谷川連峰 上越国境縦走 1999年6月12日(土)晴時々曇り
オジカ沢の頭付近から万太郎山方面を望む今年はじめての谷川連峰、念願の上越国境を歩いてきました。天気に恵まれ好展望と色とりどりの花々に大満足。やった~歩いたぞ!!っと感激の縦走でした。
【山 名】 上越国境 谷川連峰(西黒尾根から平標山)
【メンバー 】 単独
【行 程】 登山口…ラクダの背…トマノ耳…オジカ沢の頭…万太郎山…毛渡乗越
0415 0550 0650-0735 0820 1010-1030 1105-1115
仙ノ倉山……平標山………松手山…バス停
1340-1350 1425-1430 1510-1515 1615
【地 図】 谷川岳(昭文社エアリアマップ 1/50,000図)
一昨年、吾作新道から谷川岳へ歩いた時、仙ノ倉方面は生憎のガス。万太郎山頂より一瞬ガスが切れた時に見た光景が忘れられず、機会があれば縦走したいなあと思っていた。そしてついにそのチャンスがやってきた。
本当は以前野峰さんが泊まった大障子の避難小屋泊まりで挑戦したかったが、梅雨の合間のわずかな晴れ、天候も不安だしそれに夜ちょっとした用事が出来、日帰りとなった。果たしてこの長丁場日帰りで大丈夫かなと不安もあったが、頑張れば行けるだろうとの判断で決行となった。
まだ暗い2時35分眠い目をこすりながら関越道経由で登山口に着いたのは4時。コンビニのおにぎりで朝食、そして4時15分ついに長丁場の縦走はスタートした。新緑のブナ林の急登、鉄塔でひと休み。笹はたっぷりと朝露を含みズボンの裾を濡らす。白毛門方向から太陽が顔を覗かせはじめると穏やかな光がブナ林に射し込みキラキラと輝いた新緑が綺麗だ。ホトトギスやウグイスその他の小鳥が賑やかに歌っている。最初の鎖場を通過。ここらあたりから樹林帯も終わり山頂やマチガ沢の残雪が見事だ。次の鎖場では岩肌にピンクのユキワリソウが可憐だ。背景には荒々しい岩場が見事である。ハクサンイチゲやイワカガミの花々、青空に映える谷川岳の双耳峰が写欲をそそりなかなか足が進まない。のんびりしてたら単独行氏に追い抜かれてしまった。でも私は今日は長丁場、心地よい風に疲れも見えず快適な歩きで大きな一枚岩の氷河の跡、ザンゲ岩の岩場をマイペースで進む。
肩の広場が見えるようになると結構な残雪、でもコース上には雪はない。そして程なくトマノ耳到着。先ほどの単独行氏に挨拶、たった二人の静かな山頂だ。ちょっともやっとしているため遠望はきかないが巻機山、至仏山方面、苗場あたりは申し分ない。まあこの時期、青空でこの展望なら万々歳であろう。仙ノ倉方面もばっちり見える。しかし果てしなく遠く感じる。あそこまで行けるかなあとちょっと怖じ気づいてしまったが単独行氏に「頑張って!!」と励まされ山頂を後にした。
足の調子も体調も今のところ問題なし。万一途中で歩けなくなったらとザックにはツエルトや夏用シュラフ、沢山の食料で重いザックも今のところ苦にならない。さあ、行くぞ!!と気合いを入れ肩の小屋からまずは万太郎山をめざす。真っ白なハクサンイチゲがたくさん咲いている。国境稜線は残雪と笹の緑、青空のコントラストが素晴らしい。道々シラネアオイ、サクラソウ、イワカガミ他いろいろな花が目を楽しませてくれる。オジカ沢の頭手前はちょっとした岩場のやせ尾根。時折吹く風も心地よい。避難小屋を過ぎると南にのびる川棚の頭への稜線が目に飛び込んでくる。縦走路との間は緩やかな山肌で残雪はまだまだたくさんある。大きく切れ落ちた山容の万太郎谷方面とは大違いだ。途中昨夜大障子の小屋に泊まったという単独行氏と出会う。先にもう一組が万太郎方面に向かっているとの情報を得る。
陽射しが暑くなってきた。疲れも出てきた。水が恋しくなる。しかし今日は1Lしか持ってこなかった。この先このまま暑くなったらとちょっと不安がよぎる。まだ先は長い。喉をしめらす程度で我慢する。そして水場のある大障子避難小屋に到着。この縦走路では肩の小屋に次いでこの小屋が立派だ。雨漏り対策の内張りもしている。5~6人くらいは余裕で泊まれそうだ。水筒の水はまだたくさん残っており水場に行くのはやめた。ここで日焼け止めを塗る。暑くなりそうだ。
小屋からすぐの登りで大障子の頭、そこから急に下った後、万太郎山への登りが始まる。頂上手前に先を行く二人組が見えた。山肌にはシャクナゲが咲いている。このあたりから急激に疲れが出てきた。睡眠不足で5時間ほど歩いてるのでまあ、こんなもんだろうと一歩一歩道を踏みしめて登る。以前歩いた吾作新道が懐かしく姿を見せる。分岐からシャクナゲの尾根に迎えられ万太郎山に到着。とりあえず展望はさしおいて「いやあ、疲れた」とへたり込む。ここでおにぎりをパクつく。心臓の鼓動も収まりあらためて展望を確認する。いやあ、よく歩いてきたなあと谷川岳方面の稜線を眺める。そしてこれからは未知の稜線。厳しそうなエビス大黒の頭からど~んと構える仙ノ倉山へはまだまだ遠い。毛無乗越までは気持ちよさそうな草原上の下り。しかしその先は…
万一の場合はここから吾作新道で土樽に下ろうと考えていた。時間と体調を確認する。疲れてはいるが、まだ足も体調も問題はなさそうだ。時間はまだ早い。ゆっくり歩けば行けそうだと先をめざすこととした。ここを歩き通せば谷川岳から仙ノ倉までの上越国境初制覇との思いも強い。よし出発と快適に尾根を下る。途中シラネアオイがたくさん咲いていた。越路避難小屋付近で大きなザックを担いだ単独行氏と行き会い挨拶を交わす。「16時位までに元橋まで行けますかねえ?」「う~ん、まだあるからねえ。ここから大きく下って毛無乗越からの仙ノ倉迄の登りはきついよ。この縦走路中一番だろうね。この登りは…。ここをどう歩けるかで決まるね」
毛無乗越では先行する二人組が食事中であった。聞くとここから赤谷川から猿ヶ京まで下るらしい。じゃあ、気をつけてと見送られいよいよ厳しい登りだ。ゆっくりゆっくり登る。立ち止まったら動けなくなってしまいそうだ。ただひたすら一歩一歩かみしめながら登る。振り返れば万太郎山がど~んと構えている。万太郎山はこちらからの展望が一番かなあと思った。400mを一旦下ってからの登りは確かにつらい。眼下には赤谷川の滝が見える。あの中に飛び込みたい!!思いっきり水が飲みたい!!との思いに駆られる。そしてようやくエビス大黒の頭に到着。ここからようやく稼いだ高度を振り出しに戻すかのようにまた下り…しかし仙ノ倉山はもう近い。頂上付近であろうか、人影が見える。この登り確かにバテバテで一番つらかったが、それほど急とは思えなかった。やはりここまでの縦走路中の途中ですでに疲れた体調で遭遇するから一番つらい登りと言われるのでは無かろうか?
そして仙ノ倉山をめざす。感激の上越国境歩きがつながるまであとわずか。途中写真を撮っている人に「あっちから来たんですか?」「はい」「ひや~、頑張るねえ」などと雑談。改めて谷川岳方面を眺める。う~ん、やっぱり遠い…山頂はたくさんの人で賑わっている。みなさん、地図を広げてあれが谷川岳、あれが…と賑やかだ。
うん、自分はあそこから歩いてきたんだと心の中で自分をほめる「やったね」
しかし、毛無からここまでの道は時間がかかった。この登りをどう歩けるかで決まると言った単独行氏の言葉を思い出す。万太郎山までは地図のコースタイムよりハイペースで歩いてきたのでもしかしたらと思ったが甘かったようだ。うまくいけば登山口15時51分の湯沢行きバスに乗れればと思っていたのだが…やはり予定通り次のバス(17時1分)と確定したのでのんびりと歩く。
ここまで歩いてきたことを思えばここから先はラクチン、ラクチン。色とりどりの花が咲き誇る気持ちよい高原状の平標山までの道はまさしく天井の楽園に思えた。シャクナゲも多く、その他の花も今日の縦走路中ここら付近が一番多く咲いていた。踏み荒らされないように登山道には平標山頂までずっとロープが張られていた。ここも山頂は沢山の人出だ。縦走もあとわずかで終わりを告げようとしており、大事にとってきた水ももう心配ない。体が求めるままに飲む。下りは以前歩いたとき花が多かったなあと印象の強い松手山経由とした。しかし今回はハクサンイチゲは多かったもののその他の花は今いちであった。砕石の混じる急坂は滑りそうで疲れた足には難儀であった。松手山から先はこれまでずっと続いた森林限界上の開放的な雰囲気に終わりを告げブナなどの雑木林となり、無事登山口に到着した。
ふれあいの郷管理棟でビールを求め、グビグビっと喉を潤し、バスを待つ間縦走の余韻に浸る。バス停に並んだ登山客は約15名。どの顔も満足そうだ。そして湯沢から土合までJRで戻り車を回収して帰路についた。