
大倉乗越から望む妙高山
テント場は大にぎわい。まずはヒュッテで冷たいビールを買い、高谷池に流れる霧の幻想的な雰囲気を眺めながら時を過ごす。この夕御飯までののんびりした時間がテント泊の喜びだ。そして次は水割りだ。
ドライ食品の「すき焼きどんぶり」で夕食。以外とうまいしボリュームがある。単独の時はメニューはちょっと寂しい。隣のテントでは、先ほど妙高の下りであった4人組の女性が賑やかに調理していた。おばさん達は食べるのにも結構なこだわりがあるようだ。テントも結構な大きさだし、元気さに敬服した。
朝も早かったのと水割りの心地よい喉ごしにうつらうつらと寝てしまった。シュラフはスリーシーズン用の羽毛を持ってきたが、暑くて跳ね飛ばしてしまい、シュラフカバーだけで良かった。心地よい眠りが、遠くから聞こえる音楽の音で醒まされた。あれっ、ラジオつけてたかなあと思ったが、音は出ていない。勘違いかなとまた寝ようとしたが、やはり音が聞こえる。気になるともう寝ていられない。どのテントかでラジオを鳴らしているようだ。時間は9時だった。そのうちやむだろうと我慢していたが、30分ほど立ってもやむ気配はない。こうなるともうだめだ。発信源を突き止めようと外に出る。
10m位離れたところのテントから音楽が聞こえてくる。その時、男性が同じようにイライラした感じでテントに近づいてきた。やはり音が気になったらしい。思い切って声をかける「すみません、もう時間も遅いんで少し音小さくしてくれませんか?」と…一瞬シーンと静まり返った。そして「すみません…」と声があり音は停止した。いやあ、良かったと胸をなで下ろす。怖い人だったらやばいなと内心冷や冷やだったが…
それからは快適に寝ることができた。しかし夜半に結構な雨がテントをたたき目が覚めた。「あ〜あ、やっぱり降ってきたか」と思ったが、音楽と違ってこちらはあまり気にならない。
そして朝がきた。まだ雨が降っているが空は明るい。アルファー米の山菜ご飯を食べながら様子をうかがっていると雨がやんだ。その隙をねらってテントの撤収だ。そしてコーヒーを飲みいざ出発。晴れていたら再度天狗の庭をと考えていたが、青空はない。予定通り茶臼山への道を登る。わずかで稜線に出ると青空が広がり、妙高が現れた。道は昨日にもましてひどいグチャグチャ道で閉口する。
黒沢池ヒュッテ前は大賑わい。いやあ、今日も山は混みそうだね(^0^;)
大倉乗越へは厳しい登りが待ち受けている。そこに団体さんが列を作り登っている。「特急です、道をあけて〜」と爽やかな女性の声、「ありがとう、快速ぐらいですが、先に行かせてもらいます」と道を譲ってももらう。着いた乗越からは妙高がガスに見え隠れしている。ここにも団体さんが休んでいた。道からあふれそうな雰囲気だ。出発しそうな雰囲気だったのでいそいで先に出発した。急な下り、どんどん下る。いやはや、どこまで下るのかという感じ。途中7名くらいの中高年のグループ、その後ろに単独と思われる5名ほどが、つながっていた。しばらく後ろを着いて歩いていたが、なかなか厳しいロープやちょっとした下りでなかなか進まない。団体のおじさんがわが輩達に気がついて「先にどうぞ」と道をあけメンバーに連絡してくれた。その時おばさん達が「え〜たくさんいるじゃない。先に行こうよ〜」と駄々をこねる。
「おばさん、何言ってるのよ、私たちは先ほどからず〜っと後ろについてたんですよ」と誰も口に出しては言わなかったが、おばさん失笑を買ってしまった。男性が「すみませんねえ、はい道をあけて!」とおばさん軍団を説得。おじさんに拍手!そして道はトラバースになり残雪のある分岐に着いた。ここからはダケカンバの樹林帯、今日一番の辛い登りとなる。でも残雪のおかげか時々冷たくひんやりした風が心地よい。単独の同世代位の女性と同じペースとなった。このあとこの女性とは下山するまで同行することとなった。ほとんどペースが一緒であった(というより少し引っ張られた感があるが…)

そして大きな岩が点在するようになるとわずかで山頂。沢山の人でにぎわっている。こちらは火打と違って山らしい山頂だ。グングンと雲が流れ青空が出ている。やったね。南峰が少し標高が高いとのこと。三角点で記念撮影し、南峰をめざす。大きな岩、迫力がある。遠く白馬が見えると誰かが言っていた。目を凝らせば確かに高い山が少し見えた。
下山は燕登山道、すぐに険しい岩場の下りとなる。なかなか変化があっておもしろい。鎖も出てきた。しかし足場はしっかりしていて問題ない。ただ慣れていない人がいるのか、岩場や鎖場では渋滞となっている。時間も早いのでのんびりと順番を待つ。元気な若者の声がする。賑やかだ。そのうち団体さんが登ってきた。東京から来たという学生集団登山の一団だ。「道を譲って〜、こんにちわ〜、やあ〜すげえ岩場!」と爽やかな学生達だった。胸には名札、引率の先生も名札をしていたが、「数学、国語、物理…」などと担当が書かれていた。山にきて担当は不要のような気がするが…
そしてしばらく離れて今度は女学生の集団。聞くと先ほどの賛成人と同じ学校とのことだ。可愛いお嬢さん達の額に玉の汗が流れている。頑張るなあ、みんなこれで山が好きになるかなあ、もうちょっと楽な山にしたらいいのにね等と同行の女性と話しながら下る。
小さな光善寺池を過ぎ、天狗平で一休み。温泉の話になる。「男性はいいわねえ…」との話になった。確かに露天風呂は女性はちょっと抵抗あるんだろうな、ましてここの露天風呂は道路から見えるらしいから。
この先も結構急な下りが続く。なかなかしんどい下りだ。そして沢沿いの道となる。道がわかりにくい。石のゴロゴロした沢を少し下る。前方に単独の女性が下っていた。どうみてもその先は道から外れているように見える。立ち止まり目を凝らすと右手に登山道らしきものを発見。間違いない。大きな声で「道が違うよ〜、こっちですよ」と声をかける。女性もおかしいと思っていたのだろう、声に気づくと登りなおしてきた。いやあ、良かったね。
麻平への分岐について休憩していたら先ほどの女性が追いついてきた。「先ほどはありがとうございました」と丁寧にお礼を述べた。爽やかな女性だ。関西から来たとのこと、このあと3人で山の楽しい話などしながら下った。単独行はこんな出会いがあるからおもしろい。ここからは露天風呂がお目当てのため谷周りの道を下る。道が広くなり赤倉温泉源泉についた。束子やブラシがあった。たぶん汚れた靴を洗ってくださいと言うことだろうとみんなで靴を洗う。
我が輩は頭から水をじゃぶじゃぶと被る。気持ちいい!!「男の人はいいわねえ」とうらやましそうな女性達であった。このあとは道も緩やかとなり、スキー場、そして念願の露天風呂についた。風呂を見て、やはり女性達は遠慮した。下の宿で入りますと、ここで別れた。楽しい半日でしたが、ありがとう。またどこかであいましょうね。
さあ、露天風呂だ!一応脱衣所があった。といっても扉などはない。二つある。片方には女性の声がする。なるほど、男女別なっているようだ。男性が多い方に入る。厳密に男女別では無いようだが暗黙の了解のようだ。風呂はひょうたん型になっており、そのくびれた部分が男女の分かれ目でちょっとした岩などがあった。妙齢の女性の後ろ姿が見える。大きなバスタオルを巻いて入ってくる女性がいる。もちろんじっと見たわけではないので誤解しないでね。ふつうに目を開けていれば見える光景ですから…
単独のお元気なおじさんが登場。「いやあ、こっちは熱いねえ、そっち行っていい?」とくびれを超えていった。さすが伊達に年はとっていない。爽やかなおじさんの声に、女性陣も「ど〜ぞ〜」と招き入れていた。
こうして今年初めての楽しいテント泊はハッピーな気分で終了した。
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