榛名連峰の最高峰、掃部ガ岳   1996年9月15日(日)晴れ時々曇り

                               榛名山 掃部ガ岳(1,449m) 杏ガ岳(1,292m)

上毛三山の一つ榛名連峰の最高峰、掃部ガ岳(カモンガダケ)に登ってきました。
ササの多い山で先日の雨に濡れた急坂が多く道は滑りやすく閉口したが、杏ガ岳(スモンガダケ)への樹林帯は気持ちよく静かな雰囲気の良い山であった。

町営駐車場…登山口…硯岩……掃部ガ岳…杖の神峠……杏ガ岳…杖の神峠…駐車場
  0830         0845-55   0930-40  1035-45  1140-1230  1310     1400


 榛名山は通勤途上の利根川にかかる板東大橋からいつも眺めることが出来るが、相馬山、水沢山、二つ岳には登ったものの最高峰の掃部ガ岳は未踏峰であった。南面に岩壁を張りめぐらした嶮しい山容、榛名富士やその他の外輪山の素晴らしい展望との触れ込みにもう登るしかないと雨から晴れに変わった天気予報を信じて伊勢崎を出発した。

 新しく建て替えられた国民宿舎「吾妻荘」の手前の無料駐車場に車を止める。広いので全く問題はない。そこへ群馬ナンバーの乗用車が一台……年の頃は私と同じくらい。「登山口はどっち?」と訪ねられ「あっち」と答える。「じゃあ、気を付けてね」と送り出す。10分ほど遅れて登山開始だ。それにしても国民宿舎はちょっと派手な色使いだなあ、私の感覚ではいくら観光地化した榛名湖とはいえ何となく恥ずかしい色彩である。人によってはモダンな色だなあと感じるのであろうか?

 登山口の案内に導かれ樹林帯の中を僅か登ると硯岩との分岐、滑りやすい湿った急坂を所要5分で、どーんと榛名湖を中心とした山々が一望できる素晴らしいところだ。しかし切り立った崖は余り覗き込まない方がよい。全くの垂直だ。展望を満喫し鞍部に戻る。これから約40分の行程で頂上を目指す。ササが深い。膝から腰くらいまであり昨日の雨に濡れたササでびっしょりになる。遅蒔きながら雨具の下を身につける。これで思いっきり歩けるようになる。しかし樹林にさえぎられ展望もない単調な尾根の登りである。ズルズルッと滑って非常に歩きずらい。

 山百合子さんご夫婦が登ったときは小鳥の声が多かったそうで期待したが、時期が悪いのか全く声はしない。時々音もなく藪から飛び立つ鳥が見られたが、一瞬で何の鳥か分からない。やがて少しずつ視界が良くなり静かな山頂に到着。榛名湖方面はバッチリだ。しかし遠望は雲のためちょっと無理だ。

 休んでいると北方面に続く道の方から数人の声が次第に大きくなってきて4人が現れた。別々の組らしいが一様に杏ガ岳に行くつもりが、道を間違えたらしいとのこと。地図と磁石で確認する。「あっちですよ」「でもこっちの踏み跡は少ないよ、そうかなあ」「あれが杏ガ岳?」「いや、あれじゃない?」「どう見てもこっちの方が道らしいねえ」「これじゃあ間違うよね」と5人で相談する。
 確かに4組みも間違うんだから分かりにくそうな道である。送電線鉄塔の巡視路が所々にあるので要注意だ。

 間違った内の1人は駐車場であった単独行氏である。「じゃあ、私はお先に」と、こっちだろうとのササに覆われた道に見えない急坂の方を降りていく。他の人は「本当にそっちで良いのかなあ?」と言った顔つきで休憩している。私は双眼鏡で単独行氏の歩きを見ていたが、間違いないらしので後に続く。歩いてみるとササの下に道はちゃんとある。しかし急坂で滑る滑る。

 地蔵岩らしきところで単独行氏が休んでいる。「間違いなかったですね」と話しかける。「そうですね。でもこのササは参ったなあ。ほら、びっしょりですよ」と靴、ズボンを見せる。確かにびっしょりだ。雨具の下は持ってないらしい。「じゃあ、こっから先は私が露払いで先導しますよ」と先に進む。これよりずっとこの単独行氏と今までの山歩きなどを語らいながら同行した。

地蔵岩、西峰、耳岩を過ぎ「峠、上部の分岐」でまた方向確認に手間取る。どうみてもこっちだが、あの林道なんか地図に載って無いなあとちょっと不安である。しかし、小さな標示板もあったしまず問題無いだろうと進む。「こんな時1人だったら不安ですね」と語らう。
 ここが今日一番の急坂であったろうか。何度となく滑り転けそうになる。ようやっとの事で杖ノ神峠に到着。上から見えてた林道は最近出来たものらしく真新しい。ガイドブックによれば、地蔵様があり静かで落ち着いた所との事であるが、確かに静かだ。峠を吹き抜ける風も心地よい。しかしこの林道が出来たお陰で、昔日の面影は感じることは出来なかった。

 ここで新たな単独行氏と出会う。林道を越え杏ガ岳をめざす。ここからはササも少なくなり気持ちの良い樹林帯の上り下りである。立派なキノコや可愛いキノコが目につくが名前は分からない。こちらから眺める掃部ガ岳の山容は素晴らしい。歩くより見る山だなと感じる。耳岩はトラの顔に似ていると言うが、そうかなあ??

 さあ、着いたかな。あ、違った。まだ先にピークがある。よっこらしょっと進む。またまた、さあ、着いたぞ。あれっまだ先がある。やれやれ、などと言いながら気持ちの良い樹林帯を歩く。そしてようやっと本命の山頂に到着。もうこれより先にピークはない。木の枝には間違いなく「杏ガ岳」とある。石宮が3つある。樹林のため西方向の展望は余り良くないが、東から南はばっちりである。榛名富士、相馬岳、二つ岳、烏帽子岳、天目山などがまさにニョキニョキと言った感じで目を楽しませてくれる。結構榛名湖は遠く見える。帰りは遠いなあなどと話していると、頭上にトビみたいなのが悠々と飛翔している。双眼鏡で覗くが鷲?鷹?何か分からなかった。もうちょっと舞い降りてきてくれと願ったが、挨拶が済むと遠くに飛んでいってしまった。

 昼食をとっていると峠であった単独行氏や掃部ガ岳であった人達が登ってきて話が弾む。「えっ、烏帽子のぼってないの、割と簡単で展望良いよ」と言われ、じゃあ、帰りの登ってみようかと同行した単独行氏と相談する。(結果としては、ちょっと雲が無くならないので、良い展望が期待できるとは思えなかったので登らなかった。本音は二人とも言わなかったが、駐車場に着いたときは長い林道歩きで疲れていたのである)

 しかし、ここに集った5人は全て単独の人ばっかりである。何処の山でもグループや夫婦が多いのだが珍しいなあと思う。静かだし、展望も360度ではないし、取り立てて特徴はないし敬遠されているのであろうか?しかし、我ら5人衆の思いは静かで良い山だねってそれぞれ思っていることだろう。帰路はまたまたひと山、ふた山、み山〜越えって感じで峠に到着。掃部ガ岳のそびえ立つ山容を眺めながら林道を歩く。岩の辺りにはワシタカ(名前は分からない)がさよならを告げるかのように優雅に飛翔していた。