感激の3000m峰、前穂・奥穂縦走
1995年8月25日〜27日 晴れ時々曇り
初めての3000m峰、北アルプス穂高連峰を、山渓の登山教室に参加し挑戦してきました。頂上からの大展望はいまいちだったものの、急峻な岩稜、神々しい夕焼け、上高地から眺める穂高連峰の風貌、どこまでも透き通る梓川の清流、バスを待つ上高地の混雑。どれをとっても想い出に残る山行となりました。
ビジターセンター前…河童橋…岳沢ヒュッテ(泊)…紀美子平…前穂高岳…紀美子平…奥穂高岳
1335 1620 0555 0825-40 0905-30 1010-1100
1240-1300
…穂高岳山荘(泊)…涸沢……横尾谷…上高地
1335 0555 0740 1020-1115 1330
登山を始めて日が浅い私には、「北アルプス穂高連峰」は憧れであり、いつかは登ってみたい山ベスト1であった。でも技術、体力的に大丈夫だろうか、どんな装備が必要なんだろうかと悶々としていたところに、ヤマケイ登山教室の案内が目にはいった。これだっと思い早速申し込んだ。もっとも、どのコースにするかは大いに悩んだものの、どうせ行くならやっぱり前穂・奥穂は登りたい。
それからは情報収集、体力作りにと楽しい日々が過ぎていった。先づはアルパインツアーでの「登山教室」参加。用具の選び方、持っていくもの、服装、安全etc…狭い教室は満員でしたが、大変参考になりました。次に書籍「山小屋の…穂高連峰を歩く」、「地図」を購入し目的のコースを中心に夢にまででるくらい熟読しました。「山で泊まる」も購入した。初めての山小屋泊まりの不安解消もこれで万全だ。
次に体力作りです。谷川岳、日光白根、至仏山、平標山等で先ずは山歩きの感触をつかみました。富士山も一度は登ってみたい山ですが、これも穂高の前座として登る計画に入れたのですが残念ながら仕事で駄目になりました。このために高山の感触はつかむことが出来ず、高山病の心配は心に引っかかっていました。あとは自宅での腹筋、スクワット、階段ジョギングで準備万端です。そうそう、朝の3時起きで早起き、長距離運転の練習も谷川、白根の山行で試してみました。
パッキングを一週間前に済まし、前日まで出したり入れたり背負ってみたり数回のチェック、さあ明日は穂高だと思うと目がさえてなかなか寝付けません。遠足の前の子供みたいな心境になっていましたが、うつらうつらと寝たかなと思うまもなくいよいよ当日です。練習通り朝の3時起きで30分に出発、関越、上信越、松本、そして沢渡バス停に6時45分到着です。ラジオ体操の時間は過ぎていたので、自分のかけ声で体操をする。天気も良い。少し眠いが気分は上々だ。
2泊3日分2千円の駐車場代、バス往復2千円を払いバスの乗客となった。長〜くて急な釜トンネルを抜けると左手に焼岳との車掌さんの案内、程なく大正池である。車掌さんが「時間があったら、ここから上高地まで歩くと気分いいですよ」と案内するが遠慮して終点までとした。
カラマツ林に囲まれたバスターミナルはかなりの人出である。13時の集合時間までまだ大分あり、まずは食堂で朝食を済ませ付近を散策する。上高地登山補導所の掲示板では最近発生した事故が報じられている。転滑落が多く発生しており、明日は我が身とならぬよう気を引き締める。楚々と流れる清流の梓川沿いで目指す穂高が写欲をそそる。さすが絵になる風景だ。頂上部は時々雲がかかっているが動きも早く、時々全容を表す。景色を楽しみながら河童橋へと向かう。河童橋上では穂高、梓川をバックに写真を撮る人が途切れずかなりの混雑である。
まだまだ時間がある。ビジターセンターで穂高で生息する生物、植物などの知識を吸収し穂高のビデオを鑑賞する。隅の方から大きな鼾が聞こえる。私と同じく早立ちの人であろうか。つられて不覚にも少し寝てしまった。
昼食を取り集合場所に行く。このころには快晴となり暑いくらいだ。いる、いる。沢山の生徒達が……おっ若い女性も多いぞ、私と同年輩の男女も多くいる。結構な年輩者もいる。どの顔も初対面、登れるだろうかという緊張感、これから訪れるであろう感動を思いながら心は躍る。受付時にゼリードリンク、ゴミ袋、山渓の宣伝パンフ等渡されるが登る前に貰いたくもない、重くなるのに……と思いながらも受け取る。
点呼、簡単な注意事項が行われ班別に出発する。
河童橋正面にそびえる穂高連峰の中央部岳沢ヒュッテをめざし、最初はゆっくりゆっくりだ。何ともまだるっこいと思って歩いていたがそう思ったのは最初の方だけで、終わって見ればこのスピードであったからこそ無事降りてこれたのだと感じた。
上高地自然探勝路を通り、針葉樹林帯の中を緩やかに登りやがて天然クーラー「風穴]を過ぎるとガレ場で二度目の休憩。ここら辺りからペースが上がったように感じたのは疲れが出始めたせいだろうか。さらに灌木帯が続く。ただひたすら歩く。休憩まだかなあと思いながらひたすら歩く。程なくヒュッテが見えてきたがなかなか着かない。最後の急なひと登りでようやく到着。「ふ〜ん、これが山小屋か」と初めての山小屋泊まりがいよいよ現実となり緊張する。
食事前後の時間、今日初めてゆったりした気分になった。皆思い思いに時を過ごす。テラスでは明日登るコースを見つめ溜息をついてる人が多かった。さすがに急な登りのようだ。ヒュッテは本当によく手入れが行き届いており宿泊部屋、トイレも清潔である。山小屋だからと期待してなかった食事も満足なものであった。宿泊は2班とも同部屋であり主に女性が下段で男性が上段に落ち着いた。一枚の布団にほぼ2人ずつでこんなものかなと思いながら19時過ぎに「山で泊まる」で覚えたとおり就寝及び明日の準備をおこなう。ランプはここでいいかな、着るものはこれで良し、ザックの整理良し。では、寝る前に一杯、あれっ、出発前にあれほどチェックしたつもりであったが睡眠薬代わりのアッルコールを忘れていた。ちょっぴり「寝れるかな〜」との不安がよぎる。
私は寝付きは悪い方である。妻や子に言わせると時々寝言も言うそうな。でも今日は疲れてるから早く寝れそうだとうつらうつらしていると、心地よさそうな寝息を打ち破るかのような、はたまたヒュッテを揺るがすような鼾が左右から攻めてきた。連射速射の攻撃である。あちこちで目覚めた人が居るようだ。小さな声で聞こえてくるのは「ちょっと鼻つまんでみたら」「布団かぶせようか」「ちょっと頭たたいてみて」「う〜ん」…でも、そんなことは出来ません。皆ただひたすら嵐が過ぎるのを願って夜を明かした様だ。
ほとんど寝れなかった状態で朝が来てしまった。3時50分起床、寝れなかったのを除けば早めの洗面、トイレ、パッキングとマニュアル通りでスムーズだ。なお、トイレには紙は準備していない事、使用後は捨てずに備え付けの箱に入れる事というのは初めて知りました。また、本にはスリッパや簡単な靴を用意した方がよいと書いてましたが確かにちょっと外に出るときに一々登山靴では面倒でした。もちろん小屋で準備してるものの、数が少なくあれば重宝するなと思いました。
とにかく、初めての山小屋泊は無事朝を迎えることが出来た。今日はいよいよ憧れの前穂・奥穂だ。心は躍る。しかし踊ってばかりで岩場で足でも踏み外したら大変だ。家では上高地、穂高のお土産を楽しみにしている子供達がいる。「お〜い、お父さんは元気で登ってるぞ〜、お土産待ってろよ」と心の底で家族に安全を誓う。
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