越後 荒沢岳(1,968m) 1998年11月1日(日)曇り時々晴れ
  銀山平コース

前クラより山頂を望む

険しい岩場を登り終え、前クラから山頂を望む

豪雪に磨かれた大岩壁、深く切れ落ちた沢山の沢、両翼を大きく広げ天空にそそり立つ山容…一度は登りたいと思わせる山である。しかし名だたる豪雪地帯、雪の来る前にと紅葉もちょっと終わりかなと言う時期、秋の名残と鎖場を堪能してきました。麓の民宿も思い出のひとつです

歩行時間  約7間45分(休憩含む)
行  程    
銀山平登山口…前山…前クラ…荒沢岳山頂
        0630→      0710  0915   1035
         1415←            1210  ←1120


関越自動車道小出インターをでて国道352号線で駒ヶ岳登山口のある枝折峠を経て銀山平に向かう。この林道は狭くてくねくねと曲がりが多くて運転は緊張する。シルバーラインを利用するべきだったと悔やむがすでに手遅れ…駒ヶ岳登山口では明朝登山予定の人達が数組たむろしていた(車中泊で夜を過ごすようだ)。
枝折峠経由の道は素晴らしい展望が期待できるのがメリットだが、あいにくの天候でガスってしまい、ただひたすら対向車に気を付けての苦難の運転であった。

 銀山平につく頃は雨も降ってきて明日の登山が気がかりだ。しかしせっかく来たからと奥只見湖を見学する。ガスで煙る湖畔の紅葉も見応えがあった。明日は天気が回復してこの紅葉を楽しむことが出来るであろうか?
伝之助小屋
 今日は登山口に一番近い真新しい「伝之助小屋」泊である。6畳間に通され早速明日の天候回復を祈ってMさんと乾杯、ワイン、酒、ビールと飲み物は豊富だ。そして待望の夕食、大広間で他2組の宿泊客と話を交わしながら楽しい夕食。山の幸が豊富な食事だ。アケビの蔓のお浸しや、皮の天ぷらは美味だ。壁には釣り天狗自慢の沢山の魚拓、そして山や花の写真が見応えがあり話が弾む。ついつい、アルコールも進みちょっと酔ってしまった
 
 で、早めに就寝…朝、5時半起床、早速外を眺める。まだ暗いが雨は降っていない。前日頼んでおいた弁当を食べさあ、出発だ。小屋前で早起きのおばあさんが「天気は良くなるよ。気を付けて行ってきな」と見送ってくれた。しかし見上げる山肌はガスが深い…

雲海と駒ヶ岳 最初から雑木林の急坂、今日は駄目かなあと暫くガスの中を黙々と登る。しかしおばあさんの予報が当たったのか、やがて展望が良くなり雲海が気持ちよい。赤く色づいた紅葉が白い雲海をバックに引き立つ。普通なら眼下に見える銀山湖は雲海に占領されている。前山に着く頃は右手に枝折峠から越後駒ヶ岳のだらだらとした稜線が見えてきた。昨夜同宿のご夫婦も今頃はあの稜線を歩いてるんだろうなあ…
前山より山頂を望む
 前山からはブナの尾根で気持ちよい。紅葉もこの辺りが一番綺麗であった。一旦下りそして緩い上り、前方に鋭い岩峰が聳えている。山頂は遙か遠くに見える。いやあ、あれを登るのかと心は躍る。そしていよいよ急登となる。小屋の人の話では鎖は先日取り外したとのことであったが以外や鎖はまだ残っていた。一安心したものの、ちょっと期待はずれ?…で、今日は鎖を使わずに登るぞと決意し木の根っこや岩の出っ張りを頼りに登る。

ようやく着いた所は前クラの中間点、前方には鋸歯状そそり立つ岩峰の岩壁がそそり立つ。えっ、あんな岩登るの…どこ登るのかなあと眺めると手前の岩壁に鎖が見える。しかしそちらには×印がしている。コースは一旦下り、そして岩壁をトラバースした後、濡れてつるつるの岩場の上りの方らしい。いやあ、良かった。あの岩登るんだったらたぶん駄目だなと内心良かった良かったと思ったのも束の間、ここの鎖が外されていたのである。

 しかし急な岩場の登りも足場は良く、慎重に登れば大丈夫そうである。気を付けていこうねと声を掛け合い慎重に登る。100m位はあろうかという岩場を斜めに登るとわずかで前クラの表示があった。「いやあ、やったね。でも下りが怖そう」ととりあえずお互いの健闘をたたえる。眼前にはまだまだ遠い山頂へと続く尾根が聳えている。左右にはいくつもの沢が切れ込んでいる。高度感も充分あり、大きな山だなあと暫し見とれる。コメツガの尾根歩きはだんだんと急登となり、山頂はなかなか近づかない。だがこのころ銀山湖も姿を現し四方の展望が良くなってきたので疲れも忘れる。山頂より奥只見湖と花降山を望む

 そして最後のちょっとした岩場を過ぎると山頂に到着。快晴とは行かないまでも、太陽も顔を出し登頂を祝福してくれる。尾瀬の燧ケ岳の山容が綺麗だ。巻機山や越後三山の中ノ岳、駒ヶ岳、その他まわりの山々が目を楽しませてくれる。残念ながら八海山は中ノ岳の陰で見えなかった。灰ノ又山から兎岳への稜線や花降岳への稜線は歩いてみたいなあと思うような景観である。山座同定も落ち着いたので、下りの岩場も気になったがせっかくだからとビールをグイッとやる。慎重なMさんはお預けである。

 そろそろ下山しようと山頂に別れを告げる。少し下ったところで結構高齢のおじいさんとすれ違う。このおじいさん、かなりの健脚である。私たちが前クラの岩場をおっかなびっくり下り、その次の鎖場を下り終えた頃スタコラサッサと追い抜かれてしまった。私たちの親父くらいの年齢と思えたがその健脚ぶりに二人して唖然とする。いやあ、我々も年とってもあの様に山登りたいもんだねと話しながら下る。途中から雲行きが怪しくなり遂に雨となった。雨具を付けるのも煩わしく傘を差して歩く。雨に濡れて輝く紅葉もまた雰囲気を変えて楽しませてくれる。

 前山の先からは左手の尾根経由で下る。こちらも急な坂、雑木林で綺麗な紅葉であった。急坂を公共温泉転びそうになりながらも無事下り終え伝之助小屋に到着。女将さん、おじいさんがお帰ると出迎えてくれ暖かいお茶までごちそうになってしまった。おじいさんから登山道の話や過去の事故の話、温泉の話など伺い下山後の楽しいひとときを過ごした。そして教えて貰った公共温泉(工事現場小屋のような変わった建物で浴槽は大きなプラスチックの箱、入浴料はポストに心付け程度いれる。丸太沢の紅葉が浴槽から眺められちょっと変わった雰囲気の温泉である)で疲れを癒しシルバーライン経由で帰途についた。