皇海山は遠かった。でも眺望に満足
1996年10月26日(土)曇り 〜27日(日)晴れ
鋸方面から見た皇海山先月の8日、庚申山頂からガスの切れ間に眺めた鋸山から皇海山の雄姿が忘れられない。そして庚申山荘までの明るい広葉樹林帯、もう紅葉が見頃だろうなと出かけた。皇海山に登るなら庚申山からとこだわり、しかし遠かった。でも今が旬の紅葉を満喫し、庚申山荘からの朝焼け、そして鋸山や皇海山からの見事な眺望に大満足の山行であった
歩行時間 一日目 約3時間20分 二日目 約9時間20分(両日とも休憩含む)
行 程 10/26 銀山平駐車場…一の鳥居…鏡岩…庚申山荘(泊)
1155 1250-1255 1330 1420
10/27 庚申山荘…庚申山…薬師岳鋸山…皇海山……鋸山…六林班峠…
0550 0640 0730 0935-1010 1120-1145 1215
庚申山荘…一の鳥居…駐車場
1410-1440 1510 1600
地 図 日光、奥鬼怒、奥日光(昭文社エアリアマップ 1/50000図)
今日は庚申山荘泊まりの為ゆっくりとした出発である。11時半頃銀山平の駐車場に到着、ほぼ満車状態であったが、隙間を見つけてどうにか駐車。さっそく顔の真っ赤な猿が出迎えてくれた。ここから一の鳥居までの林道は黄葉がまさに旬である。先月来たときから見ると山の感じが全く違って見える。そして一の鳥居からの山道歩き、広葉樹林帯は期待通りの黄葉である。素晴らしさに見とれなかなか足が進まない。しかし、それで良いのだ。今日は楽しい山荘泊まりである。
山荘付近の黄葉はちょっと時期が遅いようだ。シラカンバなどはもう落葉している。早く着いたのでねぐらを確保し近くの天下見晴らしまで足を延ばす。強烈な風が吹きつけ寒いことこの上ない。カラマツの黄葉や、眼下の山肌の黄葉は素晴らしかったが、楽しむゆとりもなく山荘に戻る。
山荘は2階建て無人であり、かなり沢山の人が泊まれる。布団も沢山用意されており、水、炊事場、トイレもパッチリである。広場にはテントも張れる。大人一泊二千円であり自主的に宿泊名簿に記入し郵便受けみたいな箱にお金を投入するようになっている。夕食の準備にはちょっと早い為重たいのに持ってきた「カラスは何故賢いか」の本を読むそして夕食の準備。コッへルで自炊、炊きあがり緊張の一瞬「やった〜パッチリだ」と1人でほくそ笑む。味噌汁、海苔、梅干し、キュウリ、タクワン、あつあつのご飯で満腹だ。そして就寝までの楽しい時間、缶ビ−ル、ウイスキ‐をたしなむ。近くに陣取った栃木から来たという人は日本酒だ。しばし話が弾む。2階には15人ほどいたろうか?1階合わせて30人から40人宿泊しているようだ。かなり風が強く明日の天気が心配だ。夕焼けも見えず、月も見えないが遠く足尾方面の夜景が碕麗だ。早めに就寝する。せっかく持ってきたシュラフに入りそして布団を被る。暖かいなあ
飲み過ぎたか水が欲しくなる。ふと窓外を見るとまーるい月、再び就寝。いびきや寝言も聞こえない、遅くまで騒ぐ人もなく今日の宿泊客は優秀だ。そして朝…かなあ、かなり騒々しくなってきた。時計を見るとまだ4時。早立ちの人だろうか、トイレに行くのであろうか?トイレは外にあり用足しに行く人達のドアを開ける音が非常に気に障る。しかしどうにか5時まで寝ていた。5時半過ぎには締麗な朝焼けが見れた。かなり寒い、朝方の冷え込みはかなりなものだ。
朝食を簡単に済ませ皇海山目指して元気に出発だ。冷気で空気がしまっている。岩場や木々にあたる朝焼けの光が神々しい。爽やかな1日の始まりだ。岩場から流れる冷たい水で顔を洗い、ツララをかじる。遠く富士山が見える。初の門から胎内くぐりを経て庚申山頂に到着。ここは展望はないので少し先迄進む。皇海山がど〜んと構えている。日光白根山は雪景色だ。今日は素晴らしい天気になりそうな予感。山々の眺望も期待できる。心も軽く鋸11峰に向けいざ出発だ。
鋸11峰の岩稜は、かっては修験者が通った道でありアップダウンの繰り返しで鋸山までの稜線歩きが楽しめる。先ずは御岳山だ。樹林で囲まれた山頂からは眺望はない。駒掛山、渓雲山はそれと気付かず地蔵岳に到着。日光白根山や皇海山方向は見える。そして薬師岳、赤城の黒桧山は雪を被っている。今日Oさんは赤城山県民登山大会に出場し日頃鍛えた健脚を発揮することだろう。そして武尊山かなあ、雪をすっぽり被っているのが見える。蔵王岳からはクサリ場の下りだ。ちょっとしたガレ場もありロ−プやハシゴに助けられ今日初めての緊張だ。両側がすっぱり切れ落ちたところや以前の台風の爪痕を通過し、剣の山、360度の素晴らしい眺望だ。富士山、南北アルプス、草津白根に四阿山、八ヶ岳、筑波山、浅間に武尊にえ〜と、それから……そしてようやく鋸山、素晴らしい展望だが一方は樹林で遮られている。日光男体山をはじめ日光連山もバッチリだ。
鋸山からは急斜面をロ−プに助けられ下る。かなり長い距離で手が痛くなってしまった。不動沢からの道と合流しいよいよ最後の登りだ。コメツガ帯の中、かなりな急登を喘ぎながら登りそして緩やかになったら大きな青銅の剣を過ぎひと息で山頂。余り広くない山頂は樹林に囲まれているが木々の葉は落葉しており樹林越しに眺望はかなり良い。燧ガ岳や至仏山、谷川岳や上州武尊は雪に覆われている。遠く北アルプスも見える。双眼鏡で槍ヶ岳も確認できた。富士山もまだ見えている。う〜ん、満足。庚申山から約4時間でたどり着いた皇海山はやはり奥深い山だ。
不動沢から登ってきたMさん登場。一緒に庚申山荘に泊まり酒を飲みたかったが都合で日帰りコースで合流することとしたのである。予定よりかなり早い。やはり健脚だ。谷川馬蹄形縦走の写真を渡ししばし談笑、そして記念撮影。この後静かな皇海山は数十名の団体に占拠され、まさに記念撮影は整理券が必要な状態。人気有るんだなあ、静かな皇海山、奥深い皇海山は遠い昔になってしまうなあと思いながらMさんと山頂を後にする。
鋸山で昼食して再開を約しMさんと別れ六林班峠経由で山荘を目指す。胸から首まではあろうかという笹原の下りである。用心しないと倒木や木の根っこで躓いてしまう。気持ちの良い雑木林で何処までも笹原。雪山用なのかずっとロ‐プが張って有り安心して歩ける。そして峠から山荘までは幾つかの小さな沢を渡り山腹のトラパ−ス。殆どアップダウンもなく歩けるが距離が長い。紅葉は既に終わっていたがブナやカエデ、ダケカンバの樹林帯の歩きは心地よい。
時々カモシカだろうか、けたたましい鳴き声で肝を冷やす。まだかまだかといい加減飽きてきた頃ようやく黄葉したカラマツ林となり、天下見晴らしに寄り道し、そして山荘到着。いやあ、疲れたあ。
山荘前のべンチでは沢山の人がくつろいでいる。「皇海山まで行ってきたんですか、山荘で泊まっていったんですか」との問いに、疲れを見せず笑顔で「いやあ、素晴らしい眺望で最高でしたよ。山荘泊まりは楽しいですね。朝日も素晴らしかったし…etc」と説明する。「いいなあ、いいなあ、ねえ今度私たちも泊まろうよ。皇海山は無理でも庚申山頂は行けそうだし…」と奥さんが主人を説得していた。奥さん、おいしい梨や柿ごちそうさまでした。話もつきないが下山開始とする。途中夫婦蛙岩の辺りで10数匹の猿軍団に遭遇。始めと終わりを猿に見送られた楽しい皇海山山行は幕を閉じた。