足尾 袈裟丸山、初めてのアイゼン装着

 初めて買ったアイゼン、早く使ってみたいと先日よりうずうずしていたが、今日ようやくそのチャンスが訪れた。今の季節雪も手頃かと袈裟丸山の主(?)Mさん、谷川岳や皇海山で御一緒した庵さんとの三人で、好天に恵まれ久しぶりにわいわいと楽しい山行であった

【登山日】  1996年12月21日(日)晴れ
【山  名】  足尾 袈裟丸山(1,878.2m)
【同行者】  Mさん、庵さん、酒呑童子、(帰路は赤堀のAさん同行)    
【行  程】  折場登山口…弓の手コース…賽の河原…子丸山…前袈裟丸……
         0840                 0925  1010-1020 1126-1235
        子丸山…賽の河原…登山口
         1320    1405   1450
【地  図】  袈裟丸山 1/25000図

 前回の赤城鍋割山では雪がなかったので用意したアイゼンは使わずじまい。袈裟丸に行こうかとの話になったときから、早く雪が降らないかなあ、最近暖かいので雪が融けてしまわないかなあと気もそぞろのここ数日であった。弓の手コースは今年FYAMAのオフで登った山であり、私は体調芳しくなく子丸山までで断念した思い出の山である。アイゼン装着時の歩き方等を本で読み、靴にはばっちりワックスがけ。そして目覚めた朝は雲ひとつ無い好天であった。

 国道から小中、大滝経由で曲がりくねった林道を片手位の落石を避けながら約30分、積雪は全くなくスタッドレスタイヤの活躍は先送りだ。駐車場で2人と合流し最初のちょっとした急登を登る。ここら辺りは雪は殆ど無いが霜柱を踏みしめ登る。左に沢が見える気持ちの良い尾根を過ぎると僅かで水場。樋を落ちほとばしる水で宝石のような氷の芸術。水の落ちるところはガラス細工の見事な花瓶になっておりしばし見とれる。ここより落葉したカラマツ林、そして来年は見事な花を見せてくれるであろうヤシオツツジの群落を抜けると展望の良い尾根歩きとなる。

 ここら辺りはまだ積雪は1〜2cm位と少ない。そして寝釈迦からの道と合流し賽の河原に到着。なんか異次元空間に入ったような感じだ。これで霧にでも包まれてたらもうあの世の入り口といった感じである。遠くには富士山や八ヶ岳等々今日も展望がよい。気持ちの良いなだらかな道である。風も殆ど無い。そして子丸までの樹林帯の登りとなる。少しずつ雪が増えてくるがこの勾配、積雪では全くアイゼンの出番ではない。今日も使わずじまいかなあと内心残念な気持ちがわき起こる。

 途中、急激に空腹を感じる。聞けばあと10分位で子丸という。元気を絞り先頭を歩く。そして子丸山。前方には袈裟丸連峰から皇海山。鋸11峰、真っ白な日光白根山に男体山、大真名子、恥ずかしそうにちょっぴり山頂を覗かせる太郎山。半月山や社山、黒桧、小法師尾根、夕日岳から地蔵岳方面等足尾、日光のそうそうたる山が出迎えてくれた。勿論冠雪した浅間山や我らが赤城山もバッチリだ。握り飯で空腹を癒す。これより雪が多くなるかも…とスパッツを着ける。

 避難小屋まではちょっとした下り。あれっ、ちょっと揺れたかな?地震?と思ったらすぐに山が揺れた。あっ地震だ!!こんなに山が揺れるなんて初めての経験だ。どこだろうと気に掛かる。(帰宅して栃木、群馬方面で震度5だったそうな) 小屋は無理すれば5人は泊まれるかなあというカマボコ型である。袈裟丸山も人気のある山だなあと雑記帳を覗いて感じた。沢山の書き込みである。小屋前はちょっとした広っぱであり星空眺めながらの小屋泊まりも楽しそうだ。

 そして最後の登り、ここら辺りになると積雪は3〜5cm位だが、雪の下はアイスバーン、ピカピカに凍っている。ツルツルと滑り歩きにくい。ササや木の枝につかまり慎重に登る。途中ロープも用意されている。助かるなあ……でちょっと油断したらズルッ、デーンと転ぶ。慌てて立ち上がろうとするとまたズデ〜ン。アイゼンはめる?って声がかかったが、もう少しとのことでそのまま進む。Mさんによれば、袈裟丸でこんなに凍結してるのは珍しいそうだ。帰路の下りが懸念される。しかし私は密かに初めてのアイゼンワークが出来るぞっと心が躍る。で、難行苦行の末やっとのことで山頂に到着。

 ここは、展望はあまり良くない。しかし風もなく穏やかな天気で気持ちよい。積雪は数cmだが、Mさんによれば「今まで標識のここら辺りまで(約140cm位)雪があったことがある」とのことだ。ビールが旨い。うどんが旨い。先着の単独行氏と話が弾む。Mさんと庵さん、この単独行氏は以前山で出会ったことがあるそうだ。奇遇だなあ。Mさんは袈裟丸山はあちこちのコースに堪能しており話題が豊富だ。いろいろと教えて貰う。今日は雪が少なかったけど、又雪があるとき来てみたいね等と語らう。

 そして下山開始。その前に私は初めてアイゼンを装着。家で練習した甲斐あってバッチリだ。あちこち歩き回り歩行の練習。以外と違和感が無く感触がよい。そして待望のアイスバーンの下り。快適快適、こんなにアイゼンって役に立つのか、まったく凍結も苦にならない。スイスイスイと下る。アイゼンを着けていない単独行氏とMさんは苦戦の連続である。時々ズルッと滑っている。こちらはルンルン気分。

 避難小屋をすぎ、ちょっとした登りで子丸山に到着。ここで泥だらけのアイゼンを外す。心の中で「いやあ、頼りになる奴じゃあ。有り難う」と声をかける。庵さん、泥だらけだからゴミ袋等にいれて袋に入れると良いねとそれとなく教えてくれる。子丸で最後の展望を満喫し後は凍結したところもなく、今度はあっちのほう歩きたいね、あの尾根やあの沢はこう登れるよなどと教えを受けながら楽しく下山する。

 単独が多い私であるが、久しぶりに数人で歩きペースについていけるかなあとちょっと不安であったが、ずっと先頭を歩かせてもらい楽しい一日であった。今日は思ったほどの雪も無かったが、アイゼンも使えたし、展望も良くこんな天気なら雪山も悪くないな、話に出てきたワカンもちょっと考えてみるかなと夢は広がるばかりであった。