西上州 物語山(1,019m) 00年12月2日(土)晴れ
財宝埋蔵伝説のあるメンベ岩(林道より望む)
名前が良いですねえ。つい歩いてみたくなりました。カランコロンと小石を踏みしめて登る登山道はロマンチックです。熊に注意の看板が目立ちビビリました。しかしこの山には悲しい伝説が…
行 程 登山口……西峰…………山頂……登山口
1325 1355-1405 1417-1440 1510
メンバー 単独
地 図 西上州・妙義(昭文社エアリアマップ15 1/20,000図
参 考 群馬の山歩き130選 上毛新聞社
「天正18年、豊臣氏の小田原攻めの際、豊臣方前田勢の攻撃を受けた北条方の幽崖城城主多目周防長定は、奮戦むなしく炎に包まれる城を後に闇に紛れ、山中に逃げ落ちた。しかし、追撃の手は厳しく、必死に山を越え、谷を渡り、闇の奥へと逃げた。切り立った岩壁に突き当たり、フジヅルを頼りに登り、追っ手を恐れてそのフジヅルを断ち切り、身を潜めた。追っ手からは逃れたが、翌朝目覚めて思わず息をのんだ。そそり立つ岩の上、下りる手だては既に自ら断ってしまったのだ。侍して死を待つよりはと決意し、多目以下幽崖城の将たちは、小田原の方を向いて腹を切った」…と(分県登山ガイド群馬県の山 山と渓谷社刊 参照)
何という悲しい伝説。本によっては、城を守る兵たちが財宝を城から持ち出し、頂に財宝を埋蔵した後…となっているものもある。この財宝を探しに岩峰に登ろうとする者はことごとく墜死したという。この物語により山名がつけられたらしい
物語山に行って来るよって妻に言ったら「なに、その名前、変な山」って言われた。そこで、上記の伝説を話して聞かせた「ふ〜ん、かわいそう」だって
戦国時代の物語に思いを馳せながら山を歩くのも面白い。本当にあった話かどうかは眉唾物だが…
国道254号を下仁田方面から佐久へ向かう途中の深山橋で左手に入る。バスだったらここから長い林道歩きになるが、車だったらず〜っと奥まで入ることができる。あまり入りすぎて、山頂についてしまうんじゃないかと思うくらい奥まで入れた。
舗装もされてなくかなり荒れた道だ。乗用車は遠慮した方がいいかもしれない。途中「熊に注意」の看板が真新しい。物語山登山口の表示がある少し先の道路際の広場に停める。数台は可能だ。
一旦沢にわずか下り、すぐに杉の植林地を急な登りとなる。静かに物語りでも思い起こしながら歩こうかと思っていたら、ぞろぞろと30人ほどの団体さんが下ってきた。すごく礼儀正しい団体で「こんにちわ、どうぞお先に」とみんなから次々に声がかかる。まだ登りはじめで良かったが、いやあ、挨拶もそうですが、「すみませんねえ、では」といって急坂を登るのはしんどかった。
ところどころロープが張ってある。迷わないためかつかまって登るためか分からないが、杉の植林帯を過ぎて雑木林になってもところどころ張っていた。振り返れば特徴のある荒船山が木々の間からど〜んと見えている。
ジグザグの登り、葉が落ちた明るい雑木林は気持ちよい。静かに休んでいると小鳥の声がさわやかに聞こえる。双眼鏡で姿を探す。シジュウカラ、エナガ、メジロ、ヒガラやリズミカルに木をつつくコゲラが姿を見せてくれた。
足下には薄い板状の石ころが沢山ある。
これが踏みつけると「カラ〜ン、コロン」と澄み切った音色を奏でてくれる。木琴の演奏をしているようだ。いやあ楽しいなあ…
鞍部までは木琴の演奏を楽しみながらジグザグに登る。このあたりはカラマツが多い。紅葉時期は綺麗だろうな。そして鞍部。今日は寒くない。吹き抜ける風が心地よい。なぜか心が落ち着く鞍部だ。耳を澄ませば、戦国時代戦った兵達のざわめきが聞こえてくるようだ。
まずは西峰をめざす。わずか数分の登りで雑木林の西峰頂上に到着。こちらに山頂の表示があった。
展望はないが、少し西の方に進むと展望台だ。眼下の集落や浅間、妙義山方面が見えるが、少しもやっとしてきたので遠望は効かない。伝説のメンベ岩も眼下に見える。どこかに財宝が見えないかと目を懲らす。おもわずキラッと何か輝いたかに見えたが、あれは目の錯覚か…
一旦鞍部に戻り山頂をめざす。まだ日陰は少し凍っている。
雑木の間をくぐるように登る。紅葉や新緑の時期は気持ちいいだろうなあ、ツツジもたくさんありそうだ。急斜面を登りわずかの尾根歩きで山頂に到着。浅間方面の展望はよいが、これは雑木を伐採したから見えるようになったみたいだ。展望があれば嬉しいが、なにも木を切り倒してまでも…と思った。
でもせっかく見えるようにしてくれたんだから展望を楽しもう。もう時間も遅く、たった1人で山頂独占だ。温かいコーヒーを飲みながら、ひとり静かに時は過ぎていく。
そして記念に無線で交信を試みるが、ここでもCQに答えてくれる局はいない。CQを出してる局もいない。寂しいなあ、アマチュア無線も衰退してきたものだ。残念。
山頂から南へかすかな踏み跡。ガイドブックによると、明るい雑木林の尾根を進めばトヤ山から黒滝山へのコースがあるらしい。そこそこ歩けそうな雰囲気、古びた赤いテープも見受けられた。コンパス、地形図を持って尾根を外さないように…いつの日か、こちらからトヤ山をめざしたいなあと思い5分ほど尾根をたどってみた。
明るい雑木林でいい感じだ。
下山は来た道をピストンする。下るときの方が、カランコロンと言う音が、多く聞こえる。
急な下りはあっという間に登山口に到着した。