上州武尊山は360度の好展望    1996年7月13日(土)快晴無風

                                     
 日本武尊にまつわる伝説と信仰の山、均整のとれた美しい山容、岩場の緊張感と大パノラマ(群馬の山より)と以前から気になっていた「上州武尊山」にようやく登ってきました。快晴に恵まれうたい文句通りの素晴らしい山行でした。

    川場野営場駐車場…花咲尾根との分岐…前武尊…家の串…武尊山(沖武尊)…家の串
     0640            0805      0845-0900  0955 1045-1145      1235   
    …前武尊…不動岩…駐車場
     1320-30   1415    1515


 武尊山へのコースも色々あるらしいが、「群馬の山歩き130選」によると、この山のすべてを満喫できるとの川場村コースが面白そうだ。Yさんから教えてもらった野営場からのコースをとれば時間的にも歩けそうと伊勢崎を4時30分出発、早朝のため関越を使わず6時10分に到着。駐車場には親子連れが準備中であった。

 登山届けを提出し、小鳥の声に見送られシラカバ、ブナ、ナラ等の樹林帯を歩く。割と緩やかな道だ。ところどころ巨木が目を楽しませてくれる。深い山の証拠だろう。

不動岩との分岐を花咲尾根方面にとり寝不足で噴き出す汗を拭い拭い登る。途中イタチのような動物が木の間から顔を覗かせた。すばしこくじっと見てる暇はなく詳細は不明。ウグイスの鳴き声も賑やかだ。双眼鏡でしばし鑑賞。右手にスキー場が見えてきた頃60歳くらいのおじさんに抜かれたがかなりの健脚だろう。このおじさんと次に出会っったのは前武尊に着いたとき「じゃあ、お先に」と一瞬の出会い、そして次は武尊山の雪渓の近くを必死に登ってたとき、下山してきた。改めて健脚に脱帽。

 前武尊では仰々しい日本武尊像に迎えられる。赤城、皇海山、日光白根方面は最高の眺望だが、北、西方向は樹木に遮られ展望はない。行く手に以前豪雨で崩壊した剣ケ峰の山肌が痛々しい。南鞍部から登る従来の登山道は通行止めでもうかなり荒れている。この上に登れたら気持ちよいだろうなあと思いながら東面の新しい道を通る。しかし、次の岩峰は登れる(左に巻き道もある)ちょっとした鎖場で緊張する岩尾根に出る。眼下に見下ろす深い森の緑に吸い込まれそうだ。しかし吸い込まれたら一巻の終わり。慎重に足を進める。日乃大神の小さい祠を過ぎるとわずか2m位の下りの鉄梯子、ここはちょっとおりにくい感じだった。岩場が終わるとそこには黄色い花や白いイワカガミのような形の花がポツリポツリと出迎えてくれる。

 そうそう、岩場に登る手前で首下の赤い「ウソ」、ちょっと太めの「ウグイス」、多分「オオルリ?の雌」等にであった。特にウソには感激!!(嘘ではありません)
 これより笹原の急登を過ぎると家の串に到着。シャクナゲの多いところだ。咲いたら綺麗だろうな(途中一輪の花が咲いていた)ゴゼンタチバナも道そばに咲いている。ここらあたりの縦走路は前方に沖武尊を眺めながら、また左右には素晴らしい展望を見て気持ちよいところだ。ところどころ雪渓も見える。武尊牧場への分岐を過ぎ中ノ岳の南面の巻き道途中にある「菩薩界のみず」は渇いたのどを潤してくれる。冷たくて気持ちよく汗で汚れた顔を洗う。「すっきり、さっぱり」

 そして雪渓を2カ所ほど通過するとまたまた日本武尊像がギョロ目を剥いて出迎えてくれる。大きな剣が添えられているが、あんな大きいのは振り回せないよなあ……と思いながらホンのひと登りで山頂に到着。思わず素晴らしい展望に絶句……眼下には玉原湖も見える。おお、シャクナゲもけなげに一輪咲いている。

 山頂には5〜6名の先客が思い思いに展望や食事を楽しんでいる。立派な山名を記した方位盤があり、遮る物のない山頂から眺める山々は最高だ。
 えっどこの山が見えるって……そうですねえ、あげたらきりがないんで代表的な山だけにしとくと「至仏山、平が岳、燧が岳、白ケ門からぐるっと谷川岳、草津白根に赤城山、袈裟丸、皇海山に日光白根山etc…」ただ、ちょっと残念だったのは南の方に見えるはずの富士山、八ケ岳は靄ってて駄目であった。まあ、今の時期でこれだけ見えれば大満足という事にしておこう。特に谷川連峰があんなにはっきり望めたのは感激であった。至仏山方面が一番雪が残っていそうだ。

 あまりもの展望にビール片手に昼食をとっていたら、あっと言う間に1時間過ぎてしまった。見渡すと人も増えている。今日の行程は長い。もう少しゆっくりしたい気持ちにピリオドをうち山頂を後にする。途中シラネアオイが一輪、キヌガサソウに似た白い花が数輪、ヤマザクラも僅か残っている。ミツバオウレンもあったぞ〜

 往路で通った岩尾根は敬遠し帰路は巻き道を通る。そして前武尊に到着。今日は暑いせいか水を沢山消費した。さてあと2時間くらいかと休んでいると目の前にウグイスが飛んできて労をねぎらって楽しいさえずりを聞かしてくれた。観客一人の贅沢な音楽会だ。さあ、心も軽くなっていよいよ鎖場の待つ不動岩に向け出発だ。

 かなり急な坂道を一本調子に下る。さすがに信仰登山によって開かれた道だなあ。難行苦行を乗り越えねば御利益も薄いのかも……ここを登りにつかったら最悪だなあと思いくだる。胎内くぐりの岩を過ぎ、「ふりかえりの梵字」の札を見て振り返ると後方には巨大な岩峰。おいおい、あそこ登るの〜とちょっと躊躇する。しかし、後には引けない。まず第1峰、10m位の鎖場をよじ登る、そして下る。第2峰は更に見上げるばかりの岩峰。ここは登れない。背スリ岩ではザックを気にし、カニの横這いを慎重にトラバースする。突然丈夫でグワーとけたたましい声。「鷲、鷹?」…以前の豪雨で崩壊した所は結構危険だ。へっぴり腰で通過する私を見て楽しんでいるのであろうか?(この鳥はそして枯れた木の枝に漂着、観察の結果ホシガラスと判明)

 そして第3峰、ここもクサリに助けられ某君を悼むレリーフが埋め込まれたてっぺんに到着だ。ここから通ってきた道を振り返ると「えっ、あんなとこ通ってきたの」ってくらいの景観だ。また前武尊、剣が峰が高く聳えている姿も素晴らしいものだ。
 さあ、これからは難所もなく僅かで駐車場だ……と快適に下る。しかし、途中にはなぜか倒木が目立った。疲れた足を持ち上げるのは一苦労であった。

 こうして楽しく、厳しい武尊山山行は幕を閉じた。登山届けに下山時刻を記し、駐車場に到着。一人のおじさんが寄ってきて「教えて、どのコースどれ位で登ってきたの?」だって。聞くと今日皇海山に登って来て今日はここで車中泊、明日は武尊に挑戦とのことであった。凄い人もいるもんだ。
やっぱり武尊は素晴らしい。と妙に感心し「川場温泉いこいの湯」で汗を流し帰路についた。

 そうそう、高山植物はそれほど多くはなかったものの、シャクナゲの木が全体的に非常に多かったです。それにやはり山が深い。シャクナゲの時期や紅葉の時期にもま た挑戦してみたい山である。