紅葉と奇峰の裏妙義縦走&谷急山
1995年11月4日(土)快晴
西上州の荒々しい山々に魅せられて先週の二子山に続き、裏妙義の紅葉と岩稜歩きと、妙義山塊の最高峰である谷急山を楽しんできました。
国民宿舎…木戸……丁須岩……赤岩…三方境……谷急山……三方境……国民宿舎
0700-0710 0750 0850-0910 09451 030-40 1210-1325 1410 1530
魚や果物にも旬の季節があるように、山にも旬があると思う。今まさに妙義山域は旬であろう。連なる奇峰の岩壁群と山肌を彩る色とりどりの紅葉、黄葉の素晴らしいマッチング、加えて秋の澄み切った空気と快晴の抜けるような青空。この旬を味わわずして妙義山を語れるだろうか……
なんて大げさにいってますが、とにかく山に行きたい。雪の季節になるともうこんな山は来年までお預けである。セッセセッセと紅葉求めて徘徊中である。表妙義より裏の方が簡単そうだし、また表には哲学さんの報告によると猿軍団が出没するらしく(もっとも裏に居ないとは限らないが)安全そうな裏妙義で鎖や岩場に慣れよう。次は表妙義縦走だとの思いを胸に秘め楽しんだ一日であった。
国道18号から見える妙義山塊は本当に異様な光景である。どうやったらあそこに登れるんだろうかと期待と不安を胸に抱き、横川駅手前から左に入り国民宿舎「裏妙義」をめざす。途中の妙義湖はまだ日も当たらずシーンと静かだ。所々釣り人がその静寂を破るべく活動開始しようとしている。何が釣れるんだろうか?
程なく国民宿舎に到着、駐車場は5〜6台の空きである。ガイドブックにはここの駐車場が利用できるとあったが、一応受付に確認に行く。「いいですか?」「駄目です」とのこと。この時期は宿泊者も多く泊まらない人は駄目とのことである。しかし心配はない。宿舎の数百m手前の道路沿いに立派な駐車場がある。そこに停める。他にも数台の車、こんにちはと声を掛け挨拶する。そう言えば山登りの時は朝でもお早うございますとは言わない。何故だろう。
さあ、宿舎の裏にそびえ立つ岩峰めざして左手の道を歩き始める。勿論準備してきた登山届けをポストに提出する。投函することで今日一日、安全登山に努めようと気を引き締める効果があるようだ。
まずは杉林が出迎えてくれる。杉花粉の季節には花粉症の人は辛いだろなあと思いながら歩いていると、まもなく雑木林に変わり沢沿いの岩の多い道となり途中笹原の中に迷い込む。迷う人がたまにいるのか、何となく踏み跡みたいに見える。慎重に周りを見回しルートを修正する。程なくルンゼにでて数本の鎖場で御岳との分岐のコルにでる。全面に浅間山、左は絶壁の岩場がドーンと現れる。それから少し下って登ったところで丁須岩の肩への鎖だ。4〜5人がくつろいでいる。
でっかい、何故こんな岩が出来たんだろう。何万年も前からこうしてじっとたたずんでいるのだろうか、自然の造形は不思議なことばかりだ。丁須の頭に挑戦しようと中段まで登ってみたが、そこからかかっている鎖を見てすぐに諦めた。とても無理だ。南西にはこれから歩く赤岩、烏帽子岩が屹立しており、山肌の紅葉が素晴らしい。丁度見頃かなあと東京から来た単独行の人と展望を楽しむ。北方面に浅間山のなだらかな稜線が綺麗だ。
ひと休みの後、赤岩をめざす。左に表妙義の山々のシルエットが逆光のためモノクロでまた違った雰囲気だ。僅かで最大の難所であった20mの垂直な鎖場の下りだ。足場はしっかりしているがさすがに下りは緊張する。腕に力が入る。これは我が息子を連れてくるのは時期早尚であろう。無事降下だ。ほっとする。
ここから烏帽子沢、籠沢等の景観を楽しみながら赤岩、烏帽子岩の裾を鎖を頼りに慎重に歩く。途中、風穴尾根の頭の所の岩に登ってひと休みし振り返れば歩いてきた裏妙義の全景が素晴らしい。紅葉の中に吸い込まれそうな感じだ。
これから雑木林の中、滑りやすい下りで三方境をめざす。標識の立派な三方境に到着。まだ時間も早いし素晴らしい紅葉と好展望、スリル満天で気分も最高だ。体調もすこぶる良い。最高峰の谷急山をめざすこととする。こちらも紅葉は申し分ないが、片道1.5時間ならたいしたこと無いなと思ったのが甘かった。いくつものピークを越えねばならず、特に地図でP2と記されたピークへの登りは本当にしんどかった。木の根をつかみながらまるで垂直に感じられる登りだ。ああ、しんどかった。山名の由来はもしかしたら「谷が急峻」だから名付けられたのであろうか。
次々にピークを登り下りしてようやく山頂に到着だ。狭い山頂はおばさん達に占拠されている。弁当を遠慮なく広げており賑やかに話題が弾んでいる。こっちは山名板をバックに写真を撮りたいがそれもままならない状況だ。まあそのうち降りるだろうと思って単独行の私は隅っこの方でひっそりと食事だ。そのうち二人連れの男女が登ってきて、おばさん達の近くに強引に陣取る。それでもおばさん達の食事は終わらない。
ここからの展望もまた格別だ。表、裏の妙義山域は勿論、浅間山、榛名山、赤城山、どっしりとした荒船山、あれは八ケ岳かなあ。とにかく絶景だ。急登に喘ぎながらも登ってきて良かったと満足する。おばさん達はいよいよ引き上げるようだ。ああ、静かになった。しばし静寂を楽しみ記念撮影だ。
帰路は三方境まで戻る。登りではあれほどしんどかったのが嘘みたいに足取りが軽い。つま先を痛めないように踵から着地を守り順調に降りる。途中P2で休憩しているおばさん達に「お先に」と声をかけ先を急ぐ。三方境から雑木林、杉林の中を国民宿舎をめざす。途中風穴尾根の展望の良い場所で休憩、他は殆ど樹林帯の中の長い下りであった。地図では中木川を渡り道路へ出て国民宿舎のルートとなっているが、渡らずに左に折れ宿舎をめざす。国民宿舎では入浴も可能(309円)と書かれてあったが駐車場の件で何となく入る気になれず素通りしてしまった。
こうして楽しい裏妙義縦走は無事終了した。ルートは殆ど問題なく標識も整備されている。丁須岩の頭は断念したがこれは諦めて正解だったであろう。最大の難関は20mの鎖場だけであり、後は慎重に歩けば特に問題となる所はなかった。感じとしては先週の二子山のほうが緊張した。やはり子連れだったせいだろうか。
さあ、今度は念願の表妙義縦走に挑戦だ。こちらは鎖場も多く、また急峻だそうだし、腕力を鍛えなくっちゃあ