西上州 大山・焼岩
2002年11月3日(日)快晴
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紅葉もそろそろ終盤、雪遊びのできる季節まではもう少し、こんな時に歩きたくなるのが西上州だ。以前天丸山に登ったとき、そそり立つ岩峰が気になった。そして、その先にひっそりと聳えて人を寄せ付けない雰囲気の岩峰、大山と焼岩」だ。さあ、今日はどんな楽しみを与えてくれるだろうか?
行 程 天丸橋…倉門山…天丸山……倉門山…焼岩…倉門山……大山………天丸橋
0650 0905 0930-1000 1030 1155 1310 1330-1350 1450
メンバー 単独
地 図 昭文社エアリアマップ15 西上州・妙義 1:6万図、両神山(1/25,000図)
先週の戸隠西岳が悪天候で中止となり、表妙義日帰り縦走に変更となった。それじゃあこの連休こそ西岳に挑戦しようかと目論んだが、戸隠は雪との情報。それに長野方面はやはり天気が良くないらしい。厳しい西岳、やはり行くなら青空の時がいい。来年までお預けと決断した。埼玉方面は晴れらしい。じゃあ、以前から歩きたかった西上州に行こうとなった次第である。
「天に突き立つ寂峰と、登山道が壊滅した名峰を結ぶハイグレードコース」「岩とヤブばかりで道のない山を縦横に歩ける力量、そして全ての責任を自分で負うことができる覚悟が必須条件」とガイドブックにある。それに焼岩の情報はあまり見かけない。これぞ西上州の魅力だ。
焼岩は果たしてどう歩けばよいのだろうか?大山からの下山は北へ下るコースを下りたい。ルート不鮮明、それに厳しい岩!単独での山行は安全第一が条件。事前の情報収集は最近インターネットの普及で楽になった。色々と情報を検索してみたが、焼岩や大山から北に下るルートの情報はあまり見かけなかった。しかしいくつかの参考になる情報は見つかった。ふむふむなるほど…山は実際に歩くのが一番楽しいが、こうして情報収集する事や、地図上でいろいろ想定して考えることも楽しい。今回はGPSの世話になりそうだ。コースのデータを入力しながらその場所を想像するだけでもワクワクしてくる。
国道462号線神流川沿いのくねくねした道をひた走り野栗沢沿いの道に入る。生まれた田舎の風景を思い起こす奥名郷の村落を過ぎるとそびえ立つ大山、焼岩の岩峰が朝日に浮かび上がった。いやあ、凄いなあ、ほんとにあそこに登れるのかなあと心がはやる。天丸橋に到着2台ほど停まっていた。焼岩から登るルートもあると情報を得たので、まずはその登山口の確認に車を走らせる。途中4人ほどが歩いていた。どうも焼岩から登る雰囲気だ。登山口を確認し、橋まで戻り準備を整えて出発する。ザックに20mのザイルを潜ませて…
紅葉がそこそこの天丸沢沿いの道を進む。何度か渡渉を繰り返し二俣に到着。そしてアキレス腱が伸び放題となるような左手のジグザグの急な斜面だ。左上に大山が見え出すと気持ちよい樹林帯の緩やかな登りとなる。大山と天丸山への分岐のプレートがあった。天丸山は予定に入っていなかったが、途中眺めた山容に、やっぱ行ってみようかなと予定変更。そのまま稜線に出る。そして以外ときつい登りで倉門山のピークに立つ。展望もない単なるコース状のピークだ。そこから結構下る。
途中、帳付山への分岐を過ぎると背丈くらいの笹の尾根道となる。わずかでそそり立つ岩峰の基部に到着。見上げれば首が痛くなるほどだが、立木もありそれに掴まりながら登れば難なく頂上に到着。以前の山火事ではこの南面は難を免れたようだが、山頂から眺める北面は荒涼とした雰囲気だ。谷川岳方面だろうか、真っ白に見える。八ケ岳は少し雲に隠れている。やはり長野方面は天候が良くないようだ。金峰山方面はばっちりだ。おやっあれは筑波山かなあ…
さて、焼岩をめざそう。来た道を戻り、倉門山を過ぎ県境稜線を下るとわずかで岩尾根となり、なかなか楽しめるところだ。今日は風が強く帽子が飛ばされそうになる。いったん岩を下り、手前に立ちはだかる岩をよじ登ると大山の展望の良い場所に着いた。この稜線からの展望は本当に素晴らしかった。しかし凸凹に入り組んだ西上州の山々の山名を当てるのはなかなか手強い。少し進み焼岩方面へ下ろうと支度していたら、人の声がする。待っていたら4名ほどがヤブをかき分け登ってきた。朝、林道を歩いていた4人組だった。「どちらへ?」と聞かれたので「焼岩」と答えると「凄い下りだった。懸垂下降が必要。ザイルは?一人?」といろいろアドバイスしてもらった。「どこから登るの?岩を甘く見ると大変なことになるよ!」と、なんか単独行を責められてるような雰囲気を感じた(^^;;;
4人の歩いてきた方へ下ったが道がおかしい…もっともこのあたりに道はないんだが、左手に急激に下ろうとしている。GPSを確認するとかなり右の方となっている。枯れ木や木々をくぐり抜けてトラバースし方向修正すると、それらしい尾根にでた。ちょっとした岩のピークを超えて鞍部に到着。前方に立ちはだかる立木混じりの岩峰。右手はそそり立つ絶壁だ。中程は立木はあるがとてもそれを頼りにしても登れそうもない。万事休すか!!
左手は?と岩の間を眺めると最初はちょっと手強そうだが、何とか行けそうだ。よし、こっちから登ろう。
左手も切れ落ちたような絶壁だが、手間取ったのは最初だけで、あとは樹林を頼りに難なく登ることができた。ちょっと拍子抜けしたが、まあ、焼岩のピークに立ったので満足としよう。木々に囲まれ展望は良くない。そして北東方面へ続く林道からの登山道を確認した。戻りは、どうにかしてあの切り立つ岩を下れないだろうかと思い途中まで立木頼りに降りてみた。しかし垂直というよりオーバーハング気味の岩壁は手がかりはありそうだがやばそう…ロープを垂らしても途中で行き詰まったらどうしようもなくなりそうな感じ…諦めてまた上まで戻り、右手から巻いて下る。無事下り終えて岩峰を眺める。やっぱ無理だよな。グループできて懸垂下降などしたら難なく降りれそうな感じだが、単独では無理は禁物だ。
県境稜線まで時々道が不鮮明になるが、まっすぐ稜線をめざせば問題ない。尾根に出てこれから行く大山の姿を眺めたあと、倉門山への登り。だいぶ疲れてきたなあ…途中右手に御夫婦と思われる二人が笹の中で休んでいた。倉門山に着いたが、大山への分岐が見あたらない。強引に道無き所を下り途中から右手にトラバース気味に登る。さっき見た二人が休んでいたところが正規の道のようだ。ちょっと油断するとすぐに道を見失う。さすが西上州の山だ。おもしろい(^^;;;
尾根に出ればもう問題ない。すぐにそそり立つ岩が現れる。あそこが山頂かな。最初の岩は直登する。手がかりも多く難なく登れた。二つ目の岩は自然と左手から巻くようになっていた。そしてわずかで3つ目のピークに出る。ここが大山の山頂だ。焼岩から両神山方面の展望が素晴らしい。
風が強いが頑張って山座同定をする。今度はあのあたりに登りたいなあ…赤岩尾根に隠れて狩倉岳は見えないのかなあ、標高からすると見えても良さそうな気がするんだけど…
北に下る踏み跡を確認する。もし分からなかったら登ってきた道を戻ろうかと思っていたが、以外としっかりした踏み跡があった。よし、バリエーションルートを予定通り下ろう。ザックに忍ばせてきたザイルを使うようになるのかなあと心わくわくだ。目印のテープを時々見かけた。下りはかなり急だ。立木にしっかり掴まりながら下る。右手はすっぱり切れ落ちているが、木々があるためそれほど高度感は感じない。途中見晴らしの良い岩場があった。そこに立つと一瞬足が震えた。風に飛ばされないようにしなくっちゃ…眼前には先ほど歩いてきた焼岩がばっちり見える。
1,400mあたりの右手の岩壁が終わるあたりから真北にのびる尾根を下るはずだが、知らない内に北東への歩きやすそうな方へと誘い込まれてしまった。北の方へ下れば地形図からは滅茶苦茶急な下りとなるはずだ。しかし、今歩いているところは割となだらか…といっても転べば結構下まで行ってしまうような感じの下りだ。二度ほどズルッと滑って「あれ〜っ」と言う場面もあった。ここは万事休す、とても降りれないなあと言うような所に遭遇、そこではザイルを立木に引っかけて下った。ようやくザイルが役にたった。こんなところが出てくるとワイルド感たっぷりでおもしろい。道が間違ったことはGPSで確認して分かっていたので不安はない。地図を見るとこのまま地形図の1,070mとあるところに出れそうな雰囲気だ。このまま進もう。踏み跡らしきものもわずかにある。とにかく尾根を忠実に下ろう。
1,150mあたりまで気持ちよい尾根をたどってきた。大きな木にテープが巻き付けてあった。何を意味するのだろう?地形図を確認する。このまま行くと林道の崖に出てしまう恐れがありそうな雰囲気。と言うことで西へ方向転換しながら下る。ズリズリと下る。すると大きく崩壊した急斜面に出た。向かいの尾根を超えれば天丸橋の方に寄るが、結構厳しそうだ。崩壊地をトラバースし、なだらかになった所を時々落石を起こしそうな感じで下る。
するとわずかで林道が見えた。やったね。無事到着。そこから歩いて天丸橋まではわずかであった。橋の所に停めた車のところで4人組がいた。焼岩の近くで出会った人達のようだ。
先ほど尾根で見た大木に巻き付けていたテープは「ここから左手に行くんだよ」とのメッセージだったようだ。予定していたコースをたどることはできなかったが、踏み跡やテープも少なく、厳しい下りと、こっちでいいのかなあと不安になりながらの緊張感で満足の山行であった。予定していなかった天丸山まで歩いたので以外と時間がかかってしまった。「ついでのひと山、立処山」は無理かなあと思ったが、まだ時間は3時前、行けそうだなと、次の山へと車を走らせた。