西上州 立処山(730m)
あわや奈落の底へ…

2002年11月3日(日)快晴

立処山中腹にある鍾乳洞
 大山・焼岩へ登ったついでに、鍾乳洞のある石灰岩のミニ岩峰に登った。中里村の中心地近くに聳える小さな山だが気持ちよい雑木林と、観光地化されていない鍾乳洞は魅力だ。

行  程   古鉄橋…登山口…鍾乳洞入り口…立処山……鍾乳洞…登山口…古鉄橋
        1530           1600   1610-20  1630-1710       1725
メンバー  単独
地  図   昭文社エアリアマップ15 西上州・妙義 1:6万図、両神山(1/25,000図)

 大山は以外と時間がかかった。今からではちょっと時間が遅いかなと思ったが、鍾乳洞見学ならどうせ中は真っ暗だし、まあいいかと登山口に向かった。標高は約730mの立処山(たとろさん)は石灰岩の山だ。この近くにある叶山(かのうさん)は、セメント材料採掘のためにだいぶ削り取られてしまい無惨な山容を見せる。同じ様な石灰岩の立処山は今のところはその難を免れている。

 国道299号古鉄橋(コテツバシ)バス停のところから橋を渡り、すぐに左に曲がるとわずかでちょっと古い橋桁の立つ広いところに出るので車を止める。数台は止めれそうだ。見上げると小ぶりだが堂々とした岩壁がそそり立っていた。
登山口から望む立処山 結構遠いねえ
登山口から望む立処山 結構遠いねえ
 
 畑で農作業をするおじさんが「今から登るの?」と言う感じで視線を向けてきたので、軽く会釈して畑を横切り雑木林の登山道を登り始める。結構急なジグザグの道だ。ところどころに「鍾乳洞まで**m」との看板があり、それに励まされて登る。鍾乳洞見学だけでも結構運動になりそうだ。最後の看板が見えてからもなかなか付かない。急がなければ山頂からの景色が見えなくなる。汗をかき息を切らしながら早足で登る。最後の方はかなり急になった。

 約30分頑張ってようやく鍾乳洞の入り口に付いた。どれどれ、まずは少し覗いてみよう…おお〜、やはり真っ暗だ。予定では鍾乳洞を先に見学しようと思ってたが景色も見たいので予定変更、入り口にザックを置いて、山頂をめざす。岩裾を右手にトラバース気味に登る。落ち葉のつもった道は滑りやすい。鎖もあってなかなかしんどいところだ。標高が低いとはいえ侮りがたい山だ。しかし時間はそうかからないで稜線に出た。気持ちよい雑木林の尾根を左にまがりわずかでちょっとした岩場に出た。

 石灰岩が雨で浸食されたのか、面白い形の凸凹だ。なるほどこんな感じだから浸透した雨などで鍾乳洞ができるのだなと納得。そこからわずかで山頂だった。山頂ではもう時間が遅いため遠くの山々はもう色合いが悪い。東に頭をそがれた叶山、西に高反山、そして北側には眼下の町並みを隔てて東福寺沢方面の岩稜の景色が素晴らしい。東福寺の方は歩いてみたいなあと思わせるに十分な景観だ。良し、いつの日かと思って鍾乳洞まで駆け戻る。
まだ紅葉は早い 山頂から眺める叶山
まだ紅葉は早い 山頂から眺める叶山

 いよいよ鍾乳洞探検だ!寒そうだし、フリースの上着を着てヘッドランプを着ける。万一を考えて予備の電池と非常食をもっていざ出陣。入り口は狭い縦に切れた隙間だ。すぐに外の光は入らなくなり闇の世界となる。もうヘッドランプの明かりだけが頼りだ。少しひんやりとする。足下は滑りやすい。アルミのはしごがあった。細い鎖があった。掴まって下ろうとちょっと力を掛けたら、なんとブチッと鎖が切れた。一瞬パニック状態でふらっとしたが間一髪転倒を免れた。もし転んでいたら奈落の底までまっしぐら…と思うと生きた心地がしなかった。

 よく見ると鉄製の鎖のつなぎ目は細く腐食していた。他の処もかなり痛んでいる。こりゃあやばそうだ。しかし落ちなくて良かったなあ。ライトで照らすとそれほど急なところでなかったのが幸いしたようだ。こんな真っ暗なところで、しかもこんなに遅い時間、奈落の底で倒れていたらもう万事休すだ。慎重に下ろう。わずかで洞窟が別れていた。まずは右手の水平に分岐する穴を探検。頭だ使えるほどの高さでわずかで行き止まり。記念の撮影をしようとするが、真っ暗でピントが合わない。適当に何枚か撮す。
切れた鎖! 真っ暗闇。ライトだけが頼り
切れた鎖! 真っ暗闇。ライトだけが頼り

 そして分岐まで戻り更に下へと下る。いくつも鎖が出てくる。そして更に滑りやすくなってくる。勾配も急になってきた。今度は失敗は許されない。鎖をライトで照らして確認。そしてあまり頼らないように慎重に下る。ところどころ上から石筍が垂れ下がっている。ライトが当たると不気味な雰囲気だ。ポタリポタリと滴が落ちる。突然首筋に…いやあ、助けて〜〜

 慎重に下っていたら、突然頭をゴッツンと石筍にぶつけた。やばい!ライトが落ちそうになった。必死に押さえる。セーフ!こんなところでライトを落としたらまたまた万事休すである。だって、ライトがないとどこまでも真っ暗な闇の世界だから…その闇を体験しようと体制を立て直し、広いところに出てライトを消してみる。…………             ………静寂、とにかく暗い、ときおり滴の落ちる音が響く。数分試してみても目は慣れてこない。こんな本当の闇の体験は初めてだ。この鍾乳洞は観光地されていないせいか、人工の明かりは全くない。全ては自分の責任での探検だ。鎖が切れて奈落の底に落ちたってそれも事故責任。久しぶりに感じる孤独、恐怖…こんな時は元気に歌でも歌おう。歌声が闇に吸い込まれていく。勇気を奮い起こしてさあ、先に進もう。
心細いけど底まで頑張るぞ!
心細いけど底まで頑張るぞ!
 
 またアルミの梯子があった。このあたりはかなり上部も高い。自然の偉大さに感動する。そしてわずかで地底と思われる所に付いた。もう先はない。あまり綺麗とは言えない小さな小さな地底湖(池)の出現。ここでまたライトを消して孤独をむさぼる。しかしそれは長くは続かない。3分間も真っ暗で音のない世界に閉じこめられるのは恐怖だ!

 さてこれで探検は終わり。慎重に鎖に掴まり、ライトを落とさないように出口へと向かう。最後の鎖は先ほどブチ切れたので四つん這いになって登る。後日誰か来て間違って触らないように束ねておいた。そしていよいよ闇から解放された。もう5時を過ぎ外も結構暗い。しかし、真っ暗闇に比べればなんと外の世界の明るいことか!明かりが恋しく、そして頼もしく思って感動がわいてきた。

そして走るように下山した。

 鎖の切れたことが気になった。明日は祭日、誰かやってきて鎖がないことにきずかず無理して事故にあったりしたら大変だ。役場に伝えておこうと寄り道したが、この時間、それに日曜日。中里村の町はひっそりとしていて連絡は付かなかった。明日電話でもしようと帰宅した。

 翌日、役場は祭日で休みかもしれないと思ったが、電話をした。幸い繋がって事の顛末を連絡した。すぐに担当?に連絡を取り確認するとの返事を貰ってようやく肩の荷が下りた。良かった良かった。

 この鍾乳洞、小振りだが照明もなく、ひっそりとしたたたずまい。いつまでもこのまま残して置いて欲しいものだ。入洞にあたっての注意事項 ライトは万一のことを考えて予備のライトと電池は必携だ。もし落として閉まったら探すのは無理と思った方がいい。ライト無しでは歩くのは無理だ。それと鎖は信用しないことだ。念のためザイルを持って入った方がよいだろう。ステンレスの鎖に掛け替えられれば問題はないが…最後に滑りやすい靴も危ない。運が悪いと鍾乳洞の中に取り残され、コウモリの餌になってしまうかも…ついでの一山としてはなかなか趣のある山を楽しめた。