雪景色の日光太郎山
季節はもう冬、2,000mを越える山々はもう既に雪景色である。大岳さんの報告にあった日光太郎山に登った。たった一人で満喫した日光連山の素晴らしい眺望。木々に輝く樹氷、そして舞い散る粉雪。これだから山歩きはやめられない。
【登山日】 1996年11月30日(土)晴れ時々曇り、たまに雪
【山 名】 日光 太郎山(2,367.5m)
【同行者】 単独
【行 程】 光徳駐車場…句碑…ハガタテ薙…分岐…小太郎山……太郎山
0740 0755 0910 1000-1030 1100-1125
お花畑…新薙…林道…志津への分岐…駐車場
1240 1400
【参考書】 アルペンガイド5 奥日光・足尾・那須
【地 図】 日光・奥鬼怒・奥日光 昭文社エアリアマップ 1/20000図
今の季節、日光の山々には登ったことがない。もう既に雪に包まれているだろう。大岳さんの報告でも戦場ヶ原は白くなっていたらしい。どれくらい積もっているものか自分の目で確かめたい。行けるところまで登ってみたい。霧氷が見たい。太郎山は昨年の秋に登って以来である。雪景色でどのような姿を見せてくれるのだろうか。心は弾む。
しかし、雪山の装備は持っていない。ストックはスキー用の物、アイゼンは無し。以前テレビで見た縄を靴に巻き付けての登行を思いだし、8mm位のシュロ縄を準備する。そう言えば子供の頃、学校の行き帰りに長靴に縄を巻いて歩いたことがあったなあと懐かしくなる。私の育ったところは九州だが山奥のため冬は雪が降っていたのである。
いろは坂から先はチェーン必要とのことであったが、道路には雪はない。男体山は雪を被っているがそう多くはなさそうだ。戦場ヶ原にも雪はない。大岳さんが行った時のは融けてしまったらしい。駐車場ではパラパラと粉雪舞うが、天気はよい。これなら山頂まで行けそうだ。しかし寒い。フリースのジャケットを着込みスパッツを着け出発する。
僅かで日光の神様と言われた、矢島三嵩史の句碑「白樺は 月が夜来て 晒すらし」のある入り口着。登山届けを提出する。ここら辺りではうっすらと雪があり、枯れ葉が見え隠れする程度だ。辺りのカラマツは既に落葉している。やがて石ころの多い涸れた沢、次第に急登となり山肌のガレ場となる。積雪のあるときは雪崩の巣になりそうだ。しかし今日は雪は少ない。落石の方が気になる。暑くなりフリースを脱ぐ。一休みし、振り返れば戦場ヶ原や向かいの山々の展望が開けている。ここら辺りから次第に雪も多くなりところどころ凍った所もある。慎重に登る。そしてコメツガやシラビソの樹林帯となり山王帽子山との分岐。ようやく急登も終わり緊張から解放される。これより割と緩やかな登りとなるが雪は深くなってくる。サクサクッといい気分だ。しかし油断するとズボッと深みにはまる。これくらいならアイゼンは不要だ。
よく見ると水割りに良さそうな氷が積雪に混じって沢山ある。何故だろうと思いながら歩いているとそのわけが分かった。枯れた木や葉のない木々はエビのしっぽの様に皆同じ方向に氷が着いている。見事な樹氷に感動する。逆光に輝く樹氷は神秘的でもある。この樹氷が気温の変化や風によって落ちてくるのであろう。針葉樹は雪を被りクリスマスツリーのようである。そしていっきに展望が開けた小太郎山に到着。
風もなく天気は最高、誰もいない雪一面の静かな山頂。日光白根山は真っ白に光り輝いている。見事な山容にしばし見とれる。皇海山、鋸山、袈裟丸方面はあまり雪はなさそうだ。少し見えるのは武尊山かな。どっしり構えた冠雪した男体山。こちらからは火口跡も見える。そして大真名子山、子真名子山、女峰山も見事に青空に映える。かすかに見えるのは至仏山かな、燧ガ岳は見えない。こっちの方の展望は雲でよく見えない。
眼下には中禅寺湖、そして以前登った社山や黒檜岳だ。富士山は…今日はちょっと恥ずかしいのか顔を隠している。大満足の眺望だ。前方に見える太郎山も真っ白、さあ、もう少しだ。で手袋をはめるとなんと濡れていたためか指のところがガチガチになっていた。予備を使用する。今日は軍手2足とスキー用の手袋、替えの靴下2足、下着(半袖と長袖)帽子は耳付き、そしてネックバンドと準備は万全だ。さあ、風よ吹くなら吹け。
岩場についた雪に注意して下降しそして見事な樹氷を眺めながら急登を登り詰めると僅かで太郎山頂上だ。山名板にはエビのしっぽがはえており記念撮影をしたいが、まあいいか山名は写らなくても……エビのしっぽと女峰山をバックにパシャッ。ここからも日光連山の眺めは素晴らしい。あれっ、白根山方向が見えなくなってきたぞ。天気は下り坂みたいだ。そう言えば「天気予報では凄い寒波が来ている。山沿いは大雪、強風」と言ってたなあ。多分雪が降ってきたんだろう。さあ下山だ。状況によってはピストンも考えていたが、この程度の雪なら予定通り新薙コースを降りれそうだ。
凍らないようにポケットに入れておいた手袋をつけ、素晴らしい展望に別れを告げお花畑へ下山する。広々とした一面の雪景色。足跡の全くない雪原は最高に気持ちよい。あれっ、でもどっちへ行ったら良いんだろう?じっと道を見定める。う〜ん、あっちの方に表示板がありそうだ。雪原の真ん中を横断する。時々膝上までズボっと潜る。体重のかけ方では潜らないときもある。子供の様にあちこち歩き回り雪と戯れる。
そしてめざす表示板にたどり着き僅か登っていよいよ日光三嶮のひとつ、新薙である。凄いガレ場だ。しかしここを下るわけではない。二つほどトラバースし樹林帯に入る。かなり急降下である。木々につかまり降りていると樹氷がバラバラと頭上に降りかかる。見通しの悪い樹林帯の中は積雪は殆ど無いものの残雪が凍結しており緊張の連続だ。こんな時ストックが本当に役立ってくれた。
滑らないように緊張して歩くと変なところに力が入り結構疲れるものだ。やがて男体山や大真名子山が見えだし傾斜も緩やかとなりササが多くなる頃休憩する。この頃粉雪が舞いだし、紫のフリースが白くなってくる。雪の結晶をコンパスに付いているルーペで観察する。ふ〜ん見事なもんだなあと感心する。そして僅かで林道に出る。これから長〜い林道歩きだ。
ところどころ氷があってスケート場みたいだ。はしゃいで滑っていたら見事ひっくり返ってしまった。思わず誰も見ていなかったかなあと周りを見回し苦笑する。路側にはカラマツの落ち葉がふんわりと積もっている。黄葉の頃は綺麗だろうなあと思いつつ歩く。しかし長い道だ。やまびこ号があったらと悔やむが、今日は積雪があると思っていたので家で留守番しているのだった。
で、ようやく駐車場に到着。雪は依然降っている。光徳牧場に行き温かい牛乳で暖まり、作りたてのチーズケーキとバター飴をおみやげに購入。そして思ったより早く下山できたので、ふ〜せんさんに教えて貰った日光ビジターセンターを見学する。結構面白いところだった。
今年初めての雪山歩き、この標高ではもう少し積雪があるかなあと思っていたが以外と少なかった。でもいったん天候が急変するともう素人には近寄れない山域である。風もなく天気も良く雪も少なく眺望にも恵まれ楽しい雪山歩きであった。しかし、残雪と違って雪って白いんだなあと感じた次第である。
今度日光に来るのは来年2月、某オフに参加してのクロカンスキーである。今回見れなかった戦場ヶ原一面の雪景色が楽しみだなあ
