岩峰の瑞牆山(2,230m)                  1997年3月30日(日)晴れ

 昨夜の雨が嘘のような快晴のなか昨日に続いて奥秩父の山の魅力にふれようと、特異な岩峰の瑞牆山に登った。凍結した登山道はアイゼンが活躍し、頂上から見下ろす岩壁はすっぱりと切れ落ち、展望も満足であった

    登山口…富士見平…天鳥川…瑞牆山…天鳥川…富士見平…登山口
     0740    0820   0900  1025-1135  1220  1250-1300  1325


 目覚めてみれば快晴、ペチ〜ペチペチ〜と山荘付近の林からは爽やかな小鳥の声。シラカバも木々が更に白い樹肌を輝かせているようだ。朝食の食卓では「晴れて良かったね」と女性の3人組と交わす挨拶もすがすがしい。
 昨日歩いた山荘前の広い樹林帯を富士見平をめざし歩く。昨夜のあの大雨にも関わらず道はそれほど荒れていない。自然の吸水力ってすごいなあと感心する。途中中年のおばさんが息も荒く歩いている。花粉症で喉が痛くつらいそうだ。頂上までは無理かなあとのこと。「では、頂上で待ってますよ。頑張りましょう」と言って先に進む。

 富士見平でのテントは無事雨に打ち勝ったようだ。富士山は雨上がりで気温が高い為かちょっともやっとしている。昨日の方がなんとなくすっきりしていたように見える。ここから金峰山方面への道と分かれ小屋の左手に進む。樹間から聳える岩峰群を眺めながら山肌をトラバースする。登山道は日陰のためかなり凍結している。緩やかな登り、そして下ってまた登り。これくらいならと我慢して歩くがいよいよ切羽詰まってきた為アイゼンを装着する。それからは嘘のような軽快な足取りでスイスイと歩く。これなら早めにつければ良かったなあと反省する。かなり急な下りも軽やかに下り天鳥川にでる。ここからは樹林の中をただひたすら登る。ここからは凍結も少なくなったが時々現れる凍結のためアイゼンを外すタイミングが難しい。木のハシゴ、岩や木の根っこ、所々に張られたロープを頼りに急登となる。途中、川全体が凍ったようなところもありつらいけど結構楽しめる歩きである。
 振り返れば昨日歩いた金峰山の緩やかな稜線が白く輝いている。しばし見とれながら休憩。ようやくアイゼンをはずす。

 しかし結構大きめの岩の続く登りではまた凍結が多くなる。見上げれば大岩(後で知ったが大ヤスリ岩という名前)が聳えている。もう少しだろうと我慢して歩くが、滑って歩きにくい。最後のハシゴを越えるとそこからは、なだらかなシャクナゲの多い道である。そしてわずかで頂上に到着。突然と視界が開ける。わずかに雪のある山頂には途中で追い越したはずのおばさんがいた。頂上までは無理かなあと言っていたおばさんである。私たちが富士見平小屋で休憩していたとき休まずに歩き続けていたらしい。まるでウサギと亀である。おばさん、花粉症で駄目だわなんて言っていたがその健脚ぶりに脱帽である。みれば連れの男性共々12本爪アイゼンをつけている。かなりな経験者と思えた。

 山頂からの眺望は素晴らしいの一言である。眼下に切れ落ちた岩壁には足がすくむ。しかし怖い物見たさで一番はしっこの岩にポンと飛び(結構風がきつかったので慎重に飛びました)下を眺める。大ヤスリ岩方面の屹立した岩、木々の緑、金峰山や八ガ岳連峰の白い尾根、青空のコントラストにビールで乾杯する。風は強いものの昨日と変わってなま暖かい風である。もう一本ビールがあっても良さそうな雰囲気であった。目の前にコガラが姿を見せる。少し遅れて3人連れの女性が到着する。やった〜と満足そうな顔、顔、顔……さあ、楽しい食事をとガスを取り出すが、なんとコンロに合わないらしい。間違えて持ってきたみたいである。単独行の人がちょうど合うのを持っていたので提供する。しかし、残量が少なく果たして最後まで調理できたが疑問である。

 居心地が良いため1時間以上ゆっくりしてしまった。さあ、下山開始だ。野峰さんが先頭で歩く。下りはバッチリとアイゼンをつけて下ったためかなりのペースで川まで降りることができた。そして登り返し往路を戻る。富士見平付近でカシラダカに遭遇した。しかし今回の山行はあまり鳥に出会えなかった。途中、野峰さんが大きなリスを見つける。私は残念ながら見ることができなかった。残念……

 さあ、帰りは伊勢崎までの長い道のりだ。近道しようと林道を選んだが途中の峠付近、北面の日陰ではまだ雪が残っており少々ヒヤヒヤであった。急がば回れの格言通り冬期はちゃんとした道を通る方が結果的には早いみたいである。往路よりも1時間ほど多い所要時間で無事帰宅した。
 新緑や紅葉の時期、シャクナゲの咲く時期にも歩いてみたい山である。