飯豊本山に沈む夕日に感動  

              97年8月18日(月)〜20日(水)晴れ、晴れ、曇り後晴れ

 飯豊連峰、この穏やかな響きに似つかわしい稜線のたおやかな尾根。トリカブトやリンドウの紫の花が印象的であり、また飯豊本山に沈む夕日は絶景であった。
 
8/18 御沢キャンプ場…上十五里…峰秀水場…剣が峰…三国小屋(泊)
     1110       1245-1255 1410-1420  1505     1545    
8/19 小屋…本山小屋…飯豊本山…御西小屋…大日岳…御西小屋…飯豊本山…本山小屋(泊)
    0615  1015-1105   1115   1220-1300 1355-1410 1455-1515  1605    1620
8/20 小屋…切合小屋……三国小屋……上十五里…御沢キャンプ
     0600 0715-0725  0825-0835   1020-1030   1120 


 御沢キャンプ場登山口より登り始める。前日迄の涼しさ(寒さ?)とは裏腹に既に30℃。暑い…御沢小屋後の地蔵さんに見送られ19Kgの荷物を背にブナ林の長坂を登り始める。直射日光を遮ってくれる樹林帯は有り難いが反面涼しい風も遮られ暑さが襲ってくる。ところどころ深くえぐられた道もあるが、全体的に良く整備されており歩きやすいがかなりの急登だ。暑さと荷の重さで下十五里、中十五里…と標柱のある度に休憩だ。時々ふっと感じる風に生き返る心地だ。峰秀水で喉を潤し剣ガ峰の岩場を慎重に登りようやく小屋に到着。今日の泊まりは3名と貸し切り状態であった。

 朝!!素晴らしい日の出、朝焼けに感動だ。見事な晴天で昨日見えなかった遠くの山々もばっちりである。気温は15℃、食事を済ませ颯爽と山頂を目指す。沢山の花々にも目を奪われるが、遠くに見える磐梯山、吾妻山などが雲海に浮かび素晴らしい光景についつい足が止まる。ここらあたりから花が数多く現れる。イイデリンドウってこれかなあ、なんとかコゴメにハクサンシャジン、ヨツバシオガマ、タカネマツムシソウ、ウメバチソウ、イワイチョウ、ハクサンフーロ、アザミ、トリカブト、コキンレイカetc黄、白、紫ピンクと賑やかだ。チングルマの綿毛が輝いて見える。所々コバイケイソウやニッコウキスゲも見られるが山はもう秋の気配、蜻蛉も元気に飛び回っている。

 下ってくる人々とすれ違い情報交換。本山小屋は満員で入れない人は外で寝たとか、切合小屋も結構な人数だったとのこと。今日も多いかなあと心配になる。でも予備に持ってきたツエルトを使うようなことはないだろう…
 切合小屋迄はなだらかな下り、マツムシソウを前景に飯豊本山を撮す。絵になりそうだ。小屋前の水で喉を潤し草履塚迄は急登、そしてトリカブトに囲まれた地蔵さんの鎮座する姥権現への下り。ここらあたりからの大日岳の景観も見事である。そして落石注意の表示に緊張し岩礫地を登る。なかなかの登りだ。途中の水場で水筒を満たす。まずまずの水量である。ここは枯れることはなさそうだ。冷たい!!

 僅かで本山小屋着。こんな山の上に建てられた小屋に泊まるのは初めての経験だ。夜が楽しみだなあ…一階は薄暗いので二階に陣取りしばし休憩。そしてサブザックに替え僅かで飯豊本山に到着。御西小屋から大日岳に続く稜線、雪渓が気持ちよい。右手の方は北股岳方面の縦走路である。しかし、飯豊はスケールがでっかいなあと感動する。いつか縦走したいものだ。この頃からガスがでて遠景は見えなくなったが、出ては消えるガスで稜線はまた違った雰囲気である。ここから御西小屋迄は稜線漫歩、急ぐのはもったいない。お花畑で写真を撮りながらゆっくりと歩く。ああ、しあわせだなあ…

 御西小屋前の広場は結構な人出である。ここで昼食、Mさんのザックからは美味しそうな焼き豚?が出てきた。半分くらい相伴にあずかる。重かっただろうに…美味しかったです。ありがとう。大日岳方面はガスのなか、でも、飯豊連峰の最高峰である。ようし頑張るぞと気合いを入れる。(Mさんは足の調子がいまいちでここから小屋に戻ることになった)御西岳からの下りは割と急であった。なんとここではまだチングルマがわずか咲いていた。ニッコウキスゲやコバイケイソウも他より多く元気良さそうだ。他に比べてちょっと時期が遅いようだ。何故だろう?左手に小さな池が見えるあたりは時々笹に埋もれそうになるがなだらかな道である。トリカブトの群落で紫の絨毯のようだ。
 
 朝、三国小屋方面から眺めた大日岳の登りはなだらかに見えたが、実際には結構急である。ザックが軽い為飛ばしすぎた嫌いもあったが、山頂手前ではばてばてであった。そして山頂、ガスで遠くは見えない。親子三人連れと記念写真を取り合いしばし歓談、そして誰もいなくなった山頂は静寂そのもの。時々現れる景色を静かに楽しむ。
 さあ、下山開始、下りは快調である。御西岳にわずか45分で到着、水を補充しようと水場を目指すが道を見失い雪渓より流れ出る水を汲んだ。ちょっとゴミも混じってるかなあ、まあ、いいや。

 飯豊本山が近づくに連れ天候も回復し素晴らしい青空となった。山頂で歩いてきた道を振り返り小屋をめざす。途中、オカリナを演奏する男性一人。独特の音色である。山の上で好きな楽器で気持ちを安らげる。何とも風流だ。後で見せて貰ったが、この人は自分で作詞作曲したものを歌集としてまとめたそうだ。中には亡くなったザイルパートナーへの鎮魂歌も含まれていた。合掌…
 小屋ではMさんが足を冷やしていた。大丈夫かなあとちょっと心配だ。さあ、また楽しい夕食の時間、今日はコッヘルで飯を炊く。重しに大きい石を拾ってきて水よし、火加減よし、炊きあがりが気になったが練習の甲斐あってばっちりだ。今日の宿泊者は5名と少なく昨夜に続いてゆっくりとくつろげた。

 食事後は同宿の人と外で歓談、飯豊本山に沈む夕日はもう感激であった。空が赤く染まる。う〜ん、絶景、しばし感傷に浸る。バシャバシャと写真を撮る。でもこの美しさはたぶん撮し取れないだろうなとしっかり瞼に焼き付ける。星空はどうかなあと8時頃外に出てみると曇ってきている。残念、風もちょっと出てきたようだ…諦めて就寝。
夜になって凄い風、うつらうつらとしている身にゴウゴウと唸る風は恐怖をかき立てる。小屋は大丈夫だろうか、明日停滞なんて事にならないだろうか?雨も降っているようだと気もそぞろで二時間置きぐらいに目が覚めた。

そして朝……

 残念ながらガスってて展望はなし、しかし幸いなことに雨はほとんど降っていない。風も弱くなってきたようだ。これなら下山できると安心する。Mさんの足も昨日無理をしなかったことと冷やしたのが功を奏したのかどうにか持ちそうだ。剣ガ峰の濡れた岩場はちょっと緊張した。時々雨が降るので雨具を着たり脱いだり忙しい。切合小屋あたりからは、雨も僅かとなり時々ガスが晴れ青空さえ見えてきた。
 三国小屋は管理人は降りてしまったようだ。峰秀水で水筒を満たし横峰から上、中、下十五里と快適に下る。登りは暑さと重い荷物で下ばっかり見て歩いたせいか、それほどとも思わなかったが下ってみると半端な登りでなかったことに気がついた。 しかしそれも束の間、ブナの樹林帯を過ぎ、無事地蔵さんの待つ登山口に到着。下界は今日も暑かった。帰路「いいでの湯」で汗を流す。磐越道から見る磐梯山の頂上はガスの中だ。(この日皇太子殿下が登っていたとニュースが報じていた)

 飯豊連峰は本当にでっかい山だ。稜線に出るまではきつい登りが続く、しかも小屋は自炊が主。寝具も必要で荷物は重くなる。でも素晴らしい稜線歩き、沢山の花々、比較的人も少ない等魅力も一杯である。多分紅葉も素晴らしいと思う。またコースを変え時期を変え歩きたい山である。