八方尾根から唐松岳・五竜岳 2 2001年4月28日(土)〜29日(日)晴れ
遠見尾根より五竜岳を望む
ちょっと風邪を引いたかなあ、体調が優れない朝を迎えたが天気はまずまず。さあ元気を出して五竜岳だ。
天気は良いよ〜と先に起きた人から声がかかる。昨夜は冷たい布団に丸まって寝たせいか身体のあちこちがこわっている。風邪と頭痛はどうにか収まったようだが、食欲がわかず身体に力がはいらない。困ったなあ、今日の登頂は見送りかなとの気持ちが弱気になる。
食欲もわかないが、食べておかなきゃ体が持たないと無理矢理押し込む。そうこうして準備をしている内になぜか元気が回復してきて弱気の無視も引っ込んでしまった。あのけだるさは何だったんだろう。そうと決まれば元気に出発だ。同宿の単独行氏と共に出発する。彼はザックを持たずに軽快に登る。私は心配性だからすべての荷物を担いで登った。
今日は最初からアイゼンを装着する。最初は尾根を緩やかに登るが、すぐに山肌をトラバース気味に登るようになる。積雪はそれほど多くないが、岩に付いた雪はちょうど嫌な感じだ。下を見れば滑ったらどこまでも果てしなく落ちていきそうな斜面が待ち受けている。一歩一歩アイゼンを効かせ、ピッケルをしっかりと突き刺し慎重に登る。登るほどに展望が良くなってくる。
この先それほど天候も荒れることもなさそうだし、もし落ちればザックを持っていてもいなくても同じ事だ、それなら荷物が軽い方が身のこなしが軽やかで安全だろうと、途中からザックをデポして登ることにした。いやあ、やっぱり荷が軽いのは気持ちよく歩ける。急な山肌は少しずつ露出した岩場が多くなり、一カ所怖そうなところがあった。岩場ではピッケルもしっかりと刺さらないので、慎重に四つん這いになり進む。山肌のトラバースが終わると眼前に鹿島槍がど〜んと姿を現した。いやあ、壮観だなあ……
これより、今日一番の難関である山頂直下の雪壁だ。約20m。後ろ向きになって降りてくる人がいる。その人の通過を待って登り始める。登りより下りの方が怖そうだ。なるべく下を見ないように登ろう(^^;
これを通過すればあとは緩い登りとなり細長い山頂となる。三角点は縦走路から外れてずっと奥に入ったところらしい。鹿島槍の標柱が倒れていた。剱や鹿島槍、そして猛々しい山々がグルッと360度の素晴らしい展望だ。いつまでも見ても飽きることがない。数人のパーティーが鹿島槍方面へと向かっている。いずれは技術を高めて挑戦したいものだ。
さて単独行氏とお互いに記念写真も撮りあい思い残すことはない。下山としよう。まずは急峻な雪壁が待ち受けている。さすがに前を向いて降りるのは怖い。ゆっくりゆっくりと後ろ向きになって下る。岩場の怖かったトラバースのところでは、ザイルを使っているパーティーがいた。やはり使い慣れた人たちはこのほうがもしもの時安全なんだろうなあ、単独の私たちはより慎重に歩かなきゃあと肝に銘じ下る。途中でザックを回収し、五竜山荘前にあっという間に到着。ここで一休みとする。
さて、ここより長〜い遠見尾根の下りが待ち受けている。正規のコースは一旦白岳の尾根通しに出て下るらしい。しかし山荘前からトラバースして一気に下ろうと思案する。昨夜同宿した6人組がここを降りようと相談していたが、そのトレースが続いていた。本来は雪崩が起きる恐れもありあまりこちらを歩く人はいないようだ。山肌の状況や雪の状況をしっかり見定めて、安全と判断したので自己責任で降りることにした。快適にあっという間に急峻な斜面を下ってしまった。いやあ、快適そのものだ。
そして本来のコースと合流する。白岳からの正規のコースも、トラバースではないものの急峻さはほぼ同じに見える。上から見ていると大したこともないような白岳だったが、なかなかどうして堂々とした山容だ。
鞍部へ下ったあたりで同宿のカメラ好きの単独行氏がファインダーを覗いている。「いやあ素晴らしい景色になかなか足が進まないですねえ」とにこにこ顔だ。左側の雪庇にに近づかないようにたっぷりの雪の尾根を進む。急登で西遠見尾根に到着。ところどころにカラフルなテントがあった。ここで一夜を明かし五竜へ挑戦の人たちのようだ。この尾根は八方尾根に負けず劣らず気持ちの良いところだ。鹿島槍や五竜の荒々しい姿が少しづつ姿を変えながら目を楽しませてくれる。
広〜い尾根になると大遠見尾根、そして少しずつ尾根が狭くなり傾斜が急になってきた。一旦大きく下りそしてまた急登でようやく中遠見尾根に到着。ここは距離はそれほど無いがきつかった。やはり疲れがたまってきたんだろうか?単独行氏と共に一休みする。景色も良いので急いで歩くのがもったいない。まだ時間は大丈夫そうだし、のんびり下る。そして最後のピーク、小遠見尾根だ。ここは頂上を通らず樹林帯の中を左にトラバースする。いやあ、良かった。やがてスキー場が見え始め広い斜面を滑るようにくだる。そしてちょっと登れば大きなケルンのある地蔵の頭に到着。これからテレキャビンのアルプス平駅はもうわずかだ。スキーヤーに衝突されないように慎重にスキー場を横切り駅に向かう。
テレキャビンは豪快に一気に麓の駅まで運んでくれる。ラクチンラクチン。ここで単独行氏と別れる。今回の山行は、カラマツだけ頂上手前から殆どこの単独行氏と同行することができ、より楽しむことができた。どうもありがとうございました。又どこかの山で出会えると良いですね
さて車の回収に八方尾根ゴンドラの駐車場まで戻らなければならない。山麓駅にはバスはない。タクシーも停まっていないので神城駅まで歩くことにした(約15分)。駅前は静かなところだ。電車の時間まで1時間以上あったので身支度を整えのんびりと駅のベンチでくつろぐ。そして白馬駅までJRで行き、そこからバスで八方バス停、そこより10分ほど歩いて我が愛車に到着した。いやあ天候に恵まれ、同行者に恵まれ楽しい山行であった。