八ガ岳 赤岳、権現岳 98年9月13日(土)晴〜15日(月)曇り時々雨
真教寺尾根〜赤岳〜キレット
旭岳方面より赤岳を望む紅葉にはちょっと早い八ガ岳を歩いてきました。険しい登り、鎖場の真教寺尾根。
そしてキレットのガレ場の急下降と八ガ岳の魅力満載のコースに満足しました標高差 約1,400m(美ノ森から赤岳)
行 程 13日 美ノ森車道横テント泊
14日 美ノ森…牛首山…赤岳……キレット小屋…旭岳…権現小屋
0540 0830 1205-1235 1355-1415 1545 1615
15日 小屋…権現岳…三ツ頭…天ノ河原…天女山…美ノ森
0600 0610 0710 1000 1010 1145
山行こうか?どこにしよう。折角の連休だから八ガ岳でも…幾つかの案の中から小屋泊まりで一番楽?な真教寺尾根を歩くこととなった。同行のF氏は写真撮影が山行のメインである。今回のコースはF氏にはちょっとしんどいかなあと思ったが、まあ予定通り歩けない場合は手前の小屋に変更でもいいかなと内に秘めての山行となった。
前夜、美ノ森の道路脇の広場でテント泊。久しぶりに炊いた御飯はまあまあの出来であった。夜は素晴らしい星空に感激した。
そして朝、昨日に続き素晴らしい天気。美ノ森駐車場へ車を移動し樹林の間からかいま見える赤岳をめざした。展望台の建つ美森山から朝日に輝く赤岳は遙か遠くだ。わずかで赤岳、横岳が遠望できるウメバチソウの咲く羽衣の池に到着。早速F氏が撮影を始める。このあと花を見る度にF氏に名前を教えてもらう。今日は「F氏の写真学校」への入学である。時々ファインダーを覗かせてもらい花撮影の極意を教えてもらう。久しぶりに交換レンズ2本、三脚、カメラの重さが肩に食い込む。しかし、デジカメでは味わえない写真の奥の深さを楽しむことが出来た(でも、出来映えは?)
カラマツ林を過ぎ、富士山や南アルプスの見える展望の良い賽の河原を過ぎ、徐々に針葉樹林帯の厳しい登りとなる。まだまだ先は長い、F氏はちょっとお疲れ気味であったが、穏やかな登りの樹林帯歩きとなり元気も出てきたようである。しかしその元気も木々の間から見える赤岳への登りの急な山容に「えっ、あそこ登るの〜」としぼみ始める。これより「赤岳迄着けばあとは下りばっかりの楽勝だよ。頑張ろう。山だもんね。少しは厳しくなくっちゃね。」と権現岳への登りは口にも出さず励まし続けることとなった。
近づくほどに厳しい登りに息も絶え絶えとなり、森林限界を抜けいよいよ真教寺尾根の核心部である。青空の中にそびえ立つ赤岳に向かって岩礫の急斜面やいくつもの鎖場が続く。しかし足場はしっかりしており鎖を使わなくても歩けそうなところもあり、登りではそれほど難路とは思わなかった。でも鎖場が苦手な人にはちょっと苦労しそうである。重い荷物だったり、悪天候や下りではかなり険しいだろうなと感じた。
紅葉にはちょっと早いが、少し色づいた山肌と青空、天狗尾根の稜線が疲れを忘れさせてくれる。F氏の足取りが重くなり休憩が多くなる。今日の宿泊地である権現岳への稜線の展望が気持ち良いが遙か遠くに見える。「あんな所まで歩くの〜。もう駄目だ!!」とか言いながらも写欲をそそる素晴らしい展望に励まされ頑張って登る。紅葉したウラシマツツジやチョウノスケソウの実が素晴らしく、阿弥陀岳をバックに撮影するときのF氏は疲れなんかどこか行ってしまったようだ。
「もう少しですよ、頑張ってね」と下りの人に励まされる。この日登りで4人ほど追い越されたがその人達はもう下りである。いやあ、凄い健脚である。以前ヒネモグラさんが4時間で山頂と書いていたが、この真教寺尾根をものともしない天狗達にびっくりである。
そしてようやく主稜線に出てわずかの岩稜歩きで赤岳頂上に到着した。記念撮影は後に回し、赤岳頂上小屋で「ビール下さい!!」と叫ぶ。「う〜ん、旨い…」
展望は最高、横岳、硫黄岳、蓼科山が一望に望める。F氏も「ここまで来れないと途中思った。頑張ったなあ」と感動のひとときである。しかしまだ先は長い。山頂で記念写真をとり権現岳をめざす。今度はキレットの厳しい下りである。正面には北岳や甲斐駒等の北アルプスの山々が見える。右手には阿弥陀岳の凛々しい姿を眺めながらガレ場を下る。天狗岩手前の一枚岩の鎖場は滑りやすく緊張したが無事通過。ガレ場はズルズルと滑りやすい。幸いキレット下山中は誰にも出会わず落石の不安から免れることが出来た。
振り返れば赤岳の雄姿が素晴らしい。そして樹林帯となりキレット小屋に到着。水場までは約3分の下り。細々とした流れの樋から水を補給する。登りはしんどかった。
小屋は閉鎖中であり、これで「元気なくなったらキレット小屋泊まりにしようか」との思惑はすっかり外れF氏は虚脱状態(^^; 「よし頑張ろう。なんならツエルト貸すからビバーグする?」等と気合いを入れシラビソの樹林を登る。あとでF氏に聞いたところではここが一番しんどかったとの事であった。
旭岳の手前の登りで白く可愛らしい釣り鐘状の小さな花を見つけた。「Fさん、珍しい花があるよ〜」と先を行くF氏に声をかける。疲れているのかわずか数mであるが降りてこようとしない。で、「いやあ、珍しい花だなあ。見ないと損するよ」と言うと降りてきた。「イワヒゲだな」とのこと。小屋に4時前に着こうと思っていたが花の誘惑に負けて二人して三脚構えて撮影する。
旭岳のピークは登山道から少し外れているのでF氏はパス。私は寄り道してピークに立つ。そこには権現岳まで1時間の表示があった。「あれっ、大分前のピークにも1時間と書いていたなあ??」
一旦下り緩やかな登りのあと長〜い源治バシゴ…これはきつかった。登り終えて又鎖場である。そしてようやく稜線に出ればあとはルンルン気分で権現岳への分岐を経て眼下の小屋である。F氏はかなりくたびれた様子である。「権現岳、明日は天気悪そうだからちょっと行ってこようよ」と言うと「もう駄目…」とのこと。で、1人でビール持って山頂をめざした。わずかで大きな剣のある岩場の山頂に到着。体内くぐりと称する岩を苦労してくぐった。なんか御利益があることだろう。
先程まで見えていた赤岳への縦走路や編笠山、明日下山する三ツ頭方面もガスのため見えなくなったので小屋に戻る。今宵の宿泊はたったの8人でゆったりである。コタツに入り暮れなずむ明かりの中で小屋番さんと話が弾む。先達の源治バシゴの設置時の苦労や登山道の切り開きについて教えてもらった。F氏の高山植物の話題で盛り上がる。そして夜は満天の星空を眺めた。う〜ん、満足!!
朝、食事前に分岐まで登り御来光を待つ。雲海が素晴らしい。しかし雲が厚く、雲のまわりが黄金色になったものの御来光は見ることが出来なかった。朝日に輝く赤岳を期待したが宿題を残してしまった。ぽつりぽつりと雨が落ちてきた。急いで小屋に戻り朝食。わずかで雨もやみ素晴らしい青空となった。で、出発。権現岳からは北岳方面の展望が素晴らしくF氏さっそく撮影する。三ツ頭あたりからガスが出てきて展望が無くなる。時々晴れ間が出てもしかしたらブロッケン現象見れるかなと期待したが虹を見ただけで終わった。それからは雨となり、ダケカンバ、シラビソ、シャクナゲ、ハイマツ等の長い長い樹林帯の結構急な下りの連続である。砂礫の尾根に出て前三ツ頭、天の河原展望台を過ぎわずかで天女山に到着。雨もそれほど強くならず、霧で幻想的な樹林帯の歩きは心地良かった。しかし、ここから川俣側西沢を越えての八ガ岳自然歩道経由で美ノ森駐車場までの道のりは疲れた体には限りなく遠く感じた。
林道に出てあとわずかと分かったときは、二人して「やったぞ、着いた着いた。ばんざ〜い」と駐車場めざして小走りとなった。観光用の看板で歩いた道のりをなぞり「やったね。こんなに歩いたんだ」と感激の幕切れであった。
で、F氏はめでたく「酒呑童子の登山教室」初の卒業生として認められた次第であります。私は「F氏の写真教室」卒業生として認めてもらえるのかなあと、現像の仕上がりを心待ちにして山行の余韻に浸っているところです。
八ガ岳はやっぱり素晴らしい山ですね。今度は県界尾根に挑戦したいです。