ブロッケンの妖怪出現 谷川連峰馬蹄形縦走
96年10月12日 曇り時々晴れ
遂に行って来ました。谷川岳を登る度にあそこからぐるっと回ってみたいなあと思っていた馬蹄形縦走。あいにくの天気予報の中での出発ではありましたが、思いがけない素晴らしい眺望と黄葉、そしてFYAMAの仲間との出会いでした
駐車場…白毛門…笠ガ岳……朝日岳……清水峠(泊)…蓬峠…茂倉岳…一ノ倉岳…谷川岳
0640 0935-45 1052-1115 1230-1335 1515?-0630 0800-10 1100-15 1140 1330-40
…厳剛新道…マチガ沢出合…駐車場
1430 1550-1600 1635
トラブルその@
深夜着いた駐車場で仮眠、さあ着替えて出発だと準備してきた登山服を……がび〜ん、服がない!!一瞬パニック状態…なんと洋服一式忘れ物である。初めての縦走、避難小屋泊まりの計画に心浮き浮き、数日前から準備を始めいつもと違ったところに置いていたのがまずかったようだ。いつもは登る服装のまま車内泊なんだが、窮屈だなあと朝着替えようと思った次第である。これじゃあ登れ無いなあとがっかりしたものの、冷静になってみると、上下のトレーナーを着ていたのに気づいた。………
う〜ん、今日は天気も悪そうだし、すぐ雨具を着ることになるだろう。そうすればあまり目立たないし……ちょっと格好悪いけどこれで登ろうと決断する。出足からちょっと反省。しっかり前日装備のチェックしたのになあ
トラブルそのA
楽しかった山行もいよいよ終盤。無事登山口に到着。やれやれ楽しかったなあ……途中から同行したMさんに「記念の写真撮ろうよ」と声をかけ車内に残して置いたカメラを……ところが……無い!!あれっ、確かにここに置いてたのになあ?三脚やフィルムはあるのに……気のせいかな「御免、カメラ忘れちゃった」で、記念撮影は中止。帰路どう考えてもやっぱりおかしい?帰ってすぐ確認するがやはり無い。どうも車上荒らしにあったみたいだ。
さっそく伊勢崎署に届け出る。被害はカメラと交換レンズ……シクシク…幸いカメラだけは保険に入っていたので一安心。でこのことを同行のMさんにメールする。すると驚いたことにMさんから、「朝日岳からずっと一緒だったM君はなんと車の中に置いておいたテントをパクられたそうです」と一緒に報告しておいてとの返事。私からのメールを見てもしかしたらと確認したら、まだ一度しか使ったことのないテントが無くなっていたそうだ。同一犯であろうか?皆さん、登山口に車を置いておくときは注意しましょう(鍵はかけてたんだけどなあ)
さて、いよいよ本命、前置きが長くなりました。天気予報では雨模様とのこと。しかし、今回を逃したら来年になりそうだ。まあ、雨でも仕方ないや、眺望は最初から諦め、避難小屋の楽しい夜を求めて出発した。しかし、思いがけない眺望と紅葉、友との出会い、ついにやったぞとの満足感で今年一番の素晴らしい山行となりました。
突然の好展望
白毛門山頂まではただひたすらガスの中、期待通り?まったく展望はなし、水滴被った木々の紅葉を眺めながらひたすら急登。本来なら対面に見える谷川岳他な〜んにも見えない。まるで自分一人だけの世界だ。そして笠ガ岳、ササの中をひたすら歩く。急では無いが結構疲れる単調な登りが続く。そして朝日岳へ…なんかちょっと空
が明るくなってきたぞ。ガスの動きもなんか忙しそうだ。天気良くなるんかなあと思い歩いていると、突然ガスが切れ今日初めての山並みが姿を現し朝日岳へ続く山並み、そして山肌の素晴らしい紅葉が現れる。えっ、こんな景色の良いところ歩いてたの〜とびっくり。それからは白いベールに静かに包まれる神秘的な山肌、そして荒れ狂いわき上がるガスで見え隠れする山肌、様々な形でめまぐるしく変化する景色はもう言葉で表せないくらいの感動だ。
しばらく呆然と眺めていたら、朝日岳方面から下ってきたおじさんも「凄かったねえ、今日こんな良い景色に出会えると思わなかったね」と感激していた。「うんうん、良かったですねえ。これからどちらへ」と話を交わす。
友との出合い
そして朝日岳山頂だ。雲海に浮かび、見え隠れする遠くの山々に「お、見えたぞ、あ、あれはどこだろう」と行き会った人と話が弾む。「酒呑さん?」と登ってきた人から声を掛けられる「えっ、と言うことはMさん」…「はじめまして…」私のいつもの書き込みを見て時々メールのやりとりをしていたMさんである。もしかしたら避難小屋で会えるかもと期待してたが、ここで出会うとは思ってなかったのでビックリ。それから一緒に素晴らしい景色を眺め、語り合い一緒に避難小屋を目指す。こうして単独行がいつもと雰囲気の違った楽しい山行に変わったのである。
ブロッケンの妖怪出現
朝日岳はなだらかな雰囲気の山である。気持ちよい尾根歩きで避難小屋を目指して歩いていたら右手にまあるい虹を発見……うわあ、綺麗だなあと感激しているとMさん「あっ、ブロッケン現象だ」私「えっこれがブロッケン現象って言うの?へえ、」体を色々動かしてみる。確かに私の陰が中心で動いている。素晴らしい後光が射しているようでまるで神様になったようだ。Mさんも自分の陰が虹に囲まれているという。不思議なもので自分のだけしか見えないとの事。新田次郎氏の「槍ヶ岳開山」で播隆上人が槍ヶ岳でみたシーンを思い出した。陰が遠くなると虹の輪が大きくなり近くなると小さくなり、このあと暫くブロッケンの妖怪につきまとわれ、生まれて初めての感動的な体験は心にしっかりと刻み込まれた。
初めての避難小屋泊
朝日岳から紅葉を楽しみながら到着した清水峠の白崩避難小屋。先客が二人「こんにちわ!!」と挨拶し重い荷を降ろす。今日は初めての避難小屋泊まり、不安にかられ色々と詰め込んだザックは約16Kg。ああ、重かった。どんな所かなと不安があったものの立派な建物、これなら少々の雨風も全く心配ない。約10名は泊まれそうだ。トイレもある。東電監視小屋から200m程左手に下ったところに水場もあり、さっそくMさんと水くみに行く。
そして早速ビールで乾杯だ。このあと更にウイスキーを少々たしなむ。そしてコッヘルで炊飯開始、練習してきた甲斐合って今までで最高の炊きあがり。Mさんに試してもらう「うん、おいしい」お世辞かなあ。でもまずまずの感触。(なお、朝もいたがこちらは失敗。お粥みたいになってしまった)Mさんの持ってきた小さな可愛らしいローソクの明かりでムードも最高だ。
今日のために購入した暖かいシュラフにくるまっての語らいは楽しかったが、いよいよ就寝の時間。あとで到着した3人を加え今宵は7名である。鼾や寝言、歯ぎしりにも悩まされず心地よい疲れですぐに寝入ってしまった。夜中は結構な雨であった。
あとこのコースでは笠ガ岳を下ったところにカマボコ形の避難小屋(5名程度)、一ノ倉岳にもカマボコ形(3人位…ドア壊れており本当の避難じゃないと泊まりたくない感じ)そしてトマの耳下の肩の小屋、茂倉岳下の小屋(この二つは立派…茂倉のほうは聞いた話です)が利用可能である。 有料で管理人の居る蓬小屋も利用可能(11月3日迄)
そして素晴らしい眺望
13日も茂倉岳まではガスで全く展望無し。ようやく頂上かと何度か騙されやっとの事で到着。数人が休んでいた。その時、明るくなってきたと思ったら今まで歩いてきた稜線が、そして遠くの山が姿を現した。近くの女性「うわあ、こんなに綺麗だったの、素敵!!」と喜びを満面に現す。それからはガスと太陽、そして山肌の紅葉や草黄葉、そして遠くの山々のおりなす素晴らしい自然のドラマの始まりだ。一ノ倉から谷川岳に向かうにつれ人も多くなり、素晴らしい眺望にあちこちで感動の声があがる。
なんか不安定で倒れそうに見えるのは大源太山だな。昨日歩いた白毛門や朝日岳も雄大だ。至仏山、燧ガ岳、武尊山、赤城山、皇海山から日光白根山、そして勿論巻機山も見える。あとはもう何がなにやら…とにかく沢山の山々が姿を現し縦走してきた私たちを迎えてくれた。西黒尾根からは今までに見たこともないような万太郎山から仙ノ倉方面がくっきりと見える。あ〜あ、カメラを持ってくれば良かった(でもザックはパンパンで入る余裕はなかったのだが……無理して持ってくれば盗られることもなかったのに……)と思いながらコンパクトカメラのフィルムはあっというまに終わってしまった。
最後に
谷川岳といえば、「魔の山、ああ、恐ろしい」が山を知るまでの印象であった。確かに岩登りや悪天時、コース、季節によっては細心の注意、装備をしないと楽しい山行が暗転する危険性をはらんでいる。今回歩いた縦走コースは広いササ原、草原の峠、武能岳や茂倉岳、朝日岳のおおらかな山容は何となく女性的な感じがする。反面一ノ倉の覗きや西黒尾根から厳剛新道の岩場は荒々しい姿を見せる。最後は白ガ門に見守られ無事マチガ沢の道路に下山できた。「やった〜」と密かに心の中で万歳だ。
Mさんと「今度は逆コースで歩いてみたいね」と早くも次の山行を夢見て、楽しく変化のある馬蹄形縦走は幕を閉じた。