残雪と花の谷川岳   97年5月5日 雨のち曇りそして快晴

 連休最後の一日は、残雪の谷川岳で締めくくることとした。雨模様であったが、一転して山頂では快晴となり、見渡す限り残雪の白き山々、そして田尻尾根では沢山のイワウチワやショウジョウバカマ、タムシバ等を堪能することが出来た。
 やはり谷川岳は近くて良き山である。先日歩いた四阿山も良かったが、谷川岳はまだまだ時期を替えコースを替え歩きたい山である。

西黒尾根登山口…鉄塔…ガレ沢のコルコル…谷川岳(トマの耳) …肩の小屋…熊穴沢避難小屋
 0620        0640    0810        0935         1115     1150
…天神尾根…田尻尾根分岐…土合ロープウエイ口
         1230              1315


 天気予報は朝夕は曇り、日中は晴れ…とのことであったが、水上に近づくと結構な雨になってきた。ロープウエーの駐車場に停め天候回復を待つ。ここは今の時期でもスキーヤーが楽しめるところだ。40分ほど待ったろうか、少しは小降りになったがやむ気配はない。まあ、そのうちやむだろうと雨具を身につけ登山指導センターに登山届けを提出し登り始める。ここらあたりはまだ新緑にはちょっと早そうだ。かなりの坂を登り鉄塔に到着。既に汗でむんむんである。シャツを脱ぎ雨具の下はTシャツ一枚となる。
 途中の樹林帯あたりから雪が多くなり夏道を歩くより雪の上を歩く方が楽になってきた。夏道で露出しているところは雨で水が流れている。靴が心配だ。ゴアの防水も最近だいぶ駄目になってきた。そして樹林帯も終わり岩稜帯にでて鎖場となりわずかでガレ沢のコルだ。しかしガスと雨のため視界はきかない。山頂も全く見えない。あ〜あ、やっぱり今日は駄目かなあと行き会った単独行の人と交わす言葉も元気がない。

 ところどころ岩が出ているが、やはり雪があった方が歩きやすい。しかし、ガスで視界が切れたマチガ沢方面への急坂を通過するときはやはり緊張した。このまま滑り落ちれば一巻の終わりだな…と思うと二本のストックを持つ手に力が入る。雪はザラメ状であり、アイゼンは不要である。しかし確実にステップを踏んで歩く。
 そして殆ど雪ばかりとなりまだかなあと思った頃ひょいと鉄製の大きな指導表が現れた。もう山頂は近い。ここでスキーを担いだ天神尾根方面から来た単独の人と一緒に山頂をめざす。あいにくの天候で視界は全くない。山頂には雪は全くなかった。さらに登ってきた人と肩の小屋をめざす。しかしどこが小屋方面なのかよく分からない。多分こっちだよなと歩いてると下の方から声がした。そして指導標があり無事に小屋に到着。ガスがひどかったり初めてだったらあらぬ方に行ってしまいそうだなあ。

 小屋には後を歩いてた若い人のグループがいた。汗で体から湯気がぽかぽかとたっている。皆の気持ちは一つ、天候回復が待ち遠しい。食事をしながら時々外に出てみると「おおう、ちょっと日がでてきたぞう」「やったー」と明るい声で小屋内が活気づく。そして待望の晴れ間が出てきたと思ったら瞬く間に快晴になった。再び山頂に向かう。小屋で休んでいる間に結構な人出になっていた。まったこんな天気の時によく登るなあとく」よく自分のことは棚に上げて感心する。もうあっちこっちの山々が残雪で輝いている。素晴らしい展望に皆満足そうだ。やはり雨上がりは綺麗だなあ。あまりの気持ちよさについつい長居をしてしまった。到着して1時間45分もいたのは初めてだ。

 名残惜しいが天神尾根方面に下山開始だ。途中1000回おじさんに出会った。記念に写真撮影をお願いしたら気さくに応じてくれた。1247回目とのこと。凄いなあ、2000回めざして頑張ってくださいと声援を送り分かれる。まだまだ登ってくる人が多い。結構な人がスキーを担いでいる。滑って下りている人もいる。楽しそうだなあ、気持ちよさそうだなあと思うが私の技術では無理である。すぐに沢に向かって一直線となることだろう。でも、ちょっとまねして安全そうなところを所々尻セードで下りる。快適だ。振り返れば青空と白い雲に引き立った山頂が又おいでと言っているようだ。避難小屋付近では数人がくつろいでいた。そして天神尾根をめざす。木々の葉が落ちているためかすこぶる展望がよい。こんなに木が少なかったかなあと思うほどだ。白ガ門方面もバッチリだ。この尾根でこんなに素晴らしい展望は初めてだ。しばしコースを離れコーヒータイム

 そしてもうぼちぼち田尻尾根との分岐かなあ、下りはやはりロープウエーかなあと思いながらも目は田尻方面を探している。そして天神平へ続くトレースを離れて歩いていたら右手前方にスキー場が見えてきた。滑ってる滑ってる、良かったなあ晴れて……
 で、左手を見ると田尻尾根がばっちりと見える。やはり葉っぱが無いといいものだ。ずっと先までルートが分かる。よく見るとわずかにトレースがある。よし、行けそうだと決心する。尾根沿いに歩き雪が無くなるとわずかだが新緑が出てきた。そして足下にはピンクがかった可憐なイワウチワが咲いている。今年初めて見る花だ。おおう、ショウジョウバカマも初々しい。初めはちらほらであったが、そのうちイワウチワだらけと言っても良いほどの群落が続く。おおう!!と感嘆する。早速写真を……と思ったら、山頂でのあまりにも素晴らしい展望にフィルムを使い切ってしまってたのに気づく。
 残念、こんな時こそ傑作が期待できたのに……登山道の近くや山肌には純白のタムシバも咲き誇っている。さっそく春の花図鑑で確認だ。うん、間違いないとひとり頷く。
そして滑りやすい急坂を過ぎ、わずかでロープウエーの下に出る。雪解け水のためか沢の水が轟々と流れている。この水が自然を豊かにしてくれるんだなあ、でも今年は積雪量が少なかったので夏はまた水不足かなあ等と思いながら指導センターに到着。残雪と花の谷川岳登山は終了した。帰路はラッシュにかかったのか3時間もかかってしまった