登れたらいいのになあ…と思いながらあえぎあえぎ登る。
左手からの尾根(Oさん達が登りに使った尾根…こちらも厳しい登りのようだ)との合流点、1150m点に到着。まだまだ厳しい登りが続く。このあたり草木も少なく展望は抜群である。日光男体山が右手の尾根から姿を現した。目指す山頂方面に大きな岩が聳えている。何という名前が付いているのだろうか?ここらあたりから背の低い雑木林となる。獣道があちこちに走っているが、ただひたすら山頂を目指す。ときどき鹿の鳴き声が聞こえる。右手の尾根が合流するあたりまでくるともう山頂はすぐみたいだ。このあたりは時々赤いテープが見られるがトレースはほとんどない。歩く人も希なのであろう。途中展望の良い瓦礫のところでしばし休憩、いやあ、見事な景色だ。
雑木林の急な登りが終わり平坦になった。ぼちぼち三角点だな。どこだろう?
あった、あった。もう少し草が深かったら見逃してしまいそうなくらいだ。何の表示もない。山頂はまだここより5分くらい登ったところにあるので先に進む。山頂も何の表示もない。本当にシンプルな山だなあ。山頂は背の低い笹原の広くて気持ちよいところだ。前方には皇海山が見える。日光方面の半月山、社山、大平山等が手に取るように見える。相変わらず山肌はのっぺりとして木々は少ない。今度はあの尾根を登ってみたいなと地図で山々を確認する。
さあ、ビールで乾杯だ。しかし静かだ。邪魔をするのはけたたましい鹿の鳴き声だけ…ここまでで5頭くらい見かけた。妻に電話し、「中倉山だよ〜」と連絡する。本当は今日は偵察のみで、もしかしたら赤倉山か社山の方に登るといって出かけてきたのだ。中倉山のあまりの山容の素晴らしさ。とても登れそうもない赤倉山…で、こちらとなった次第である。万一のことがあるから連絡はかかせない。そしてアマチュア無線で数局と交信する。妻とも交信しこれから沢入山をめざすと連絡する。
天井の楽園とはこんな光景を言うんであろうか?笹の稜線は本当に開放的で気持ちよい。ところどころにある残雪が彩りを添える。ちょっと下って、今度は岩稜の尾根歩き、わずかの急登、岩は脆い。松木川方面はかなり急峻だ。前方に真っ白な山が見えた。上州武尊のようだ。青空に浮かぶ日光白根山も輝いて見える。1640m地点でちょっとひと休み。ここからまた緩やかな気持ちよい笹原、シャクナゲの木も見える。そしてわずかで沢入山に到着。
う〜ん、ここからも素晴らしい展望。皇海山が手に取るようだ。思わず歩いていこうかという気持ちになるが、実際歩けばまだまだ遠い。手前のオロ山とその右手の台地状の尾根がちょっと面白い。ますます先に行きたくなる雰囲気だ。庚申山迄くらいは一日で歩けそうである。そして庚申山荘に泊まって皇海山まで…今度計画してみるかな?ここは地図の勉強にはもってこいの場所である。山肌に木が少ないから尾根や沢の状況がよくわかる。大平山から社山も歩けそうな感じである。う〜ん、宿題をいっぱい抱え込んでしまったなあ(^_^;
さあ、大満足したので下山とするか。帰路は尾根沿いに1162mの沢に降りようかとも思ったが、道路がどこまで通じているか不安だったので中倉山まで戻ることにした。中倉山の山頂手前から松木側へ降りるペンキ印があった。なるほどこんなコースもとれるのかと尾根を眺める。結構厳しそうな尾根だ。そして気持ちよい尾根歩きに別れを告げ、三角点から南に下る尾根を下り1350m付近から左の尾根を下る。右の尾根は道路に降りるところが崖のようになっており無理と判断した。明るい雑木林を快適に降り、瓦礫の尾根となるところで鹿よけの網(高さ2m以上ある)に遭遇、いやあ、参ったなあ…で、うろうろと出口を探す。これは鹿除けだよ〜と表示のあったところにすり抜けられるくらいの開口部があった。いやあ、良かった、良かった。しかし、ここからは結構なガレ場。うっかりすると脆い岩を落としてしまいそうで緊張する。
そして鹿よけの網を二カ所ほどくぐるとまた雑木林となる。夕方のためかあちこちに鹿が見られる。結構網の抜け場を知っているような感じで走り回っている。
最後は小さな瓦礫の雑木林を滑るように下ると白い車止めのある道路に到着(中久保沢の少し上)ここから車までシジュウカラの鳴き声や姿を楽しみながらわずか10分ほどで着いた。
いやあ、岩稜あり、ガレ場あり、気持ちよい尾根歩きあり、鹿も10頭以上見かけたし、展望も抜群、それに静かでコースも不明瞭…面白い山歩きであった