神々が宿る岩 碧岩から大岩は静かだった
1996年12月30日(月)晴れ
今年は雪が遅そうだ。これならまだ西上州の岩場に登れそうだと今年最後の山行は以前から気になっていた大岩、碧岩とした。やはり西上州は魅力的だ。誰にも出会わず、静かな山行を楽しめた一日であった。予定外の二子岩の岩登りも楽しかったなあ
熊倉登山口…三段の滝…碧岩分岐…碧岩……分岐…大岩分岐…二子岩東峰…西峰
0830 0855 0955 1015-30 1040 1100-30 1145 1215-1225
…三段の滝…登山口…
1315 1330
碧岩は昔、「神々が宿る岩」とあがめられたらしい。確かにあの山容は今にも神様が「よっ」と言って降りてきそうな位、天を突いているように見える。登山口には真新しいトイレと駐車場が用意されているが、トイレは冬季は凍結の為使用禁止だそうだ。横の霜柱の降りた広場を横切り、三段の滝めざして進む。最初は杉の樹林帯、所々露出した岩は凍結しており注意が必要だ。沢の水は所々氷の芸術が見事だ。沢にかかった丸太の橋で何回か右に左に渡り滝に到着。西上州では一番綺麗な滝とのことである。落差50m位で端の方は凍結しており見事な景観だ。水は落ちると言うより、岩盤の上を滑ると言った感じで落ちている。写真のスローシャッターで撮ったみたいに見える。チェッチェッとミソサザイが遊んでいる。
ここら辺りは落葉した雑木林帯だ。落ち葉を踏みしめ急登で滝上にでる。と、突然木の陰から大きな鳥が飛び立った。急いで双眼鏡で追う。ヤマドリのようだが詳細は不明である。そして更に登る。結構な急登だ。右手の山肌は日当たりの悪いためか雪に覆われた登山道?が見える。こちらは雪は殆どなく快適な歩きだ。で、碧岩との分岐に到着。標識はないが、地図から見て間違いない。左に折れ僅かで基部に着き碧岩をめざす。途中、コゲラがトントントンとリズミカルに音楽を聴かせてくれる。ゴジュウカラ、コガラもお出ましだ。そして2カ所のロープに助けられ意外とあっけなく頂上に到着。下から見上げた威風堂々とした景観からはちょっと拍子抜けだ。
頂上からは浅間山(雪が意外と少ない)、四つ又山、鹿岳、立岩、行塚山、その他、西上州の山々の揃い踏みだ。こちらからは荒船山の独特な風貌は見ることができないなあ。極楽蜻蛉さんが縦走した毛無岩からトヤ山、黒滝方面の稜線もバッチリだ。あれはロウソク岩に兜岩山かな……
鞍部に戻り、大岩をめざす。木の幹に大岩こちらと表示があった。相当以前の落書き?みたいだ。5分ほどで稜線に出る。ちゃんとした標識がある。ここが三ツ又かな?気持ちの良い尾根歩きで大きな岩に至る。コガラの鳴き声にふと目を上げると針葉樹の幹を結構な大きさのリス?(シッポが太くて長く、全体は灰色っぽい。体長約30cm?)が慌てて逃げていった。木から木に移りそして岩の方に消えていった。何だったんだろう???ここから岩を左に巻き、僅かで展望の良い肩に到着。ここら辺りはヤシオの木が多い。春や紅葉の時期は綺麗だろうなあ。そして両側が切れ落ちた岩稜の登り……岩を掴む手がひんやりと気持ちよい。高度感はあるが手がかりはバッチリでそれほど恐怖感はない。そして大岩着。眺望は碧岩と同じ感じだ。碧岩の屹立した姿が見事だ。双眼鏡で覗いていたら白く冠雪した山が見えた。肉眼ではちょっと無理だ。方向から見ればどうも日光男体山のようだ。しばし、山座同定。
時間はまだ11時30分、南側にある双耳峰の山が登っておいでと誘っている。地図から見てたぶん二子岩であろう。よし、登ろうと決断し岩稜を慎重に下りそして碧岩との分岐に到着。今日は都合で14時までには下山しなければならない。めざす山頂までは頑張れば12時半迄には行けそうだ。だめなら途中から戻ればよいと進む。そして三段の滝への分岐に到着。ここから左の二子山方面はあまり踏まれてないようだ。雑木林の尾根を幾つか上り下りして膝くらい迄のまばらなササの中を進む。ちょっとした藪こぎの雰囲気だ。時々道が分かりにくいが山頂は見えており問題はない。尾根歩きが終わり、最後の急登、根っこやササにつかまり喘ぎながら登る。こちらは雪が少しある。間違い易そうな要所には誰が着けたのか大きな白い袋が掛けられている。これには帰路非常に助けられた次第である。
最後の急登はしんどかった。時間も限られており結構速いペースで登った。そしてようやく鞍部に到着。先ずは東峰(勝手に自分で名着けた)に挑戦。益々もって藪こぎの様相。新調のフリースのズボンや腕には数カ所の引っ掻き、顔には跳ねた枝がバシッ。それでも楽しい山歩きだ。苦難の末着いた頂上は、碧岩などからは見えなかった浅間山のずっと左の方に真っ白な山が見える。四阿山にしてはちょっと左過ぎるなあ。方向からして黒姫、妙高山辺りのようだが、そんなところまで見えるのかなあ?ちょっと疑問であるが、他の山も大岩から見るよりもここの方がよい展望だ。う〜ん、満足。頂上から更に南にはククリ岩がおいでおいでと誘っているようであるが今日はやめておこう。ゆっくりしてる暇はない。
鞍部に戻り、西峰をめざす。あれっ、鞍部に着いたのに帰り道が見あたらないぞっと辺りを探すがやはり見あたらない。ここで道が分からなかったら事である。うろうろと数分探し回る。あった、あった。ちょっと東の方に登り返したところに……登ってきたときは何気なく登ったので気付かなかったのだなあ。降りようとすると藪で見つけにくい所であった。間違わないようにそこにザックをデポし再度西峰の基部に取り付く。しかし、道が無い。ちょっと回ってみるが見あたらない。岩を見上げてしばし検討……岩や木の根っこの手がかりは十分みたいだし、よし、ここを直登しようと決定。行きはよいよい帰りは怖いと言った感じだがめざす頂上はもうすぐだ。時間にすれば10分もないがかなりスリルがある。そして到着!!しかし、樹林で遮られ眺望は東ほどではない。でも落葉した木々の間からはまずまず楽しめる。そして、岩場の下り。登りで思ったほど大変ではなく無事に降りた。
さあ、ここからは急いで下る。ちょっと駆け足気味である。余り気にならない程度に要所に配した白い袋が頼もしい。そして三段の滝への分岐に到着。こちらは登るときに見えていた雪のある方の登山道だ。ああ、ここに繋がっていたのかと納得。かなり急な道であるが、凍結には至っておらずストックを上手に使いスイスイと下る。途中の沢で顔を洗い、のどを潤し、そして最後に三段の滝を写真に撮り今年最後の山登りは終了した。
誰にも出会わず本当に静かな山、落ち葉の絨毯と岩場の緊張感。やっぱり西上州は良いなあと感じた次第である。