西上州 狩倉槍・岳(1,625m)
2002年11月10日(日)快晴
横八丁より狩倉槍を望む
両神山塊の西に繋がる岩稜や鋭峰がつながるヤブと岩の稜線歩き。コースも整備されていないのでルートファインディングが要求されるらしい。これぞ西上州の魅力だ
行 程 長栄橋…石舟…大峠…大笹…狩倉槍…狩倉岳…1,435ピーク…道路…長栄橋
0615 0700 0910 1035 1210 1250 1355
1630 1645
メンバー Tさん、3さん、酒呑童子
地 図 昭文社エアリアマップ25 雲取山・両神山 1:5万図、両神山(1/25,000図)
ガイドブック 埼玉県の山(山と渓谷社 分県登山ガイド10)
このコース、以前Tさんと3さんが挑戦して道不詳、落石地獄で敗退したと聞いていた。いやあ、面白そうな処だと単独で歩く予定であった。一応敗退したTさんに「行って来るよ!」と挨拶しておこうとメールを送った。すると「一緒に行きたいが…」との返信。頼もしい助っ人登場だ。「じゃあ、御一緒しましょう」と言うことになった。待ち合わせ場所を打ち合わせていたら、どうも下山口について話が合わない。??出合の方へは防護ネットに阻まれて下れない。で、小倉沢公民館の方に下るというのがTさん、我が輩はネットに穴が開いてて下れるという情報をインターネットで得ていたので、そちらを提案した。じゃあ、登る前に確認して決めましょうと言うことになった次第である。
朝、まだ暗いうちに長栄橋についた。Tさんはまだ見かけなかったのでネットを確認しに車を走らせた。すると不振な二人連れがネットのところでゴソゴソしている。見るとTさんが、ネットの穴を見つけGPSに位置登録しているところだった。もう一人は3さんだ。前回の敗退が悔しく話を聞いて馳せ参上したとのこと。これで3人となりますます心強くなった。このネットの処にぴったり降りてこれるだろうか…少しでもずれると、でれなくて網にへばりついているあほな3人組となる。これだけは避けなければならない。頑張りましょうと夜明けを待ち出発した。念のために3さんがザイルを持っていくことにした。
沢沿いの山道に入る。時々朽ちた桟道があった。今にも折れそうな雰囲気だ。左から沢が合流するあたりから崩壊箇所もあり、荒れた山道はうっかりすると間違いやすいが、しっかり見ていけばそれなりに道があった。そして白く輝く感じの石灰岩が穿たれた滑滝、石舟に到着。枯れ葉で埋まって水は見えない。ガイドブックにあるような感じで記念撮影。おっと、油断するとズルッと滑るよ、気をつけてね(^^;;; ここから右俣方面へ歩く。少し歩くと右手に白く糸を引いたような枯れた滝があった。
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長栄橋の登山口 車の左手から |
石舟にて |
2段15mの枯れた滝。道はこの左手 |
地形図上ではこの先、大峠まで道が記されている。ガイドブックにも道不詳とはあるが次第に踏み跡は明瞭になると書かれている。しかしどこにも道らしきものはない。Tさん達によると、ここからが厳しく道もない。落石はひどい。途中で行けなくなりやむなく断念したとのこと。その経験を生かし、3人で協議。方向から見るとこっちで間違いない。じゃあ、行きましょうと枯れ葉と落石、そして急な登りを登る。すぐにTさんが大きな石と格闘していた。足を乗せたところバランスを崩し石を抱っこしていた。いやあ、幸先楽しいねえ。でも本人はちょっと痛そうだった(-_-;)
確かにちょっと油断すると落石状態になる。間隔をあけ、石の落下する方向を避けながら進む。危ないところは待機して貰い、「もういいよ〜、ま〜だだよ」なんて声をかけながら慎重に進む。それでも失敗して落石を起こす。スピードが付いてゴロンゴロンと転げる石には恐怖を感じる。いやはや疲れる登りだ。道も分かりにくい。たぶんこっちだろう、あっちだろうと登る。気に掴まるとぽきっと折れたり、岩に掴まるとグラッとしたりいっこうに気が休まらない。こっちが登りやすそうと3さんは左手から登る。我が輩は右手の一枚岩の手がかりを探して登る。そして木の根っこをくぐりトラバース気味に稜線に出た。しかし二人がなかなか見えない。「お〜い」と呼ぶと「お〜い」と返事があった。
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お〜い、石落とさないでね |
がんばれ! |
ここをクリアーすると稜線が… |
なんと3さんがガラガラとしたルンゼで足を滑らせて4m程滑ったらしい。でも途中で何かに引っかかり事なきを得た。リカバリーして怪我もなく稜線にたどり着いた。やったね、ここまで来ればもう大丈夫だろう。これから先は尾根沿いにただ登る。先ほどまでの険しさが嘘のような快適な登り。左手には狩倉槍らしきものが見えてきた。あそこが横八丁かなあなどといいながら歩く。そして中双里方面からの道と合流した。地図では大峠に出るように道があったように書かれているが、わが輩達はだいぶ南の方にたどり着いた。ここまでは殆どテープなどの目印が無かったが、ここから先はうるさいほど目印があった。
快適に道を下ると大峠の標識とベンチがあった。ここからは先ほどの険しさに比べればお散歩気分だ。途中、横浜から来たという3人組と出会った。昨夜は清滝小屋に泊まったという。そしてひと登りでミヨシ岩に到着。今日初めての大展望が現れる。富士山も見えた。そしていったん急下降、そして大笹までは笹の中、アカゲラやコゲラ、コガラなどの声を聞きながらの登りで展望のない大笹に到着。Tさんはちょっとお疲れ気味で数分遅れての到着だ。休んでいると4名くらいのグループが両神山方面からやってきた。
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あの稜線を歩くのかな? |
やった〜、大峠だ |
ミヨシ岩にて |
今日本命の岩稜歩きが始まる。しかしここまで約4時間、いやはや長いアプローチだった。この先どんな楽しみが待っているのだろうか?興味は尽きない。わずかで1,683mのピークに到着。ここからの展望は素晴らしい。今から歩く横八丁から狩倉岳、そして下山路と思われる尾根、帳付山、南天山、赤岩尾根、それから…う〜ん、山ばっかりだ。さあ、気を引き締めて先に行きましょう!
いよいよ横八丁の岩稜だ。ヤセ尾根を少し下るとすっぱりと切れ落ちた岩場が眼前に見えた。ルートはどっちかなと偵察に行く。岩の先は切れ落ち万事休す。よく見ると右手が下れそうな雰囲気だ。せっかくだから交代に岩の上でポーズを取り記念撮影。そして岩や根っこに掴まりながらクラックを下る。初心者がいる場合はロープが必要と書かれた2段15mの岩場のようだ。まあ、手がかりは沢山あるので慎重に下れば問題ない。そしていったん登りかえすと、またもや興味をそそる岩があった。登れるかなと伺うが、基部がぽっきりと折れそうな感じの岩で潔く断念。無茶はやめましょう(^^;;;
ここからわずか、岩稜のアップダウンが続く。横八丁の核心部だ。といってもそれほど危険なところはない。そして眼前に佇む狩倉槍!左側はすっぱり切れ落ちている。どこから登るのだろうと不安になりながら鞍部に到着。道なりにヤブの急登を歩いていたら頂上に出た。え〜、そりゃあ無いよ〜、もう少しスリルある登りを期待していたのに…がっかり。でも、あのピークに立っているんだよね、ここまで頑張ってきたんだよねと思うとそれなりに満足。
頂上は疎林に遮られあまり展望は良くない。首を伸ばして展望を楽しむ。少し先に進むと狩倉岳方面の展望はよい。めざすテレビアンテナのあるピークも見えた。長居は無用、岩尾根を下る。下りの方が面白かった。そして鞍部に到着。ヤブの登りで狩倉岳に到着。こちらの展望は殆どない。しかし木々の間から射す光でなかなかいい感じの雰囲気であった。ここで初めて登頂を祝い3人そろって記念撮影。そしてここからは長い長い尾根の下りが続く。そして50m?の泥壁の登りで1,435mのピークに到着。ススキが沢山生えていてなんかちょっと変わった雰囲気。古びた作業小屋?もあって里山の雰囲気だ。振り返ると狩倉槍だそそり立つ。う〜ん、こうしてみるとやっぱ満足!
さて下りはどこからだろうと少し戻り、道を探す。申し訳なさそうにひっそりと石標に古びたテープが巻き付けられているのを発見。地形から見てもここが下山口だろう。そこから先は恐ろしく急な下りだった。しかし気持ちよい雑木林の下りだ。こんな感じの山歩きは気持ちいい。そしてなだらかになり1,341mピークに到着。このあたり気持ちはよいが道は分かりにくい。慎重に下ろう。落ち葉の急な下りはスイスイと下る。まるでスキーをしているようだ。でも落ち葉の下には気の根っこや石があることもあるので用心しよう。途中左手にミヨシ岩が格好良く見えた。登りで立って眺望を眺めたときには全く感じなかったが、なかなかいい姿だ。今日一番の格好良さかもね(^0^)
1,200mあたりで南西に続く尾根に引き込まれないように地図と睨めっこ。GPSも大活躍だ。そして1,133mのピークは右から巻く様に薄い踏み跡があった。そして岩場が出現。う〜ん、左にいったん大きく下り気味に巻いて行くのが正解のようだが、そのまま岩を通過しよう。ちょっとザイルが欲しいなあと言う感じの処だったが、頑張って下る。するとそこには見事な紅葉が逆光を浴びて輝いていた。
このあたりから道が更に分かりにくくなる。悪いことにこの先の地図が無い。プリンターで印刷した地図は縮尺が不正確、それに見にくい。一番肝心なところで困ったものだ。これからは地図をケチらないようにしよう(^^;;; ドンピシャでマークした地点に降りないと防護ネットから外にでれないのだ。まあ、でもだいたいこのあたりだろうとTさんのGPSを信じて下る。このあたりも落石を起こしそうな雰囲気の場所だ。3さん、ちょっと疲れたかな。石を落とす回数が増えたようだ。途中、かあちゃんにあと30分くらいで下山と連絡を入れる。しかし道が分からず右往左往している状態だ。果たしてあと30分で下れるだろうか?少し左手に行きすぎているような感じだ。小高いところから見ると右手に見える小屋みたいなところが正解のようだが、GPSはまっすぐを示している。強引に下る。
わずかではっきりした道に出た。植林のための作業道だろう。いやあ、やったね!これで安心。こうなればどこかに出口はあるだろうと走って下る。ネットが見えてきた。先に偵察に行く。出口だ!しかし扉には鍵がかかっている。開きそうにもない。周りを見回すが、小さな穴も見あたらない。登りで確認した穴はどこだろうと見回すが無い!万事休す…いったん登り返してネットの眼前が開けたところでしばし思案。
組重なったネットを眺めていると、弱点が見えてきた。ネットを乗り越えて下れば行けそうな感じだ。柵を乗り越えとりあえずネットに乗ってみる。行けそうだ。最後はネットにしがみつきながら降りた。そして無事道路へと降り立った。鍵のかかった扉の前で記念撮影。やったね、おめでとうと皆の喜ぶ顔は満足感でいっぱいだった。そして夕暮れの中、車まで戻った。途中そそり立つネットを眺めながら、「もしこんな所に降りていたら、今頃はネットの内側であほみたいに助けて〜って叫んでいたかもね」と話しながら笑顔の帰還となった。
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やったね、無事脱出 |
狩倉岳にて |
このコース、横八丁の岩稜歩き、険しい狩倉槍の登りを期待して歩いたが、大峠までの登りと、テレビアンテナからの下りが核心部で印象に残った。
大峠への登りは、本当に落石の危険が大です。後続のパーティーなど居たら最大の注意を払ってくださいね。あと、防護ネットの脱出、これは下山口をよほど慎重に見極めないとマジにやばいです。閉じこめられて通過する車から変な目で見られないようにしましょうね。もし側道から入った長栄橋方面のネットに遭遇したらまずでれないでしょう。
それにこっちは殆ど車も通りそうにないので助けも期待できませんね。楽しいバリエーションコースも一歩間違えると大変です。この報告を見て、よし俺も行ってみようと思われた貴方、ネットに閉じこめられないよう、落石で怪我しないよう最大の注意を払い、自己責任で対処しましょうね。
