うわあ、強風だ。お花畑だ。吾妻連峰一切経山

1996年6月16日(日)曇り


 賑やかな集団「ODLC遊人」のバスハイク御一行様は生憎の天候の中15日深夜、一路東北高速道を福島西インターをめざす。翌朝、睡眠不足の寝ぼけ眼をこじ開ければそこにはガレ場の一切経山、吾妻小富士の雄姿が迎えてくれた。

 残念ながら予定していた東吾妻山はガスで展望もないとの事で断念となったが、Tさんとともに、一切経山では体も飛ばされそうな強風を経験し、浄土平、姥ケ原のお花畑、神秘的な雰囲気を漂わせる鎌沼、樋沼に満足した一日であった。

【行 程】  浄土平…一切経山…避難小屋…酸ケ平…鎌沼…姥ケ原…浄土平…樋沼…浄土平
        06:30     07:45                0930 (途中の時間不明)     12:30


 バス到着後夜明けを待ち朝食。大鍋で作った味噌汁の配給を受け自然の中での食事は美味しい。思わず味噌汁のお代わりをしてしまった。爽やかに準備体操後、一切経山をめざす。途中の浄土平ではイワカガミが咲き乱れており目を楽しませてくれる。僅かで平坦なところを過ぎ、いよいよガレ場の尾根道となる。ガスで遠望はきかないものの振り返ればポッカリと口を開けた吾妻小富士の美しい姿や、樋沼が見える。右手には昭和25年に噴火したという火口が見える。この山はまだしっかり生きているのだ。

 一切経山迄はずっとガレ場歩きであったが、風が強い。間断なく吹き付ける風にスマートな私は飛んでいってしまいそうだ。先日の那須連峰の峰の茶屋では名物?の強風を体験できなかったのでTさんと「凄いねえ」「風速40mって、体を40度迄傾けても風の力で支えられ倒れないからそう言うんだよ」等と言いながら風を楽しみながらただひたすら登る。皆の必死に風に耐えようと斜めになった体はみているとユニークだ。しかし皆の表情は険しい。 天候は相変わらず曇り、遠くはガスっている。やがて緩やかな登りで平坦な山頂に到着。しかしくつろぐ暇もないほど風が吹き付ける。山頂のちょっと北側から五色沼を見るが、近づきすぎると風で湖まで持って行かれそうだ。
Tさんと記念写真を撮るがはたして写っているか疑問である。風でシャッターを切った感触が分からない。ピントも合ってないかな、手ぶれもひどいだろうなあと思いながらも風を楽しんだ。時々小石なんか飛んできてピシッピシッと顔に当たる。

 普段なら展望の良いところらしいが、今日は駄目。そうそうに下山とする。「ねえ、ちょっとザックからなんかこぼれてるよ」と女性の声。そう言えばなんかお尻が冷たい。あまりの寒さに気づかないうちに思わず漏らしてしまったのかなとザック内を調べるとなんと水筒の蓋(カチンとロックするやつ)が半分ほど開いており、ザックの中は洪水だ。いやあ、まいった。休憩の時かなあ、何かにぶつけたんだろうか。以前この手の蓋は用心のためロックしたら一応ひもでくくっておきましょうと聞いたのを思い出す。こんどから用心しようと反省。それからしばらくの間背中が冷たかったのは言うまでもない。

 避難小屋手前の尾根からは酸ケ平方面の湿原を望みながら雪渓歩きを楽しむ。湿原では木道歩きである。僅かで鎌沼に到着。風で揺れる湖面はガスってる山とのコントラストが神秘的だが、日本海の寒さを連想させる。それに湖畔の残雪が見事にマッチしている。やがて童心に帰った昔の少女達がワイワイガヤガヤと楽しそうにシートで滑る。しかしお尻が重いのかなかなか上手く滑らない。やはり子供達の方が上手い。

 この辺りは、ず〜とお花畑だ。赤く色づいたモウセンゴケみたいなものに覆われた平原は庭園みたいな感じだ。チングルマ、ミツバオウレン、イワカガミ、コバイケイソウ、ツマトリソウ等が目を楽しませてくれる。ヤマザクラも時期は遅いがチラホラと見える。しばらく雪の下で耐えてきた花々が今を盛りと咲き誇っている。

 東吾妻山は頂上付近がガスっており、登っても展望は望めそうもないとのリーダーの判断で予定変更とし登頂を断念。変わりにチングルマ等の咲き乱れる姥ケ原を通り浄土平から樋沼をめざす。途中の雪渓では登ってくる人たちと出会い、ちょっとした渋滞だ。ダケカンバの新緑に目を奪われながら一切経山方面の尾根を眺めると、アリンコの様な行列が登っている。団体さんだろうか、自分たちも40名くらいの団体であり遠くから眺めるとあんな感じかなあと妙に感心する。
 
 やがて、浄土平。イワカガミやワタスゲの群落は見事である。ふんわりと気持ちよさそうだ。そのほか名前の分からない高山植物も多い。樋沼方面ではシャクナゲの木もあったが、これはつぼみも少なくやはり他の山域と同じく今年は不発みたいだ。マイズルソウの群落も花はまだであった。そして樋沼で昼食。いやあ、Tさんのザックからは色々なものがでてくる。(Tさん、そんなに食べたら太っちゃうよ〜。でも実際はスマートな人ですよ。皆さん)
 大きな果実ゼリー「どうぞ」って進められたのに断ってごめんなさい。本当は食べたかったんですが、妻の作った握り飯を食べ過ぎてちょっと勘弁って感じでお断りしましたがこれに懲りずまた持ってきて下さい。今度はちゃんと貰えるのを予定して食べるの調整しますから……

 時間あったら吾妻小富士登ろうか何て言ってたんですが、帰りの温泉もあるし、疲れてるしで早速浄土平を後にする。バスの車窓からの吾妻スカイラインでもイワカガミの群落を楽しむことが出来た。途中「玉子湯」の露天岩風呂でサッパリと汗を流す。至福のひとときである。

 帰路のバスでは、修学旅行みたいな感じで昔お嬢さん方を中心に賑やかなカラオケを楽しみながら東北の山行は幕を閉じた。(私とTさんは歌いませんでした。というより圧倒されて声も出なかったというのが正直なところかな)

 今回は生憎の天候であったが、雪渓、色々な高山植物、神秘的な沼、新緑と充実した山行であった。吾妻連峰の山域はまだまだ奥が深そうだ。機会をつくって再度挑戦したい山である。